コロナ禍以前は、福利厚生といえば年金制度やスポーツジムの割引などが一般的だった。
しかしリモートワークが普及し、忙しい通勤から解放されたことで、多くの社員がメンタルヘルスとワークライフバランスをより重視するようになった。2021年に起きた従業員の「大退職(Great Resignation)」と相まって、企業は一律だった福利厚生を見直す必要に迫られている。
こうした背景から、スタートアップ企業では人材を獲得・維持する手段として、福利厚生の活用が進んでいる。
モビリティ系スタートアップのボルト(Bolt)で戦略的パートナーシップ・マネジャーを務めるアンドリュー・ショート(Andrew Short)は、「採用や人材維持の観点から、福利厚生をインセンティブにすることが重要になってきています」と語る。
柔軟な福利厚生のマーケットプレイスを運営するジュノ(Juno)は、5000人以上の従業員が選んだ特典の内訳を分析した。その結果、リモートワークによってビジネスパーソンの間に生じた優先順位の変化が、ランキングにも反映されていることが分かった。というのも、追加の休暇といった形式的なものではなく、具体的な特典ばかりが上位にランクインしているのだ。
気になるそのランキングトップ10は以下のとおりだ。
従業員が付与されたポイントで利用した特典の1位は室内観葉植物、2位はApple Airpodsだった。
「在宅勤務になってから、自宅を美しくしようとする人が増えた結果、室内観葉植物の需要が急増しました」とジュノCEOのアリー・フェイカキ(Ally Feikaki)は語る。
トップ10には、ウクライナ救済基金への寄付から粉末コーヒーまで、さまざまなものが選ばれており、「福利や特典への要望が多い」ことの表れだとフェイカキは言う。
前出のボルト勤務のショートは、ジュノを通じて、スタートアップの従業員は心身の健康に関連する福利厚生を選ぶ傾向が強いことを知った。またスタートアップにとって、柔軟な福利厚生というのは従業員を維持するうえで注力するに足る重要なツールになりうる、とも考えている。
創業間もないスタートアップはたいてい、リソースが足りない中で人事チームをなんとか回していくものだ。そんなとき福利厚生を柔軟に選択できるようにすれば、人材を惹きつけるのに役立つだろう。
「これまでの福利厚生は、健康保険や生命保険が中心でした。でもこうしたものは従業員が日常的に使うものではありません。もう一つの傾向として、クーポンサイトの利用ポイントを付与したりランチタイムに瞑想ができるという福利厚生もありますが、これも普遍的とは言えません」(フェイカキ)
こうした点は、フェイカキによれば新型コロナウイルスによるロックダウンが起こったことで企業が注目するようになったものだ。ランチや瞑想といった補完的な特典ではなく、「社員にとって必需品の重要性がいっそう増した」(フェイカキ)のだ。
食料品や必需品をネットで買うことが日常的になったため、この変化に乗じてジュノはロンドンをはじめイギリス各地でケータリング業者と提携し、食料や雑貨のパッケージを従業員特典として提供することも始めた。
「これからの時代は、柔軟性と選択肢を提供できることが重要になってきます。これは福利厚生に限ったことではありませんけどね」(フェイカキ)
[原文:Indoor plants, AirPods, and snacks are the most popular perks for startup employees right now]
(編集・常盤亜由子)