景気後退入りの現実味が増し、ユニコーン(評価額10億ドル超の未上場スタートアップ)の評価額目減りが指摘される昨今だが、何もかも滅茶苦茶、というほど状況は悪くないようだ。
Gene J. Puskar/AP
スタートアップにとって「真夏」の時代は過ぎ去ったのかもしれないが、「冬」が来たかと言えば、それは早合点にすぎるかもしれない。
ツイッター(Twitter)のタイムラインを読んでいると鬱々(うつうつ)としてくる起業家も多いだろうが、実態はそこまで悪くはなっていないようだ。
ピッチブック(PitchBook)の最新レポートによれば、ベンチャーキャピタルは2022年第2四半期(4〜6月)、アメリカのスタートアップに623億ドル(約8兆4100億円)の資金を投じた。
資金拠出額そのものは前年同期比マイナス23%と減ったが、それでも2020年第4四半期(10〜12月)以前のどの四半期よりも多い数字だ【図表1】。
【図表1】スタートアップのベンチャーキャピタル(VC)からの資金調達「金額」は2022年第1四半期(1〜3月)に続き第2四半期(4〜6月)も大きな落ち込みを記録した。
出所:PitchBook資料よりInsider編集部(Taylor Tyson)作成
ピッチブックによると、証券市場の減速を背景に投資家はより慎重なスタンスをとっており、シードからレイターまであらゆるステージでスタートアップの資金調達額は減少している。
ただし、【図表1】を見ての通り、資金調達額は確かに急減しているものの、まったくラウンドが実施されていないわけではない。
2022年第2四半期(4〜6月)の資金調達件数は全ステージ合計で3374件、これは比較的高い水準と言える。
過去最高水準の4467件を記録した第1四半期(1〜3月)に比べると相当見劣りするものの、パンデミック発生を受けてスタートアップの資金調達活動が急停止した2020年第2四半期に比べれば、まだはるかに多い【図表2】。
【図表2】スタートアップの資金調達「件数」の推移。2021年第1四半期(1〜3月)から22年第4四半期(10〜12月)の数字が突出している。
出所:PitchBook資料よりInsider編集部(Taylor Tyson)作成
2022年第2四半期(4〜6月)の投資活動は鈍化し、文字通り大盛況だった2021年の各四半期に比べると圧倒的に悪化して見えるが、ピッチブックは前出のレポートで、2021年の資金調達件数は「水準としては異常値の部類と思われる」としている。
いずれにしても、年初来の株式市場暴落など厳しい経済の現状を踏まえると、過去6カ月にわたって資金調達が継続的に実施されていることは、スタートアップ・ベンチャーキャピタル界隈で言われているよりポジティブな現状があることを示唆しているのかもしれない。
[原文:CHART: The doom and gloom around startup investments is greatly exaggerated]
(翻訳・編集:川村力)