雨で増水したブラジルのネグロ川から、ごみをかき集める作業員。2022年6月撮影。プラスチック汚染に取り組む法律を施行する政府もある。
Edmar Barros/Associated Press
- アメリカの一部の州や世界の国が、プラスチック廃棄物対策の法律を制定している。
- カリフォルニア州は、企業に包装廃棄物の処理代金を負担させるアメリカで4つ目の州になった。
- カナダとインドは使い捨てプラスチック製品の製造と輸入を禁止した。
2022年上半期には、アメリカ、カナダ、インドなどでプラスチック汚染を取り締まる新しい政策を打ち出す動きが見られた。
ここ数週間だけでも、カリフォルニア州が企業に包装廃棄物の処理費用を負担させるアメリカで4つ目の州となり、カナダとインドは使い捨てプラスチック製品の製造と輸入を禁止した。
これらの動きは、毎年800万トンが海に流れ込むプラスチック廃棄物を削減するためのグローバルな戦いのターニングポイントのように思えると支持者は話している。国連によると、この量は1分ごとにごみ収集トラック1台分の廃棄物が投げ捨てられているのと同じだ。膨大な量のプラスチック廃棄物のほとんどは、リサイクルされずに埋め立て地や焼却炉に送られるか、陸地や排水溝のごみになる。そしてアメリカは人口が世界の5%に満たないにも関わらず、この問題の最大の原因になっている。
「人々はますますプラスチックとその他の問題の関連性を見出しており、この問題を深く考える団体や個人の連携が広がっている」と、非営利団体オーシャン・コンサーバンシー(Ocean Conservancy)のアメリカ・プラスチック政策アナリストのアーニャ・ブランドン(Anja Brandon)は話した。
「その結果、プラスチック汚染を非常に重要だと認識する政策立案者が増えている」
そのような関連性には化石燃料から作られたプラスチックがどのように気候危機を引き起こしているかということも含まれるという。アメリカの地方自治体はプラスチック製造工場や埋め立て地、焼却炉を人里離れた地域に建設することが多く、そのような地域は不当に汚染にさらされている。科学者はマイクロプラスチックとして知られる微小なプラスチックを人間の血液や便から発見しており、健康への影響についての懸念も膨らんでいる。
持続可能性への取り組みとして、一部の大手ブランドやプラスチックメーカーは、リサイクルや堆肥化可能な包装の利用を約束し、メーカーが素材を回収して再利用しやすいように現地のインフラに資金を投じている。
ダウの北米パッケージング・スペシャルティ・プラスチックスのシニア・サステナビリティ・マネージャー、ジェン・ロンク(Jen Ronk)は「包装に含まれるリサイクル原料の割合を増やし、軽量化するため、我々は新しい技術に投資している」と述べている。同社は、プラスチック廃棄物を管理する取り組みに10億ドル以上の投資を約束した。
最新の動きについて、以下にまとめた。
カリフォルニア州
カリフォルニア州のギャビン・ニューサム(Gavin Newsom)知事は2022年6月30日、プラスチックに関してアメリカで最も厳しい規制法案に署名した。
2032年までに、メーカーは、シャンプー、食品包装、カップなどの包装に含まれるプラスチックの量を25%減らさなければならない。オーシャン・コンサーバンシーは、この規制だけでプラスチックの生産量を、ゴールデンゲートブリッジの26倍の重さに相当する2300万トン削減できると見積もっている。
同じく2023年までに、少なくとも65%のプラスチックをリサイクルしなければならず、現在の15%未満のリサイクル率からすると大きな飛躍になる。
「プラスチック汚染の危機を減らすためには、製造する量を減らし、サーキュラーエコノミーの中で再利用する量を増やさなければならないことは分かっている」とブランドンは語り、カリフォルニア州の法律はこの両方に対処する初の法律だと付け加えた。
プラスチックメーカーは、製品による環境や健康への汚染への影響を軽減するため、州の基金に50億ドルを支払う。
プラスチック業界は、廃棄物の回収、分別、リサイクルの費用を梱包材や包装にかかる費用でまかなう。これによって自治体の廃棄物処理にお金を出している納税者の負担を軽減することができる。拡大生産者責任として知られるこの方針は、2021年にメイン州、オレゴン州、そして直近ではコロラド州で同じような法律が制定されており、勢いを増している。
コロラド州
コロラド州は2022年6月、廃棄物を埋め立てずにリサイクルするために、ビン、食品用包装、段ボールなどの包装材に料金を科す、独自の拡大生産者責任法案を可決した。
コロラド州におけるすべての素材のリサイクル率は15%でアメリカ全国平均の32%の半分以下だ。この法律自体はリサイクル率の目標を設けていないが、ブランドや包装メーカーは、新しいリサイクルプログラム運営のために非営利団体を設立し、2030年に向けてなんらかの目標設定を行う必要がある。
この法律は、コカ・コーラ、ペプシコ、ウォールマートなどの大手企業から珍しく支持されている。これらの企業は、リサイクル・コロラド、世界自然保護基金、シエラクラブなどの環境団体と提携した。
カナダ
カナダ政府は2022年6月22日、汚染や気候危機に対する取り組みの一環として、企業に対し特定の使い捨てプラスチック製品の製造と輸入を2022年末までに禁止すると発表した。
医療用必需品などの例外はあるが、レジ袋、カトラリー、ストローなどのほとんどが禁止の対象になる。
カナダ政府によると、同国では毎年300万トン以上のプラスチック廃棄物が捨てられており、リサイクル率はわずか約9%だという。
「企業はカナダ専用の包装やアメリカの州別の包装などは作っていない」と、ブランドンは指摘した。
「彼らはグローバルのサプライチェーンで効率性を最大化しようとするため、この方針は広範囲に波及効果をもたらすだろう」
インド
インド政府は2022年7月1日、ストロー、カップ、使い捨てバッグなど、最終的にごみになりやすい19の使い捨てプラスチック製品の禁止を発表した。この禁止により、これらの製品の製造や輸入は違法になる。
AP通信によると、政府はメーカーを対象にリサイクル目標を設定しているが、多くのプラスチック製品は対象外だという。
政府の汚染監視機関によると、インドは2020年に410万トンものプラスチック廃棄物を出している。
インドはここ10年間で、GDPあたりの温室効果ガス排出(排出係数として知られている)を45%削減しようと試みている。プラスチックの製造を抑えることは、インドの目標達成に役立つとこの政策を支持する人々は述べている。
[原文:Fighting our plastic problem: Bans and recycling mandates gain steam in the US and abroad]
(翻訳:Makiko Sato、編集:Toshihiko Inoue)