年間2万台売れたマットレスからNFTゲームまで。スタートアップが「IVS2022 NAHA」の出展で狙ったこと

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7月6日〜8日、スタートアップ交流型イベント「IVS2022 NAHA」と「IVS Crypto 2022 NAHA」が沖縄・那覇で開催された(写真はIVS Crypto 2022 NAHAの会場内)。

撮影:伊藤有

“変化の兆し”を捉えて動き出している人や企業にスポットを当てるオンライン番組「BEYOND」。

第9回は、沖縄で開催された次世代の起業家が集うスタートアップカンファレンス「IVS2022 NAHA」の様子を、Business Insider Japan 編集長の伊藤有と記者の小林優多郎が現地からお届け。

7月8日(金)に放映した番組の抄録を、一部編集して掲載する。

配信のアーカイブはYouTubeでご視聴いただけます。

撮影:Business Insider Japan

小林優多郎(以下、小林):弊社(株式会社メディアジーン)もブースを出しましたが、反響はどうでしたか?

伊藤有(以下、伊藤):ブースには「この1年で成しとげたコト ー聞かせてください!ー」というチャレンジボードを設置しました。

VCやベンチャー社員といったイベントの参加者に書いてもらいました。ボードは1日で埋まり「100億円級のファンドをつくった」など興味深い話もありました。

実は、他の出展ブースをまわって、事業内容やIVSの参加目的なども伺えたので、紹介していきます。

1年間で10万円のマットレスを2万台売れたMorght

撮影:小林優多郎

伊藤:どのような事業をされていますか?

土井皓貴さん(Morght代表。以下、土井):B2C向けにマットレスを販売する事業を2020年から始めています。今回のブースでは、ハイエンドの商品を展示しています。

伊藤:2021年は10万円のマットレスが2万点近く売れたそうですね。

土井:そうですね。1点売って利益を出す、ということをひたすらやっています。そこから、新しい施策やアジア展開、リアル店舗に投資をしていこうと考えています。

伊藤:どのように集客していますか?

土井:2021年から、福岡など地方でテレビCMを開始して、2022年8月からは関西地方でも放映予定です。

2023年春頃には東京でも……というように、大規模なマスマーケティングに着手しているところです。

土井皓貴氏

Morght代表の土井皓貴氏。

撮影:小林優多郎

伊藤:地方からテレビCMを攻めていると。都市圏からにしないのは、何か意図があるのでしょうか。

土井:東京と全国の都道府県で視聴率1%に対する値段が大きく違う、ということがあります。

そのため、予算を確実に回収するという意味でも、まずは地方で「どの時間帯」「番組」「クリエイティブ」が成果を出すかの検証を始めました。

伊藤:IVSでの目的は、(投資をしてくれる)VCを見つけることですか?

土井:VCを見つけたいこともありますが、「商材がマットレス」という特性上、参加社全員がターゲットです。なので、商品を知ってもらい、体験をいただくことがメインの目的です。

目を引くクリエイティブを展開するYOUTRUST

撮影:小林優多郎

伊藤:改めまして「YOUTRUST」の事業をざっとご紹介ください。

金子彰洋さん(YOUTRUST 執行役員。以下、金子):人材を採用できるキャリアSNSとして、ユーザーに転職や副業、日々の学びなどを無料で提供しています。

クライアントへはSNSに集まったユーザーへスカウトを送り、転職や副業など、キャリアオポチュニティーを提供していくビジネスです。

伊藤:那覇空港にも特徴的なクリエイティブ(広告)を設置していましたが、どのような経緯で制作したのでしょうか。

金子:勢いが大事だと考え、あえて、勢い余って枠からはみ出るクリエイティブをつくりました。「スタートアップが採用するならYOUTRUSUT」ということを刷り込みたいという意図です。

金子彰洋氏

YOUTRUST執行役員の金子彰洋氏。

撮影:小林優多郎

伊藤:IVSに参加した目的は何でしょうか。

金子:BtoBのクライアント獲得を目指しています。

また、クライアントの名刺を獲得したく「福引 千本つり大会」も設置しました。

名刺をチケット代わりにして引ける福引で、モバイルバッテリーや沖縄のお土産などが当たるようになっています。

目を引くと思うので、ブースを通りかかった方に「1本引いていきませんか?」と声をかけてリードがとれるという実弾的なマーケティングとして仕掛けました。

YOUTRUST クジ

YOUTRUSTの福引き

撮影:小林優多郎

伊藤:いわゆる「獲得コスト」でいうと、ものすごく効率的ですね(笑)。

金子:今回の参加はROAS(広告に対する売上成果)がどの程度見込めるかをあらかじめ考えた上で決めています。

決めたからには、全力を尽くそうとクリエイティブを作成したり、羽織る法被(はっぴ)もつくりました。

そういった「外に向かってやり切る」というカルチャーがあることがうちの良さですね。

会場内のコミュニケーションを促進するAI翻訳機「ポケトーク」

撮影:小林優多郎

伊藤:起業家が集うIVSには異色の「メーカーとしての参加」ですが、どのような経緯があったのでしょうか。

小嶋智彰さん(ソースネクスト 社長兼COO。以下、小嶋):IVS那覇は、外国人も数百名規模で参加されます。

その会場内のコミュニケーションにポケトークを使っていただくのはどうかと、(運営から)お声がけいただいたことがきっかけです。

ソースネクストとしてもよい事例になると思っています。

小嶋智彰氏

ソースネクスト社長兼COOの小嶋智彰氏。

撮影:小林優多郎

伊藤:ポケトークを会場限定で無料レンタルしているのですよね。

小嶋:そうです。日本人でも外国の方でも、会場内であれば自由に使えます。

伊藤:IVSを通して、資金調達も考えているのでしょうか?

小嶋:参加者には投資家の方も多いため、ポケトークに興味をもっていただければもちろん考えています(編集注:ポケトーク事業は2022年2月に、ソースネクストから分社化している)。

NFTを組み込んだゲーム開発に取り組む「woof」

撮影:小林優多郎

伊藤:出典内容を教えてください。

ページ健さん(woof 代表。以下、ページ):「THE BLACKOUT」というブロックチェーンゲーム(NFTゲーム)を出展しています。

ページ健氏

woof代表のページ健氏。

撮影:小林優多郎

伊藤:どんなゲームなのでしょうか?

ページ:実際の世界地図をドット化して土地として買うことができます。その世界で商業を行っていきます。

第三次世界大戦後のメタバースの空間で、何もないところから文明をつくっていくというコンセプトです。

今回の出展はムービーになりますが、来月(8月)にはNFTとしてリリースを予定しています。

伊藤:資金調達はこれからなんですよね。

ページ:はい。会社としてもまだ2年目で、イベントを通して(VCとの)繋がりができればと思い、参加しました。

Web3に特化した「IVS Crypto 2022 NAHA」

IVS Crypto 2022 NAHA

IVS Crypto 2022 NAHAのセッションの様子。

撮影:伊藤有

小林:今回のIVSは、起業家のブースが並ぶ会場とは別に「IVS Crypto 2022 NAHA」と言うWeb3領域のトークセッションやNFTの展示やオークションの会場がありました。

伊藤:まず、外国人の多さに驚きました。ホテルのフロアを貸し切っていましたが、会場の雰囲気(会場設計やセッション演出など)がまさにアメリカのカンファレンスに近いイメージです。

トークセッションもひたすら議論で、映し出されるスライドも非常に少ない。このスタイルは日本のイベントと大きく違うところだと思います。

小林:ポケトークも必要になるわけですね。

伊藤:IVS Cryptoで目玉だと思ったものが、NFTアートでした。

NFTアートの展示だけでなく、ETH(イーサ、仮想通貨の一種)を使ったオークションも行っており、最終的には(当日の日本円換算で)200万円ほどで落札された作品もありました。

IVS Crypto 2022 NAHA ギャラリー

IVS Crypto 2022 NAHAのギャラリーの様子。作品の上にはその時点での落札希望価格(ETH)が掲載されている。

撮影:伊藤有

小林:トークセッションでは具体的にどのような議論がされていたのでしょうか?

伊藤:スケジュールの都合上、深くは聞けていませんが、woofさんのようにゲームとクリプトを組み合わせたGameFi分野の方も登壇していました。

どういうやり方(運営方法など)が一番良いのか、持続可能な仕組みをサービスとしてどのようにつくっていくかなどを話されていました。

つまり、彼らのような制作側も悩みながらやっているようで、こういう場でないと聞けない面白い話だったと思います。

IVS Crypto 2022 NAHA

さまざまな人がNFTに挑戦していた。

撮影:伊藤有

小林:Web3はまだ始まったばかりで、(王道を)詰められていないという状況ですよね。

伊藤:そうですね。ビジネスとしてどうなるか不明瞭なところがある一方で、メタバース界隈に若い世代が多いことは興味深いと個人的に思っています。

お金儲けが動機ではなく、ただマーケットがあるから売り出してみて、それで有名になってフォロワーが増えたりするようなクリエーターがメタバースには普通にいます。

既存の資本主義的なビジネスの文脈でものづくりをしているわけではないので、例えば、VCが投資したいと思って話しかけても、クリエーター側から全く相手にされないというケースが出てくると思います。

小林:「今までの常識は捨てたほうがいい」と(伊藤が出演した)オープニングセッションでも話されていましたよね。

伊藤:そうですね。だからこそ、みんな可能性しか感じない、という気持ちでやっているんだろうということを、セッションを聞いて感じました。

(聞き手・伊藤有小林優多郎 構成・紅野一鶴

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