安定収入を得つつ好きな旅を楽しむために、デジタルノマドに関心を持つ人が増えている。
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ガウリ・ジャスワル(Gauri Jaswal)は、コロナのパンデミックが世界を襲い、学校がオンライン授業に移行させられた時、ロンドンで勉強していた。
彼女の出身であるインドへの入国規制が厳しくなり、ジャスワルと彼女のアメリカ人パートナーは、ヨーロッパに留まることにした。最初にトルコに移動し、その後ヨーロッパ全土を旅行した。この経験の後、ジャスワルは学校や仕事のために、一つの場所に留まるような生活はやめようと心に誓ったのだ。
2021年12月に学校を卒業すると、ジャスワルはデジタルノマドになった。デジタルノマドとは、旅をしながらリモートで働く人たちのことだ。マネジメント・ソリューションのプラットフォームであるMBOパートナーズの調査によると、デジタルノマドだと自称するアメリカ人は2019年から2020年にかけて49%増加し、2021年にはデジタルノマド生活を送るアメリカ人は1550万人にのぼると推計される。パンデミックはデジタルノマドのライフスタイルにとって重要な分岐点となった。
ポルトガル、コスタリカ、台湾など40カ国以上の国がデジタルノマド・ビザを発行したことにより、デジタルノマドと呼ばれる人々が急増した。また、アメリカで生活費が高騰している影響もあり、どこにいても仕事ができる社会人たちは、自分の給与に見合う、より物価の安い場所を求めるようになっているのかもしれない。
Insiderは、デジタルノマドを実践している人やリロケーションアドバイザーたちに話を聞き、どうしたらフルタイムで、かつ柔軟性のあるリモートワークを手に入れられるか、どのようにデジタルノマドの生活を送ればよいかを尋ねた。
1. 興味があるなら飛び込め
もしデジタルに根差したライフスタイルに興味があるなら、デジタルノマドはあなたに合っているかもしれないと、リロケーションコンサルタント歴11年で自身もデジタルノマドであるクリスティン・ウィルソン(Kristin Wilson)は言う。
ノマド的ライフスタイルを可能にしたのは、技術の進歩とデジタルノマド・ビザの登場だ。
リンゼイ・ミラーボス(Lindsey Miller-Vos)は、母親、娘、ペット2匹とともにエアビーアンドビー(Airbnb、以下エアビー)の「Live Anywhere Program(どこにでも住もうプログラム)」に参加した。このプログラムは、もっと快適にエアビーの宿での長期滞在をより快適にするためのアドバイスやインプットをすることで1年間の滞在費に補助が出るというものだ。プログラムに参加したのはミラーボス一家を含め12家族だ。
「私たちのようなクレイジーな家庭でもこの生活を続けられるなら、どこの家庭でもできると思いますよ」とミラーボスは言う。彼女の娘のアンナはこのプログラム中の旅の様子をブログに記録し続けている。
2. 所得を確保する
近く出版される本『Digital Nomads for Dummies(未訳:超初心者向けデジタルノマド入門)』の著者でもある前出のウィルソンは、デジタルノマドになりたいなら、どこを旅したいか夢見る前に、どうしたら旅をしながら生計を立てられるかを考えるべきだとアドバイスする。
人によっては、どこで働いてもいいと勤務先から許可を取り付ける必要があるかもしれないし、業種業界を変えたりフリーランスやオンラインで開業することになるかもしれない、と彼女は言う。
リモートで働くフルタイム社員であるミラーボスは、上司には誠実に何でも話すのがよいとアドバイスする。彼女はエアビーのプログラムに選ばれた時、自分は今後も東部標準時間で働くし、仕事の締め切りも守れると上司に伝えたという。
過去11年間、ウィルソンのクライアントに共通しているのは、全員が確実な収入源を持っていることだ。また、以前Insiderが取材した36歳のソフトウェア開発者でデジタルノマドのポール・ハンキン(Paul Hunkin)は、旅をしてから仕事を見つけることもできるが、次の給料がどこから入ってくるか分かっているほうが旅は楽しい、と語る。
「食えなくなったら人口3000人の小さな街に戻るしかないんだぞ、という覚悟は間違いなく強力なモチベーションになるのですが、これからやろうとする人にはそのやり方はお勧めできませんね」
3. 目的地を賢く選ぶ
ノマド生活に関するポッドキャスト「Badass Digital Nomads」も制作するウィルソンは、ノマドを目指す人には目的地を選ぶ前に考慮すべきことがいくつかあるという。それは、価格、コミュニティに近いかどうか、インターネットインフラがあるか、気候、安全性、タイムゾーンだ。こうした要素が整っていれば、あとは自分の好みで選べばよいという。
最初の目的地は、自分の最終目的地でも長期滞在をしようとする場所でもなくてよいとウィルソンは言う。
2022年1月にミツペ・トラベル・プランニング(Mitzpe Travel Planning)というリロケーションコンサルティング会社を立ち上げた冒頭のジャスワルは、コネチカット州のニューヘブンからメキシコシティに移り住み、4カ月間滞在した。その後ドバイに渡ったが、次はイスラエル、その後はギリシャかクロアチアにしようと計画中だ。
旅の計画を立てる際には、WiFiの有無、コロナに関する規制、インド人はビザが必要かどうかを確認するためにWork From Anywhere、Kayak、ウィキペディアなどを確認するようにしている。
ミラーボスからのアドバイスは、エアビーのような短期滞在用の宿を使う場合はすべてのレビューコメントに目を通すこと。自分に合った宿かどうかを判断するためには、自分と似たような客の書いたレビューを読むといい。
4. 移動など生活のペースを調整する
ノマド生活を始めるのはとても楽しそうだと思うかもしれない。しかし、常に移動し続ける生活は疲れやすいため、こうしたライフスタイルを長期間続けたいなら移動の頻度をうまく調整すること、とウィルソンは釘を刺す。
ミラーボスも、土地ごとのアクティビティや体験については現実的に考えるべきだとも言う。「こういう旅で一番問題なのは、滞在時間が限られているだけにあれもこれもやろうとしてしまうことです」
どんなに長く同じ場所に滞在しても、たとえそこに住んだとしても、すべてのことを見たり経験したりすることは不可能で、結局疲弊してしまうことになる。
ウィルソンも同様の考えだ。
「疲れたな、ストレスだなと感じたら、一度休めばいいんです。故郷の町や国に飛行機で戻って、次の計画を立てたり、ただのんびりと休むのもいいと思います」
(翻訳、編集・大門小百合)