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10年で年商30倍の「地域文化商社」うなぎの寝床。地方創生で全国から熱視線のワケ

unaginonedoko local business MONPE beyond sustainability 2022

伝統柄や無地の久留米絣でつくられた、うなぎの寝床の「現代風MONPE」。シンプルで洗練されたデザイン、履き心地の良さが話題を呼んだヒット商品だ。

提供:うなぎの寝床

九州・筑後地方で古くからつくられてきた久留米絣(くるめかすり)のもんぺを現代風にアレンジし、年間約2万着を販売する大ヒット商品に育て上げた「うなぎの寝床」。

2012年7月に創業した同社は、白壁土蔵の町並みで知られる福岡県八女市を拠点に、地域の伝統工芸品や特産品を販売するアンテナショップをはじめ、製造、小売り、出版、ツーリズム、宿泊施設など、広範囲にビジネスを展開している。

「お店をやりたいから開店したとか、ものづくりをしたいからメーカーを始めたとかいうわけではありません。この地域の文化を多くの人々に伝えるために、足りない事業を自分たちで立ち上げ、間を埋めたりつないだりしていくうちに広がっていったという感じです」

こう語るのは、うなぎの寝床の代表、白水高広さんだ。

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うなぎの寝床の代表、白水高広さん。

提供:うなぎの寝床

10年で年商が30倍以上に成長

うなぎの寝床が目指すのは、地域に伝わる歴史や文化を独自に研究し、経済的・社会的に循環させる仕組みを見出していくこと。その役割を表現する言葉として、自らを「地域文化商社」と称している。

似たような事業はほかにもたくさんあるじゃないか、と思われるかもしれない。

確かに、洗練されたデザインやストーリー性で伝統工芸・伝統行事の価値を上げ、それをキーコンテンツに発信する地域のブランディングは全国各地で行われている。

ただ、よくある地域ブランディングと決定的に違うのは、つくり手・流通・小売りを含め、地域文化に利益を還元しながら循環させる「仕組み」づくりを重視しているということだ。

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うなぎの寝床が目指す循環のイメージ①。商品の販売だけでなく、ツアーや体験を組み合わせながら地域文化の価値を伝える仕組みをつくり、しかも生産者・地域文化商社も含め全体的に採算性が取れるビジネスモデルを構築することを重視している。

提供:うなぎの寝床

「うまく行っていると思った時点で衰退が始まっている」と話す白水さんだが、売り上げは創業から10年で30倍以上に拡大。しかも、コロナ禍で移動が制限されていた過去2年間を含め、一度も赤字を出したことがないという。

堅実に成長し続けるうなぎの寝床の取り組みは、地方創生・地域活性化に挑む自治体やまちづくりディベロッパーから注目を集め、全国から視察が相次いでいる。

地方で役立つ“建築応用学”的な思考法

うなぎの寝床はなぜ、ビジネスを軌道に乗せることができたのか。

その一つのヒントと言えるのが、大学で建築を学んだ白水さんが身につけた「建築的な思考方法」だ。

建物を建てる際には、その土地の立地や性質、建てる目的といった前提を整理した上で、コンセプトを考え、デザインに落として行く。また予算や工程、スケジュール管理なども含め、全体を一体的に考えなければならない。

「僕は、この建築的思考プロセスを他の分野に応用できると思っていて『建築応用学』なる学問が存在すればよいのでははないかと考えています」(白水さんのnoteより抜粋)

この「建築応用学」的な思考プロセスが「地方では役に立つ」と、白水さんは言う。

都市部の大きなプロジェクトは各分野のプロフェッショナルが分業すれば成立するが、プロフェッショナルの数も予算も限られた地方では、1人で何役もこなさなければならないからだ。

「都市や街、地域といった単位の中で、物事をどのように機能させていくか。そうした都市計画的な観点が重要なんです。

だから、僕たちは、あらゆる変化に対して柔軟に伸び縮みしながら、ビジネス全体を『生態系』としてうまく機能させていくイメージで進めています」(白水さん)

観光客を当て込んだ多くの地方創生・地方活性化事業がコロナ禍で立ち行かなくなるなか、うなぎの寝床はECサイトや大都市圏での販売を伸ばし、10期連続の売り上げ更新を果たした。

それも、「生態系」をイメージしたビジネスを重視している結果に違いない。

コロナ禍で再認識した「リアルで伝える」大切さ

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古民家をリノベーションしたアンテナショップの一つ「旧丸林本家」。久留米絣の「MONPE」など、うなぎの寝床のオリジナル商品を販売している。

提供:うなぎの寝床

コロナ禍で初めて緊急事態宣言が出された2020年4月、うなぎの寝床は八女市内にあるアンテナショップを即座に閉めた。

それから6月末に再開するまでの間、Webサイトをリニューアルしたりアンテナショップのあり方を見直したりと、「地域文化を伝える場」としての側面を強化することに力を注いだ。

「ECを強化したおかげで、EC経由の売り上げは上がりました。ただ、モノの売り買いだけになってしまったんです。

人と人を介して地域文化を自分たちでしっかりと伝えること。そのための場所を作ること。その重要性を再認識しました」(白水さん)

実はコロナ禍前の2019年7月、うなぎの寝床は、地域のイノベーションを創出するリ・パブリックと共同で、研究・出版・ツーリズム事業を手掛けるトラベル・デザイン・ファーム「UNAラボラトリーズ(ウナラボ)」を設立していた。

同社は2020年8月に第1弾のツアーを開始し、2021年9月には九州の手仕事を体験できる宿泊施設「Craft Inn 手」をオープン。「海外観光客の訪問も見込んでいたため(コロナ禍)真っ只中で大変だった」(白水さん)が、リアルで地域文化を伝えることに対する意欲は失わなかった。

「モノを買って使うだけより、現場でつくり手と話したり、自分で手を動かしたりすることで、その人の体験価値はものすごく上がるんです。これはとても重要なことなので、しっかりとした仕組みにしていきたいと思っています」(白水さん)

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うなぎの寝床が目指す循環のイメージ②。地元のアンテナショップやECサイトだけでなく、ツーリズムや体験型の宿泊施設などを通し、地域文化をより濃く伝える仕組みづくりに力を入れる。

提供:うなぎの寝床

地域文化を再興する鍵は「人間の意思」

白水さんは今、コロナ禍が地域文化に及ぼした影響に強い危機感を抱いている。

「コロナ禍で、地域産業や伝統工芸が急速に弱ってきているのを感じます。地域文化を途絶えさせないような仕組みを急いでつくらないと、この5年、10年でいろいろなものがなくなっていくでしょう」(白水さん)

そのためには、拠点を増やし、他地域と連帯していくことがますます重要になってくる。同様の危機感を持つ自治体も多く、うなぎの寝床のような「地域文化商社」をつくれないかという打診も少なくないという。

それに対し、「うなぎの寝床のコンセプトモデルはいろいろな地域にも応用できる」と話す白水さん。だが、どんな地域でも実現できるというわけではない。

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うなぎの寝床が構築した地域文化商社のコンセプトモデル。

提供:うなぎの寝床

「その地域の人たちが主体性を持ってやるのかどうかが重要で、『うちの地域に合うように何か考えてください』という話には乗れません。なぜなら、僕らが抜けたら元の状態に戻ってしまうから。持続可能性がないわけです」(白水さん)

うなぎの寝床が手掛ける場合には、基本的に持続可能なビジネスにする覚悟で取り組む考えだ。

「方法は、僕らが直接手掛ける形でもフランチャイズで地元の人たちが運営する形でも、成り立つのであれば正直どちらでもいい。ただ、そこに『人間の意志』があることがすごく重要だと思っています」(白水さん)

(文・湯田陽子


※うなぎの寝床 は、サステナビリティ経営に取り組む企業を表彰するBusiness Insider Japanのアワード「Beyond Sustainability2022」のローカル部門にノミネートされています。ノミネート企業13社の中から受賞した4社が登壇するオンラインイベントが、2022年7月25日(月)~29日(金)に開催されます。詳しくはこちらから。

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