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この連載の第80回で「キャリア信用スコア」の高め方についてお話ししました。
その中で、ビジネス向けSNS「LinkedIn(リンクトイン)」の活用をお勧めしたところ、「LinkedInの活用法をもっと知りたい」「LinkedInのプロフィールをどのように書けばいいですか?」といったご質問をいただきました。
私としては、すべてのビジネスパーソンの皆さんに「もっとLinkedInを活用してください!」とお伝えしたいです。
アメリカではスカウトツールとしてメジャーなLinkedInですが、日本での登録者はまだまだごく一部。その分、「感度が高いビジネスパーソンが使っている」というイメージが持たれており、特にハイクラス~エグゼクティブ層の人材サーチでは注目されているのです。
そこで今回は、「LinkedInの活用術」をテーマにお送りします。
プロフィールを記載する際、どのようなポイントを意識して書けば転職スカウトの目に留まりやすくなるかをお話しします。
転職活動は「スカウトを待つ」スタイルが一般化
一昔前の転職活動といえば、「求人誌や求人サイトで求人を探す」「転職エージェントに登録して求人の紹介を受ける」という方法が一般的でした。
しかし、昨今は「転職サイトのスカウトサービスに経歴を登録しておき、企業や転職エージェントからスカウトの声がかかるのを待つ」スタイルが広がりつつあります。
代表的なサービスには、「ビズリーチ」「リクルートダイレクトスカウト(旧:キャリアカーバー)」などがあります。テレビCMでもよく見かけるので、すでに登録している方も多いのではないでしょうか。
すぐに転職するつもりはなくても、「条件の良いオファーがあれば転職を検討する」「どんな企業から声がかかるかによって、自身の現在の『転職市場価値』を知る」といった目的で利用するビジネスパーソンも増えています。
さて、私たち転職エージェントは、企業からの求人依頼を受け、こうしたスカウトサービスの登録者データベースで人材をサーチするのですが、ほかにLinkedInもよく閲覧しています。
ビズリーチなどを使わずLinkedIn優先で人材サーチをする転職エージェントもいますので、LinkedInに登録しておくと入手できる求人案件の幅が広がるでしょう。
また、転職する気はなくても、LinkedInにプロフィールを公開しておくことで、ビジネスパートナーや志を同じくする仲間などに出会える可能性があります。
メディアの編集者が取材対象者をLinkedInで探すことも多く、専門分野の有識者としてメディアデビューにつながるケースもあります。
転職はもちろん、ビジネスやキャリアに関する情報収集ツールとしても、ぜひ活用してはいかがでしょうか。
では、LinkedInのプロフィール欄には具体的にどのような情報を記載しておくと、人材をサーチしている企業や転職エージェントの目に留まりやすくなるのでしょうか。発信のポイントをお伝えしますね。
自分を表現するキーワードを多く盛り込む
プロフィールの記載項目の基本は次のとおりです。
- 学歴
- 職務経歴(所属企業・部署・担当職務・携わったプロジェクトなど)
- 保有資格
- 強みとする領域やスキル
そして、さらに具体的に、次のような情報も盛り込んでおくといいでしょう。
- これまでの仕事で挙げた成果・実績
- 人脈・ネットワーク
- 興味を持っている分野・テーマ(現在の本業と関連がないものでも可)
- 仕事に対するスタンスやマインドセットなど
ここまで記載しておくと、転職のスカウトに限らず、「こんなプロジェクトを一緒にやりませんか」といったお誘いの声がかかる可能性も高まるでしょう。
そして、これらを記載する際には、なるべく多くの「キーワード」を盛り込むことを意識してください。企業人事や転職エージェントがサーチする際の検索ワードに引っかかりやすくするためです。
転職エージェントが人材サーチを行う際には、企業名・部署名・職種名・肩書などで検索します。例えば、人事の人材を探す際には「HR」「CHRO(最高人事責任者)」といったワードも使用します。
「DX(デジタルトランスフォーメーション)」など、プロジェクトテーマのワードで検索し、その経験者を探すこともあります。
自分は何者なのか、どんなことができるのか……自分自身を表現する「タグ」となるワードを書き出し、プロフィール文に盛り込んでください。そうすれば、あなたの経験・スキルを求めている人に見つけてもらいやすくなります。
もちろん、現職・前職の会社の守秘義務を厳守することが前提です。
コンプライアンス違反にならない範囲で、なるべく多くの情報を提供するといいでしょう。
求人に応募する際に提出する職務経歴書の場合は、なるべく1~2枚以内にまとめるのが鉄則です。ボリュームが多すぎると、選考する人に負担をかけるからです。
しかし、LinkedInの場合は、ボリュームが多くなってもかまいません。ちょっとした情報が誰かの目に留まり、そこからチャンスが広がる可能性がありますから。
記事投稿で「人となり」を感じ取ってもらう
LinkedInをさらに活用するなら、プロフィールを記載するだけでなく、記事を投稿するのもお勧めです。ビジネスに限らず、興味・関心があるテーマでOKです。
投稿記事では、その内容やメッセージはもちろん、文章トーンからも、その人の「人となり」が伝わるものです。「話をしてみたい」「一緒に働いたら面白そう」といった印象を持たれ、ご縁がつながる可能性があります。
先日、『LinkedIn活用大全』を出版された松本淳氏と一緒にセミナー登壇する機会がありました。
松本氏によると、読み手の役に立つような有意義な記事や「すごい」と言われる記事を書こうと身構える必要はない、といいます。
日記のように、「こんな出来事があり、こう感じた」「こんな人に会い、新たな発見があった」など、感情が動いたことを数行でも書けばいい、と。
そんな発信が共感を呼び、気づけばフォロワーが増えていた……なんて事例もあるそうです。
キャリアだけでなく「共感」で人とつながる。そんな出会いのきっかけを生み出せる可能性があるのです。
個人で「キャリア情報」を管理する時代
これまで、自分の人事情報=キャリアは、所属企業が管理してくれていました。しかしこれからは個々で管理する時代です。
平均在籍年数が12.4年の時代です。一つの会社で一生働き続ける人は減っていき、「何度か転職する」「副業・複業を持つ」といった人が増えていきます。
ですから、自分の職務経歴をしっかり管理し、適切に活用していく必要があります。
その管理ツールとして、LinkedInを活用するのも有効だと思います。
自身のキャリアを蓄積し、都度アップデートしていく。加えて、仕事に向き合うスタンスや、これからチャレンジしたいことなども発信していく。
それによって、思いがけない人や企業との縁を呼び寄せ、キャリアに新たな展開が生まれるかもしれません。
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森本千賀子:獨協大学外国語学部卒業後、リクルート人材センター(現リクルートキャリア)入社。転職エージェントとして幅広い企業に対し人材戦略コンサルティング、採用支援サポートを手がけ実績多数。リクルート在籍時に、個人事業主としてまた2017年3月には株式会社morichを設立し複業を実践。現在も、NPOの理事や社外取締役、顧問など10数枚の名刺を持ちながらパラレルキャリアを体現。2012年NHK「プロフェッショナル〜仕事の流儀〜」に出演。『成功する転職』『無敵の転職』など著書多数。2男の母の顔も持つ。