ピュー・リサーチ・センターによると、アメリカ人の約18%は複数世代同居世帯で生活している。
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- 手頃な価格の家を見つけるのが難しくなっているアメリカでは、さまざまな世代のルームメイトと生活する人が増えている。
- 若い世代と高齢者の"ルームシェア"を促進するプログラムも大学に誕生している。
アメリカでは新しい形のルームシェアが広がりつつある。
それは複数世代に及ぶものだ。急激に値上がりする家賃を払い続けるのが難しくなる中、自分たちの祖父母に近い年齢層の人々と同居し始めるZ世代やミレニアル世代が増えている。
タフツ大学を卒業したばかりのナディア・アブドゥラさん(25)は、卒業後のアパート探しは「予算内に収まる物件が見つからず、ストレスを感じました」とワシントン・ポストに語った。
アブドゥラさんがアパート探しに苦戦したボストンは、ここ数年で急激に家賃が上がったエリアだ。その後、アブドゥラさんは部屋が余っている高齢の住宅所有者と若者をマッチングするホームシェアリング会社「Nesterly」を通じて、弁護士のジュディス・アロンビーさん(64)と知り合い、現在、部屋を借りている。
「完璧でした。ジュディスはわたしの家族のような存在になりました」とアブドゥラさんは話した。
Nesterlyでは部屋を貸す人の年齢を特に規定していないものの、同社のウェブサイトにはユーザーに「世代、文化、人生経験を超えた互恵的なつながりを作って」もらいたいとある。
Nesterlyを通じてアブドゥラさんに出会う前、アロンビーさんはボストンに近いマサチューセッツ州モールデンにある自宅から引っ越すべきかどうか話し合っていたと、ワシントン・ポストは報じている。アロンビーさんは自分ひとりで自宅を維持するのは難しいだろうと考えていたという。ただ、アブドゥラさんと一緒に生活すれば、家事や庭仕事、買い出しを手伝ってもらえる —— これはアブドゥラさんが家賃700ドル(約9万7000円)で住まわせてもらう代わりに申し出たものだった。
「誰かがそばにいてくれるのは、本当に素晴らしいことです。88歳の母と一緒にいた時とは違う雰囲気やエネルギーをナディアはもたらしてくれます」とアロンビーさんは話している。
「ナディアはフランク・シナトラを聴きませんから」
アメリカのシンクタンク、ピュー・リサーチ・センターによると、アメリカ人の約18%はアロンビーさんとアブドゥラさんのように、複数世代同居世帯で暮らしている。アメリカではここ50年でこうした世帯の数が4倍に増えていて、今では約6000万人が異なる世代の人間と生活しているという。
ワシントン・ポストによると、北米では複数の大学が住宅プログラムの一環としてこうした関係構築を積極的に実施しているという。例えば、アメリカのアイオワ州デモインにあるドレイク大学では、音楽を学んでいる学生は定期的に演奏を披露する代わりに、無料で地元の高齢者生活施設に住むことができる。
カナダのサイモンフレイザー大学は、Nesterlyと同じようなプログラムを実施している「Canada HomeShare」と提携し、数年前に世代間住宅プログラムを立ち上げた。ワシントン・ポストによると、引退した元物理学教授のマイケル・ウォルティスさん(85)は大学院生のシボーン・エニスさん(27)とマッチし、ルームシェアをしている。
エニスさんは家賃として400ドルを払い、2人は家事を協力してこなすだけでなく、夕食をともにしたり、映画を一緒に見ることもあるという。
多くの若者にとって、こうした暮らしは利便性をきっかけに始まっている。ただ、複数の人々がこうしたことがなければ親しく付き合うことのなかった世代との大切なつながりをもたらしてくれたと話している。
研究結果もこれを支持している。2016年のスタンフォード大学の研究では、若者に助言を与えたり、支援をすることで高齢者に「目的意識」が生まれ、両者にメンタルヘルスの問題の減少や幸福感の向上といったメリットをもたらすことが分かった。
「マイケルは素晴らしい人です。ルームメイトになれて本当に良かった」とエニスさんは話している。
「いつでも何かしら話すことがあるし、彼は常に率直で思いやりがあります。ぼくたちは生涯の友です」
(翻訳、編集:山口佳美)