2016年12月14日、ニューヨークのトランプタワーで行われたテクノロジー業界のリーダーたちとの会合で、元Facebook取締役でペイパル創業者のピーター・ティールと並ぶドナルド・トランプ大統領(当時)。
Shannon Stapleton/Reuters
- アメリカンズ・フォー・タックス・フェアネスの報告書によると、アメリカの選挙へのビリオネアの支出はますます大きくなっている。
- 選挙への支出制限を緩和した「シチズンズ・ユナイテッド対FEC裁判」の最高裁判決直後の2010年は、ビリオネアは選挙にわずか3100万ドルしか寄付していない。
- 2020年には、ビリオネアはスーパーPACや独自キャンペーンに26億ドルを費やしている。
ジョー・バイデン(Joe Biden)大統領がアメリカの富裕層への増税を望んでいる時、ビリオネアたちはアメリカの選挙に、特に共和党のために、注ぎ込む資金を急激に増やしていることが選挙費用傾向に関する最新の報告書で明らかになった。
ビリオネアたちは、2010年の中間選挙ではわずか3100万ドル(約42億円)を直接費やしただけだった。この選挙は政治的な支出制限を緩和した「シチズンズ・ユナイテッド対FEC裁判」の最高裁判決後に行われた最初の国政選挙だった。
中道左派の非営利団体、労働組合、政治擁護団体の連合体である「アメリカン・フォー・タックス・フェアネス(Americans for Tax Fairness)」 の報告書によると、2016年までにビリオネアは少なくとも6億1100万ドル(約831億円)を寄付していたという。
2020年、ビリオネアたちはその約2倍の12億ドル(約1634億円)を国政選挙に投入している。この数字は、ビリオネアのマイケル・ブルームバーグ(Michael Bloomberg)とトム・ステイヤー(Tom Steyer)が自ら資金を提供した民主党大統領選挙キャンペーンへの寄付を含めると26億ドル(約3266億円)に跳ね上がると報告書はしている。
「ビリオネアとその仲間たちは、自分たちの言いなりになる候補者を支持するために選挙に資金を投入し、経済力を政治力に変換しようと懸命に努力している」と報告書は述べている。
アメリカン・フォー・タックス・フェアネスの報告書は、これが億万長者の政治的支出の部分的なものでしかないことを認めている。
例えば、この報告書ではビリオネアが支配する企業からの寄付は考慮されていない。また「ダークマネー」と呼ばれる非営利団体への寄付も測定されていない。非営利団体は、スーパーPAC(政治行動委員会)に資金提供や独自の選挙活動への支出が認められているが、法律上、寄付者を公表する必要はない。このような手段は、民主党支持者のジョージ・ソロス(George Soros)や共和党支持者のチャールズ・コーク(Charles Koch)などの巨額資金提供者が好む方法で、この報告書には目立った記載はない。
公開されている寄付金のうち、シタデル・インベストメント・グループ(Citadel Investment Group)のビリオネアであるケン・グリフィン(Ken Griffin)は、2022年の選挙期間中の支出では両党の全寄付者の中でトップとなっていて、共和党のスーパーPACに約2800万ドル(約38億円)以上を寄付している。
一方、暗号資産(仮想通貨)取引所FTXの創設者サム・バンクマン・フリード(Sam Bankman-Fried)は、民主党のスーパーPACに650万ドル(約8億8500万円)を寄付している。
2022年3月、ジョー・バイデン大統領は、1億ドル(約138億円)以上の所得がある者に対して、その所得に対して少なくとも20%の税率で増税する案を示した。ホワイトハウスによると、現在ビリオネアの連邦個人所得税の平均税率は8.2%で、多くの中所得者層よりも少ないという。
「大企業と超富裕層は適正な税金を払い始めなければならない。遅すぎることだが」とバイデン大統領は2021年9月に述べている。
(翻訳:大場真由子、編集:Toshihiko Inoue)