早期退職は必ずしもうまくいくとは限らない、しっかり計画を立てておくことが必要だ。
polkadot_photo/Shutterstock
- ファイナンシャルプランナーである筆者の顧客には今、早期退職が人気で、いつも同じアドバイスをしている。
- 早くリタイアするなら、まずは新しくできる自由な時間の計画を立てる必要があるだろう。
- そして医療費だけでなく、その他のコストを計画する必要も出てくる。
クライアントと話をしているうちに気づいたのだが、最近は早期退職を望んでいる人が増えているようだ。人々の多くが、より充実した生活を送るために早期退職あるいは部分退職を検討している。しかしながら、実際に早期退職してみると予想とは全く異なる結果に陥ることもある。
早期退職は必ずしもうまくいくとは限らない。従業員福祉研究所(Employee Benefit Research Institute)の2020年の調査によると、現在のところ、60歳以前の退職を計画している労働者の割合は11%に過ぎない。自分もこの11%の1人だという人のために、早期退職に踏み切る前に検討すべき点をいくつか紹介しよう。
1. 引退後にできた時間で何がしたいのかよく考える
仕事をしている年月、私たちは何かとやることがあり、忙しく日々を過ごしている。趣味がたくさんある、ボランティア活動が好き、世界中を旅行したいなど、好みはそれぞれだろうが、引退後の時間をどう過ごしたいかをあらかじめ考えることはとても大切だ。多くの人が時間ぐらいいくらでも潰せると考えるが、いざ退職してみると日々がどうしようもなく退屈に感じられることも。
今こそ、これまであなたがずっと先延ばしにしてきた何かにチャレンジするとき。早期退職した後の生活をしっかりと計画しよう。
2. 仲間は仕事を続けるので、人間関係・社会生活が希薄になる恐れがあることを忘れない
通常の定年退職の場合、仕事仲間や友人の多くがだいたい同じ時期に退職する。そのため、夕食やブランチなど、気の合う最も親しい人々と頻繁に時間をともにすることが可能だろう。
一方、早期退職した人の多くは社会生活の欠如に悩まされている。仕事仲間がいまだに在職しているからだ。退職したあなたには昼間にゴルフをしたりビーチでくつろいだりする時間があるだろうが、朝9時から夕方5時まで働いている同僚にはそのような贅沢は許されない。
私自身、同僚との交流を保つために部分退職を選んで、ある程度は仕事を続けているクライアントを実際に何人も知っている。
大家族に囲まれている、孫が多い、新しい友人をつくる能力が高いなど、時間を持て余さない自信があるのなら話は別だが、そうでない場合は早期退職を決断する前に、この点についてよく考えてみたほうがいいだろう。
3. 退職後、月々どれぐらいの費用が必要になるかを現実的に考える
多くの人は、早期退職と通常の定年退職の区別をせずに、退職後の生活費について考える。しかし、早期退職した場合は、自分で予想するより出費が多くなるだろう。
引退した直後は、まだ若くて健康で時間もたっぷりあるのだから、仕事をしていた頃よりも出費が増えると考えたほうがいい。早期退職した人の多くが旅行や家の改築あるいは引っ越しなどをする。仕事がなくなって新しいことにどんどん挑戦したくなるのだが、当然それには費用がかかる。
また、家賃、子育て、借金の返済などにも、定年退職した場合よりも多くの額が必要になる。これら全ての出費に備えるためにも、きっちりと予算を立て、まるで給料のように一定の頻度で自分に報酬を支払う仕組みをつくることが大切になる。
4. 予期せぬ医療費が必要になった場合に備える
引退後は、どうしても医療費が支出の大きな部分を占めることになる。医療費を前もって正確に予想するのは不可能なため、いざというときのために十分な現金を確保しておくことが重要だ。量の目安を検討する際には、引退後の生活を送る予定の場所、今の健康、予想される寿命などを考慮に入れる。
メディケア(老齢者医療保険)は65歳まで利用できないことも見落としてはならない。つまりアメリカでは、ほとんどの場合、その年齢までは民間の保険制度に頼らざるを得ないということだ。民間医療保険は雇用者が費用の一部を負担することがないため、高額になることが多い。退職する前にこのあたりの費用を計算しておくこと。
もう一点忘れてはならないのは、医療費は物価の上昇やほかの理由で、毎年増えていくという事実だ。それに備えるために、引退後は医療費の自己負担額が毎年4、5%増えていくものと覚悟しておくべきだろう。
5. 財を長持ちさせるために不労所得を確保する
医療と技術の進歩のおかげで、人は総じて長生きするようになった。退職後の生活を脅かす最大のリスクは、ある時点で財産が尽きてしまうことだろう。最近の調査によると、2021年時点のアメリカ合衆国における平均寿命は76.6歳だったそうだ。
例えば、40歳で早期退職すると決めたとしよう。その場合、36.6年分の貯金が必要になる。65歳で引退するなら、11.6年分で済む。要するに、はるかに長持ちする貯金が必要だということだ。
引退後の長い時間で貯金が尽きる恐れがある場合は、引退後もしばらくの間、所得をもたらす不労所得をいくつか用意しておくのがいいだろう。長期ファンドに投資して配当金を得る、不動産を貸し出してキャッシュフローを生むなどして、退職後にも収入が得られるようにしておけば後悔することがないはずだ。
[原文:5 important things to consider before retiring early, according to a financial planner]
(翻訳・長谷川圭/LIBER、編集・長田真)