撮影:今村拓馬
7月25日、厚生労働省が国内で初めて「サル痘」の感染者を確認したと発表した。
感染が確認されたのは、都内在住の30代男性。欧州へ渡航歴があり、その後サル痘と診断された人との接触歴があった。7月25日に医療機関を受診した際に、発熱、頭痛、発疹、倦怠感の症状があったという。
サル痘の症状や感染経路は?
サル痘は欧米を中心に感染の報告が相次いでおり、23日(日本時間)には世界保健機関(WHO)が「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言していた。
サル痘ウイルスの電子顕微鏡写真
画像:国立感染症研究所
WHOによると、サル痘はもともと西アフリカや中央アフリカの風土病として局所的に広がっていたが、2022年5月初旬以降に欧米への感染が拡大していったという。
サル痘はその名前から「サル」を感染源としたイメージを持たれがちだが、ネズミやリスなど、多くの動物が宿主となりうる。感染した動物に噛まれたり、血液や体液、発疹に触れたりすることで感染が広がる。長時間にわたり接近した状態で感染者の飛沫にさらされる状況や、皮膚の病変(発疹など)、体液との接触などによって人から人への感染も起こるとされている。
WHOによると、感染が疑われる動物との接触を避けることはもちろん、感染している可能性のある人との密接した状態での会話や接触(特に性的な接触)を避けることが基本的な対策となる。
サル痘ウイルスの潜伏期間(感染から発症までの期間)は、6日〜13日(厚生労働省は通常7〜14日と表記)。
感染した場合、まず発熱や頭痛、リンパ節の腫れ、筋肉痛、虚脱感といった症状が0〜5日続く。また、発熱から1〜3日以内に皮膚の発疹が現れるという。なお、症状は通常2〜4週間続く。
多くは自然に回復するというが、子どもの場合やウイルスの曝露量が多い場合、あるいは合併症などによって重症化する場合もある。
基本的な治療法は、症状に対症療法となるが、欧州では天然痘用に開発された抗ウイルス剤がサル痘の治療薬として承認されている。ただ、広く流通している状況ではないという。
また、WHOによると、天然痘のワクチンがサル痘にも予防効果があることを確認しているという。
国内での対応は?
厚生労働省は25日21時過ぎから記者会見を開催。
感染が判明した男性は、7月15日に倦怠感があり、その後25日に医療機関を受診。濃厚接触者、市中感染の有無は調査中だとしている。
また現在、臨床研究として「患者に対して治療薬を投与する研究」「医療従事者に天然痘ワクチンを接種する研究」「濃厚接触者に対して天然痘ワクチンを接種する研究」の実施が進んでいる。
今回感染が発覚した患者への治療や、医療従事者の予防は、対象者への同意のもと、この臨床試験の枠組みで進めていくとしている。
(文・三ツ村崇志)
参考
※編集部より:感染対策に関する記述を追記しました。2022年7月25日 21:00
※編集部より:厚生労働省の会見の内容を追記しました。2022年7月25日 21:45