毎月定期的に確定拠出年金に投資するのも、ドルコスト平均法を利用した例だ。
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- ドルコスト平均法とは、投資に使う資金を低く抑えられ、リスクもより効率的に管理できる投資法のこと。
- ドルコスト平均法では、一つの投資対象に一度に全額投資するのではなく、長期間に渡り定期的に一定額を投資していく。
- ただし、通常の一括投資法ほど利益を上げられないケースもある。
投資とはつまり、いかにリスクをうまく管理できるか、そしてどれだけの利益を上げられるかだ。しかし株式市場には当然のことながら変動が付きものだし、「市場の頃合いを測る」のは、特に投資の初心者にとっては非常に難しい。
だが市場の頃合いを測る代わりに、どんなレベルの投資家であっても利益を上げられる投資法がある。それがドルコスト平均法だ。
ドルコスト平均法とは?
ドルコスト平均法とは、一定の期間ごとに一定の金額を投資することにより、投資の購入を分散させるやり方のこと。株式やファンドを一度にまとめて買うのではなく、長期間にわたって購入を分割していく。
どれだけの額を、どの間隔で投資していくかは、投資家が好きなように決めればいい。長期間にわたって同じ投資先に一定額を投資し続けるため、市場が下落しているときには購入量は多くなるし、市場が高騰しているときには購入量は少なくなる。そうやって全体を平均にならし、どんな乱高下があってもリスクをできるだけ抑えていこうというのが、この投資法の考え方だ。
「ドルコスト平均法は、投資額を平均にならし、市場の頃合いを測る際に発生するリスクを最小限に抑える投資戦略だ」とラーンラックス(LearnLux)のリード・プランナーでCFP(認定ファイナンシャル・プランナー)でもあるサブリナ・ラフルア(Sabrina LaFleur)氏は説明する。
ドルコスト平均法 vs マーケットタイミング
ドルコスト平均法では、投資家は市場がどんな状態であっても資金を市場に投入し続ける。また一定の間隔ごと(月に1度、3カ月に1度、など)に同じ金額を投資し続けることにより、長期間にわたって資産を築くことを目指す。
「マーケットタイミング(「市場の頃合い」を測る投資法)」の場合には市場の上下に神経を集中し、値動きの予測を立てる必要があるが、ドルコスト平均法ではどんなに市場が急騰しても、あるいはどれほどの乱高下があっても、常に一定額を市場に投入し続ける。
ヒント:ドルコスト平均法を始める際には、自分が投資したい予算額と同時に、投資する間隔も決めておこう。(例えば、月に1回250ドル[約3万3700円])
ドルコスト平均法の仕組み
ドルコスト平均法を構成する要素は次の2つ。
1. いくら投資するか?
2. その額をどの間隔で投資するか?
「その仕組みはこうだ。まず、『毎月1日に100ドル(約1万3500円)ずつ』というように、同じ投資先に一定の間隔で一定の額を投資することを決める。この戦略を長期にわたって続けると、同じ100ドルなのに、ある月には他の月より多くの株が買えることに気付くだろう。投資期間の間に、株の値段は上下するからだ」と、ラフルア氏は説明する。
実はあなたは自分でも気付かないうちに、すでにドルコスト平均法を活用しているのかもしれない。例えば世間で最もよく知られているドルコスト平均法の実践者とは、401k(確定拠出年金)に定期的に投資している会社員なのだ。
ドルコスト平均法が優れているのは、投資を控えつつ市場の頃合いを測るのではなく、常に一定の投資額を市場に投入し続けるという点だ。
「この投資法は、どんなレベルの投資家にとっても、おそらく最も効果的な戦略だ。一旦設定すれば自動的に作動してくれるのだが、自分が投資している対象に自然と注意を払うようになるという、最高のシステムである」と、ラフルア氏は言う。
ドルコスト平均法の運用例
ケース1:300ドル(約4万500円)を3カ月にわたって100ドルずつ分散投資したいと考えたとする。1株あたり20ドル(約2700円)で取引されている株に投資するとしたら、最初の月には100ドルで5株購入できる。次の月にはまた100ドルを投資するのだが、1株あたりの値段は50ドル(約6700円)に上がったため、2株しか購入できない。
ところが3カ月目には市場が急落し、1株あたりの値段は10ドル(約1350円)に下がったため、この月には10株購入できる。この3カ月という期間のうちに、300ドルを投資し、17株を購入できた。内訳を表にするとこうだ。
このケースでは、3カ月の間に市場価格の上下があったものの、300ドルを投資して17株を購入できたということで、1株あたりの平均購入価格は17.6ドル(約2380円)になる(300ドル÷17=17.6ドル)。
4カ月目に1株20ドル(1カ月目と同額)で売却すると、17株の売却金額は340ドル(約4万5900円)となり、40ドル(約5400円)の利益が得られることになる。4カ月目に1株40ドルで売れたとすれば、17株の売却金額は680ドル(約9万1800円)となり、利益は380ドル(約5万1300円)となる。
17株(合計株数)× 20ドル(1株あたり)= 340ドル(売却金額)- 300ドル(総投資額)= 40ドル(利益)
17株(合計株数)× 40ドル(1株あたり)= 680ドル(売却金額)− 300ドル(総投資額)= 380ドル(利益)
ケース2:一括投資法でいく場合は、1カ月目に300ドル全部を投資して1株20ドルの株を購入するので、まず15株が自分の持ち株になる。これは毎月市場に100ドルずつ投資した場合より2株少ない。このケースでは、ドルコスト投資法の方が市場を読む投資法より利益を上げていることになる。さらに、1株あたりの平均価格もドルコスト投資法の方が数ドル低くて済む(17.6ドル vs 20ドル)。
このケースでは、4カ月目に1株20ドルで売却すると、15株の売却代金は300ドルとなり、実質プラスマイナスゼロで利益は上がらない。4カ月目に1株40ドルで売れたとすれば、15株の売却金額は600ドル(約8万1000円)となり、利益は300ドルとなる。
15株(合計株数)× 20ドル(1株あたり)= 300ドル(売却金額)− 300ドル(総投資額)= 0ドル(利益なし)
15株(合計株数)× 40ドル(1株あたり)= 600ドル(売却金額)− 300ドル(総投資額)= 300ドル(利益)
この仮のケースにおいては、ドルコスト平均法が勝利を収めたが、常にそういう結果になるとは限らない。確かにドルコスト平均法は、リスクを分散し、株式購入のために支払う平均額を低く抑えたい場合には最高の戦略だ。だが、一括投資法にも利点があり、市場で経験を積んで早く慣れることができるし、より多くの利益を得られる戦略であることも分かっている。
ノースウェスタン・ミューチュアル(Northwestern Mutual)が実施した研究によると、資産配分を考慮しないで10年目の終わりの累積利益率を比べた場合、ほぼ75%のケースにおいて一括投資法の方がドルコスト平均法よりも累積利益率が高いことが分かったという。
ドルコスト平均法を使うと、1株あたりのコストは平均化されて低くなるかもしれないが、得られる利益も少なくなる可能性がある。一括投資法だと、1株あたりのコストは高くなるかもしれないが、資金を市場に任せるので、リスクが高いとは言え、より多くの利益を得られる可能性がある。
このように、ドルコスト平均法はリスク許容度があまりない人向けの、より安全性を重視した手法であると言えるだろう。
ドルコスト平均法のメリット
ドルコスト平均法では、投資家が着実に資産を築いていけるため、不安を抑えることができる。投資家が不安にとらわれていると、決断を誤るおそれがある。同じ方針を取りつづけることは長期にわたる安心につながり、感情に決断を左右されることがない。
「この投資法の利点は、市場が下落するとあなたが購入している投資商品の株価も同じように下がる場合が多いため、安い価格でお値打ちに購入できることだ。つまり市場の動向を読まなくても、いつもの投資額でより多くの株が購入できる。一方、市場を読む際には読み間違うことが多くなる」とラフルア氏は言う。
またドルコスト平均法は、投資に回せる資金をそれほど持っていない投資家にも向いている。投資を始めるには何千ドルも必要だと考えている人も多いと思うが、そんなことはない。一括投資法の場合は多額の資金が必要だが、ドルコスト平均法なら少額の資金を定期的に投資していくことにより、長期にわたって資産を積み上げていけるのだ。
ドルコスト平均法は、今すぐ投資に回せる資金を十分に持っていない人や、市場の上下に一喜一憂したくない人にはぴったりの戦略だ。
リスク許容度があまりなく、市場の値動きが気になって落ち着かないという人にも、一定の投資を続けるという投資法はメリットが大きい。こういった方法を取らないと、パニックになって手持ちの株を売ってしまい、結局重要な利益を逃してしまうおそれがある。
大量の投資資金を用意でき、短期間に設定した目標を達成したいという人には、一括投資法のほうが向いているだろう。
ドルコスト平均法のデメリット
先ほど述べたように、ドルコスト平均法では、一括投資法より手に入る利益が少なくなる場合がある。さらに、株価が高いときには、投資額に見合う利益を得られないこともある。
「最大のデメリットは、市場が高騰するとあなたが購入している投資対象の株価も同じように上がる場合が多いため、高値で購入しなければならないことだ」とラフルア氏は言う。
「ただ、これも一概に悪いことだとは言えない。この戦略は、市場の状況に関係なく、自分に可能な投資を続けていくことにより、長期にわたる市場の成長に参加しているという確信を与えてくれるため、感情に任せて投資の決断を下してしまうことがないのだ」
もう一つ考慮しておかねばならない点は、ドルコスト平均法の場合、売買仲介手数料が多めにかかるので、貯蓄からかなりの額が差し引かれてしまう可能性があることだ。投資計画の一部として、手数料などの費用は必ず調べておこう。
ヒント:自分のリスク許容度をきちんと理解して、どの投資法が自分に最も向いているか判断しよう。市場の上下が気になって落ち着かない人には、市場の変動に関係なく一定額の投資を続けるドルコスト平均法はぴったりの選択肢だろう。
結論
どんなに経験を積んだ人でも、投資には感情が絡んでしまいがちだ。ドルコスト平均法は、株価が高騰していようと暴落していようと、一定額を市場に投資し続ける投資法であるため、投資にまつわる不安を最小限に抑えてくれる。
さらに、少ない資金で投資を始めようとする人にとっても、ドルコスト平均法は賢い選択肢だと言える。投資に回せるまとまった金額を持っていなくても、毎月100ドルほどの少額から始められる。
売買手数料によく注意を払い、自分のリスク許容度を見きわめて投資の決断を下そう。もちろん、必要ならファイナンシャルプランナーのような金融のプロに相談して、どのプランが自分に最適か相談に乗ってもらうこともできる。
[原文:How to invest using dollar-cost averaging]
(翻訳・加藤輝美/LIBER、編集・長田真)