Tomohiro Ohsumi/Getty Images
ソフトバンクグループ(以下、ソフトバンク)が出資するスタートアップに不況の波が押し寄せている。過去数カ月間で少なくとも10社が人員削減を実施したのだ。
そのうちの3社は、いずれもこの数週間で人員削減を行った。ある宅配スタートアップは、3月に一部の従業員をレイオフした上で、先日2回目のレイオフを行った。
さらに、他の2社は、2022年に入ってソフトバンクから新たに資金を調達したばかりだった。エスニック食品を扱うあるオンラインスーパーは2月、ソフトバンクが主導する4億2500万ドル(約570億円、1ドル=134円換算)のシリーズE資金調達ラウンドを受けたと発表していた。また、ある人材スタートアップは、同じくソフトバンクが主導する3億ドル(約400億円)のシリーズC資金調達ラウンドを受けた。だが両社はその後、従業員の10%をレイオフした。
ソフトバンクにとっても、この1年は波乱の年だった。市場低迷とインフレ率上昇の中、同社の2022年3月期は、2つのベンチャーファンド(SVF 1、SVF 2)で約3兆7380億円以上の損失を計上している。なお、ソフトバンクではこれらのファンドを通して400社以上に投資しているが、今年になって主要幹部数人が退社する事態に陥っている。
以下では、レイオフを実施した10の企業と、その事業の概要、資金調達の状況を公開する。
ゴーパフ(GoPuff)
Hannah Yoon
7月中旬、食料品や日用品のデリバリースタートアップであるゴーパフは人員の10%を削減した。同社が人員削減を行うのは2022年に入って2度目だ。1回目の3月には同社の人員の約3%に相当する400人がレイオフされた。
Insiderが入手した投資家向けのメモによると、ゴーパフは少なくとも76の自社倉庫を閉鎖することで約1億ドル(約134億円)のコスト削減を計画しているようだ。人員削減の多くは、閉鎖される倉庫の従業員のレイオフによるものだ。
ソフトバンクは同社にとって最大の出資者の一つであり、数回の資金調達ラウンドに参加している。
ネクストバイト(NextBite)
ネクストバイトのアレックス・キャンターCEO。
Ordermark/Nextbite
ゴーストキッチン(編注:キッチンだけを持ち、デリバリーやテイクアウトのみに対応する飲食店)を多数手がけるネクストバイトは、7月に従業員の一部をレイオフした。アレックス・キャンター(Alex Canter)CEOは、削減人数に関しては明かさなかった。
同社は2017年にデリバリーの管理システムの開発会社として、オーダーマーク(Ordermark)という社名で創業した。その後、売上の最適化を図りたいレストランにデリバリー専門のブランドをライセンスすることで成長してきた。
2020年にソフトバンクが主導する1億2000万ドル(約160億円)のシリーズC資金調達ラウンドを受けた後、2021年にネクストバイトとしてリブランディングしていた。
ウィー!(Weee!)
A screenshot of the Weee! website.
アジア系・ヒスパニック系の食料品や日用品のデリバリーサービスを手掛けるウィー!は6月下旬、人員の約10%に相当する150人をレイオフした。
ウィー!はスピード配送には重点を置かない代わりに、アジア系・ヒスパニック系食品を求める顧客に特化したサービスを提供している。
同社はレイオフのわずか数カ月前、ソフトバンクが主導する4億2500万ドル(約569億円)のシリーズE資金調達ラウンドを発表し、バリュエーションが41億ドル(約5494億円)に達したばかりだった。
リモート(Remote)
リモートの共同創業者であるジョブ・ヴァン・デル・ヴォールトとマルセロ・ルブレ。
Remote
グローバルチーム向けの人事システムを提供するリモートは7月上旬、同社の人員の10%に相当する100人をレイオフした。情報筋によると、同社が給与を下げようとしたところ経営陣の大半が退職してしまったという。
同社は4月、ソフトバンクが主導する3億ドル(約402億円)の資金調達ラウンドを完了したばかりだった。
リーフ・テクノロジー(Reef Technology)
Insider
リーフ・テクノロジーは、「リーフキッチン」や「NBHDキッチン」などのさまざまなブランド名でゴーストキッチントレーラーを運営しているスタートアップだ。2022年初頭には業績不振のトレーラーを何十台も停止していたが、5月には全世界の人員の5%を削減した。
リーフ・テクノロジーはパンデミック中に急速に拡大し、全国チェーンレストランに代わって注文品を準備する契約を結んでいた。情報筋によると、同社はフードトレーラーの3分の1を停止すると同時に、ウェンディーズ(Wendy's)、バッファロー・ワイルド・ウィングス(Buffalo Wild Wings)、ポパイズ(Popeyes)などのファストフードチェーンとの提携を強化し始めたという。
ピッチブック(PitchBook)によると、ソフトバンクは2018年に9億ドル(約1206億円)の資金調達ラウンドを主導し、続く2020年の資金調達ラウンドにも参加した。
ワントラスト(OneTrust)
ワントラストのカビル・バルデイCEO。
OneTrust
企業のプライバシーやセキュリティ管理、ガバナンスを支援するスタートアップのワントラストは6月、従業員の25%に相当する950人をレイオフした。カビル・バルデイCEOはこのレイオフについてブログで発表した。
ソフトバンクは同社のシリーズCラウンドの延長として2億1000万ドル(約281億円)の資金調達ラウンドを主導した。同社は2020年後半に3億ドル(約402億円)のシリーズC資金調達ラウンドを受け、バリュエーションが51億ドル(約6834億円)に達した。
ジェリースマック(Jellysmack)
Amanda Perelli/Insider
コンテンツクリエーター支援プラットフォームであるジェリースマックは6月、人員の8%をレイオフした。このレイオフは複数の部門にまたがる、より広範なリストラの一環として行われた。
ピッチブックによると、同社は現在までに9億9100万ドル(約1327億円)の資金を調達してきた。ソフトバンク以外では、ユニリーバ(Unilever)、インタープレイ(Interplay)、パーテック(Partech)などが出資している。
センドーソ(Sendoso)
A screenshot of Sendoso's website.
企業が取引先にギフトを贈るためのプラットフォームを提供するセンドーソは6月、従業員700人のうち100人をレイオフした。対象となったのはアメリカとアイルランドのオフィスのほか、同社のビジネスユニット全体に及んだ。
同社の直近の資金調達ラウンドは、ソフトバンクが主導した2021年の1億ドル(約134億円)のシリーズCラウンドだった。
キャメオ(Cameo)
Michael Kovac.
著名人から個人宛にお祝いのメッセージ動画が届くプラットフォームを運営するキャメオは5月上旬、人員の約4分の1に相当する87人をレイオフした。同社の上級管理職、海外従業員、人材・マーケティングチームのメンバーの多くがこのレイオフの対象となった。
取材に応じた従業員の多くは「会社の調子はまだいいと思っていたので人員削減はショックだった」と話す。2021年に実施された同社のシリーズC資金調達ラウンドにはソフトバンクも参加しており、キャメオはこの時の調達でバリュエーションが10億ドル(約1340億円)強に達していた。
ベター・ドットコム(Better.com)
ベター・ドットコムのヴィシャル・ガーグCEO。
Better
住宅ローン会社のベター・ドットコムは、2021年12月にZoom通話で従業員900人のレイオフを発表したのを皮切りに、その後3回にわたってレイオフを実施し、数千人をレイオフした。
テックメディアのTechCrunchによると、幹部数名も辞職し、6月には上級幹部3人が辞表を提出したという。
ベター・ドットコムはパンデミック中に新規顧客が急増し、需要に追いつくため積極的に採用を進めていた。2021年4月にはソフトバンクから5億ドル(約670億円)を調達し、バリュエーションは60億ドル(約8040億円)に達していた。
[原文:10 SoftBank-backed startups that have laid off hundreds of workers amid a wave of job cuts]
(編集・野田翔)