テスラは7月20日に第2四半期決算を発表した。3人のアナリストは業績をどう見るのか。
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世の中には、決算発表をするたびに注目される企業がいくつかあるが、テスラは間違いなくその一つだ。
テスラは最も注目を集めるテクノロジー分野を手がけていること、同ブランドのアイコン的性質、そしてCEOであるイーロン・マスクの輝かしい経歴などから世間の注目を集めている。もちろん、特に注目しているのは株式投資家たちだ。
同社は7月20日に第2四半期決算を発表したが、その評価はまちまちだった。しかし、世界的なサプライチェーン問題が長引いていること、テスラの中国工場が新型コロナウイルス感染拡大の影響でロックダウンを強いられたわりには、営業成績はよく持ち堪えたと言えるだろう。
今回の決算発表では、テスラがビットコイン資産の75%を売却したという発表は大いに世間の注目を集めたが、それよりも重要な点がある。
原材料コストがかさみ、車の生産コストが25%増となったにもかかわらず、同社の総売上高は前年同期比42%増の169億ドル(約2兆3300億円、1ドル=138円)、営業利益は同88%増の25億ドル(約3400億円)に達した。フリーキャッシュフローは前年度並みの6億2100万ドル(約856億円)だった。
だがこのようなポジティブな内容に反して、粗利率は前期の28.4%から27.9%に減少した。
「テスラが発表する数字は下がってきていますが、以前行った値上げが1台当たりの平均収益(ARPU)を押し上げ、すべての主要損益数値は驚くほど良かった。
ビットコインを現金化したことで、評価損を回避することができました」
そう話すのは、とジェフリーズ(Jefferies)の株式アナリストであるフィリップ・ホーチョイス(Philippe Houchois)だ。
「製造上の課題は今四半期も続いており、ギガファクトリーをフル稼働させる能力が制限されました。上海工場の操業停止もほぼ第2四半期いっぱい続き、1台当たりの生産コストが上昇する結果となりました」
ホーチョイスはこうも続ける。
「これは予想されていたことですが、第3四半期に逆転するよう設定されていた今四半期末の高い在庫率により、運転資本がフリーキャッシュフローを制約することになりました。
テスラの生産能力は現在190万台で、新たな製造基準を設定し続けています。第2四半期の好調ぶりと、下半期の記録的な生産台数に関する経営陣のコメントから、EBIT(利息及び税金控除前利益)は現在の見通しを5〜7%上回りそうです」
ジェフリーズが更新したテスラ株の目標価格は1050ドルで、「買い」と評価されている。ちなみに7月20日の同株の終値は742.50ドルだった。
業績は好調だが反応はイマイチ
株式ブローカー、ハーグリーブス・ランズタウン(Hargreaves Lansdown)の株式アナリスト、ローラ・ホイ(Laura Hoy)は、「厳しさを増す環境下で営業利益を伸ばしたにもかかわらず、テスラの第2四半期の決算発表への反応はいまひとつでした」と指摘し、こう続ける。
「しかし、注目されたのは自動車の売上総利益率が低下したことです。第1四半期の32.9%から27.9%へと落ち込んでいます。テスラの巨大なギガファクトリーで生産される台数が多ければ多いほど1台当たりのコストは下がります。今月初めに発表された期待外れの出荷台数を考えると、投資家はすでに収益性の低下を覚悟していたのでしょう。
プラス材料としては、この状況は短期的な問題に終わるだろうという点です。第1四半期の結果からも分かるように、工場が完全に機能すれば収益に直結します。サプライチェーンのボトルネック状態が改善され、工場がフル稼働するようになれば、利益率は上昇するでしょう」
ホイによると、かなり話題になったテスラの仮想通貨ゲームは、財務上の主要問題にはならないものの懸念材料となっており、投資家に疑問を抱かせる結果になっているという。
「イーロン・マスクが仮想通貨に積極的に関与していることも、収益減の一因になっています。テスラグループは、ビットコインの暴落は悩みのタネだと言っています。
仮想通貨の売却でテスラグループがどれほどの損失を出したのか正確なところは分かりませんが、保有株の75%はより安定した通貨に変換されたため、損失の程度は概ね判明しています。
ですが、今回のビットコインの損失は、テスラの投資事業に関して重要な一面を示しています。つまり、オーナーがエキセントリックだということ。マスクの優れた革新性は同社に大きく貢献してきましたが、同時に彼個人の才気が原因でガバナンスの問題が起こりつつあります」
イートロ(eToro)のアナリストであるマーク・クラウチ(Mark Crouch)は、「厳しい世界経済によるしわ寄せがいま露呈している」と述べ、比較的弱気な見方を示した。
「テスラは、他の自動車メーカーが苦しんでいる世界的な半導体不足やサプライチェーン問題をうまく乗り切ったように思われましたが、最新の四半期決算を見ると、テスラもそのしわ寄せを大いに受けていることが分かります。
テスラは通期の売上高を42%、収益を57%高めることができました。しかし、第1四半期から第2四半期にかけてはどちらの数値も大幅に下がっています。つまり、テスラも他のメーカーが直面している生産問題を抱えているということです」(クラウチ)
さらにクラウチは、「テスラの上海工場の再開は好材料になるでしょうが、材料不足は業界全体が直面している課題で、簡単かつ即効性のある救済策はありません」との見方を示し、「ですから、第3四半期で業績が急上昇するとは考えにくいですね」と結んだ。
(編集・常盤亜由子)