パタゴニアが2022年秋冬商品として発売する「ダウンセーター」。
撮影:横山耕太郎
パタゴニアは2022年7月27日、2022年の秋冬シーズンのハイライト製品を紹介するメディア向け展示会を開いた。
環境への配慮した商品作りで知られるパタゴニアの最新作は、漁業で使われるプラスチック製の「網」から作った素材を使ったダウンジャケットや、撥水(はっすい)加工のためのフッ素化合物を使っていないスキー用ジャケットなどが並んだ。
2022年秋冬製品は、8月4日からウェブサイトで先行販売され、一部の製品をのぞき、店頭での販売は8月25日からスタートする。
1989年に発売した定番商品
「ダウン・セーター」は側縁のデザインも改良された。
撮影:横山耕太郎
2022年秋冬シーズンの新作で、最も目を引いたのがダウンジャケット「ダウン・セーター」(税込み3万5200円)だ。ダウンジャケットは1989年から発売されているパタゴニアの定番商品でもある。
現行モデルは2014年に発売されたもので、ジャケットの表面部分の素材には、リサイクルしたポリエステルを100%使用。羽毛に関しても、強制的な給餌や、生きたままで羽毛を採取する方法を取らない素材を使っていた。
そして8月に販売予定の最新作では、ジャケットの表面の素材について、南米の漁業団体から回収した使用済みの漁網をリサイクルした「ネットプラス」という素材を使用している。
深刻な海のプラスチック汚染
撮影:横山耕太郎
パタゴニアによると、全世界では毎年880万トンの廃棄されたプラスチックが海に放流されており、海に放置されたプラスチック製の漁網による汚染も深刻化している。
そこでパタゴニアでは、カリフォルニア州の企業と協力し、廃棄されたままになっている漁網を回収、網からリサイクル素材・ネットプラスを開発した。
これまではネットプラスは、パタゴニア製のキャップのつば部分など硬い部分に使われてきたが、より柔らかい素材の開発に成功したため、最新作ではダウンジャケットに採用された。
「軽量のダウンジャケットはすでに市場にあふれていますが、パタゴニアを代表する定番商品として、環境への配慮を徹底した新商品。
環境を意識して商品を選ぶ消費者も増えており、環境面でのメッセージを伝えていきたい」(パタゴニア日本支社カテゴリーマーケター・桑原健人氏)
長く使ってもらう工夫も
「ダウン・セーター」に付属している「リペアパッチ」。
撮影:横山耕太郎
商品を長く使ってもらうための仕組みも用意している。
ダウンジャケットが破れた時に使える「リペアパッチ」が、「ダウン・セーター」の付属品として付いてくるという。
また修理や再利用を促すため、「WEAR IT. REPAIR IT. HAND IT ALONG.( 着て、修理して、譲ろう)」と書かれたタグも商品に縫い付けた。
「ダウン・セーター」につけられたタグ。
撮影:横山耕太郎
パタゴニアでは国内向けとして1998年に、製品の修理を専門としたリペアサービスを鎌倉市に設置。1年間に1万件以上の修理するなど、製品を長く使ってもらうための取り組みを続けている。
2021年11月にBusiness Insider Japanの取材に応じたパタゴニア日本支社長のマーティ・ポンフレー氏は、「アパレル産業自体、環境に良い産業であるはずはない。だからこそ、我々アパレル企業は環境への害を最小限に減らしていく責任がある」と話した。
スキー用ウェアではフッ素化合物を「不使用」
「パウダー・ダウン・ジャケット」。スノーウェアとしては初めて「フッ素化合物」を使っていない。
撮影:横山耕太郎
より高性能な「ストーム・シフト・ジャケット」(税込み5万9400円)。裏地には汗がこもらない素材が使われている。
撮影:横山耕太郎
パウダー・タウン・ジャケットに合わせるビブス(税込み3万8500円)。
撮影:横山耕太郎
スキー用のウェアの新作も、従来品よりもさらに環境への影響を低減させたモデルだという。
パタゴニアによると、スキー用ウェアなどの撥水加工では多くの場合、フッ素化合物が使われているが、フッ素化合物は環境に有害な影響を与えるとされる。
パタゴニアの2022年秋冬モデルの「パウダー・タウン・ジャケット」(税込み4万2900円)は、リサイクルのポリエステルを使用し、フッ素化合物は使っていない「PFCフリー」の商品。
スキー用ウェアでPFCフリーの素材を使うのは、パタゴニアとしては初という。
パタゴニア日本支社カテゴリーマーケター・内野宗一郎氏は次のように話す。
「欧米ではフッ素化合物を使用しないことへの関心が高まっているが、日本ではまだあまり知られていない。
パタゴニアが製品開発を続けた結果、耐久性としなやかさを持ったPFCフリーのスキーウェアが完成した」
(文・横山耕太郎)