米電気自動車大手テスラ(Tesla)の主力フリーモント工場。今回証言してくれた元従業員もここに勤務していた。
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以下の聞き書き談話は、キャリアへの影響を回避するため匿名を条件に取材に応じた米電気自動車大手テスラ(Tesla)の元従業員の話に基づく。
Insiderは取材に応じた従業員がテスラに勤務していた本人であることを確認済み。
今月(2022年7月)初めに突如レイオフされるまで、テスラのIT部門で3カ月間働きました。
あの日、(同社の主力生産拠点、カリフォルニア州フリーモントの)工場からの帰り道、「おいおい、本当にこんな、滅茶苦茶じゃないか」と怒りに震えました。同僚たちにさよならの一言も言えませんでしたから。
同時に、テック業界で採用凍結の動きが広がっていることを思い、次の仕事をどうやって見つけるか不安に苛(さいな)まれる自分もいました。
あの日、いくつもの「予兆」が
オフィスに着いて荷物を置き、(無料提供の)シリアルをボウルに入れて戻ってくると、直属の上司とその上司がオンラインステータスになっているのに気づきました。名前の横に緑色のインジケーターが表示されるのですぐ分かります。
その時点ですでにいつも通りではなかったのです。上司たちは普段はほとんど会社にいないし、特にその日は始業時間の9時より全然前でしたから、何かおかしいと思いました。
数分後、その上司がオフィスに入ってきて自分の荷物を置き、ノートパソコンを手に取ると、何も言わずに去っていきました。それが次の危険信号でした。
ちょうどそのとき同僚が出社してきて、別の同僚がその前日にレイオフされたことを教えてくれました。その同僚たちは自分と違って、テスラで何年も働いている人たちでした。
思えば、その日はほかにいくつもの危険信号が点灯していたのでした。
メインエントランスのそばに警備員がいて、誰かしらの見送りをしていました。ロビーで泣いている人たちもいました。初めは何で泣いているのか分かりませんでした。
でも、ふとあることを思い出しました。その前の週(6月3日)、イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は、時間給労働者を除く従業員の10%を削減する方針を打ち出していたのです。
そうこうしているうちに、ノートパソコンを抱えて去っていった上司から、少し話したいことがあるので会議室に来てもらえないかとのメールが届きました。
そのときようやく気づきました。そうか、自分はこれからレイオフされるんだ、と。
指定された会議室に行くと、上司が先にノートパソコンを開いて座っていました。
彼女は私にドアを閉めるように言うと、すぐに別の上司と人事部のメンバーが入室済みのズーム(Zoom)ミーティングルームに接続し、それからおもむろに、私がレイオフの対象になっていることを告げたのです。
自分がレイオフ対象になるなんて
率直に言って、その場では驚きしかありませんでした。
自分は数カ月前に採用されたばかりでしたから、レイオフの対象になると思っていなかったのです。
そう思いませんか?わざわざ採用の手間をかけておきながら、すぐに解雇する論理が分かりませんから。
会議室を出ると、ドアのそばに私の荷物を抱えた警備員が立っていました。すべては事前の筋書き通り、という気がしました。
IDバッジを返すと、警備員がエントランスまで見送ってくれました。途中、同じように上司に呼び出されたであろう他の従業員たちの姿と、部屋の外で待つ警備員たちの姿を目にしました。
警備員たちは制服姿ではなかったのですが、それでも彼らが誰で、何のためにそこにいるのかは一目瞭然でした。
エントランス前のロビーに着くと、従業員が何人か泣いていました。工場を出ると、会議室の窓ごしに何人かの従業員の姿が見えました。どの人もティッシュボックスを持って涙を拭いているように見えました。
そこには就労ビザを得て海外からやって来ている複数の同僚の姿もありました。彼ら彼女らがその後どうしているのか、私には分かりません。
工場の敷地にいる間に、手早くメールを送信しておきました。みんなと一緒に働けて良かった、直接お別れを言えなくてごめんね、と。
その日の夜にはメールにアクセスできなくなっていました。
またゼロから就職活動のやり直しか…
会社からは帰りの足代としてウーバーのバウチャーが支給されましたが、車があるので自分で運転して帰りました。
車の中では、次のステップを考えようとしたのですが、さまざまな思いが駆けめぐって心かき乱されるままでした。
なぜ採用したばかりの人材をレイオフするのか、いまだに理解できません。
4度もの面接をクリアしてようやく得たテスラのポジションなのに、そもそもやめておけば良かったとも思います。
いまはとにかく、長く困難な就職活動を再びまったくのゼロから始めなくてはいけない、そんなつらい気持ちです。
本音を言えば、私はいまもイーロンを本当に愛し、尊敬しています。ただ、もっと人の話に耳を傾けてくれたら、とは思います。
イーロンは最初、週40時間以上のオフィス出社を求める代わりに従業員数は増やすと言っていたのに、それをいきなりねじ曲げて10%の人員削減を打ち出したので、従業員たちはそこに納得がいかないのです。
彼の掲げる目標はものすごく高く、大きい。その目標を達成するため、従業員たちは週4日、毎日12時間という長時間労働に励んでいます。工場のソファーで寝ている従業員を何度も見かけました。それだけ仕事に打ち込むと身体に相当な負担がかかります。
そんな実態を知ってもなお、テスラとイーロン・マスクの取り組みは世界にとって素晴らしく意味のあることだと思うのです。
なお、テスラに本記事に関してコメントを求めたが、公開までに返答は得られなかった。
[原文:I got laid off at Tesla. Here are the red flags I wish I'd noticed the day it happened]
(翻訳・編集:川村力)