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サラ・ネイソンタラハノ(Sara Naison-Tarajano)は ゴールドマン・サックス(Goldman Sachs)でプライベート・ウェルスマネジメント・キャピタルマーケット部門のグローバル統括責任者を務めている。
彼女が担当するのは、1000万ドル(約13億6000万円、1ドル=136円換算)から数十億ドル(数千億円)規模の資産を持つ超富裕層の顧客である。現在彼女の部署は、市場の変動や経済の不確実性に対処していくための顧客サポートに集中的に取り組んでいる。
顧客の主な関心事は、継続的な金利上昇と景気後退の可能性に備えて適切なポートフォリオを確実に組むことだ。
「どのお客様も核として持っている思いは同じ。自分の資産を守り、子どもたちの世代のために増やしたいんです。こいう方たちのほうが、平均的な機関投資家のお客様より多少辛抱強いですね」と、ネイソンタラハノは述べる。
彼女は顧客に、市場のタイミングを計るのは難しいため、投資は続けるようにとアドバイスしている。下降トレンドにある市場からの利益を狙う戦術的な投資家が相手なら議論の中心はヘッジになるが、皆がそれを必要としているわけではない、と彼女は言う。
今はインフレ環境下にあるので現金残高については慎重な姿勢を保ち、代わりに投資適格で短期の確定利付債を検討することも考慮する必要がある。
投資に適したもう一つの分野が「プライベート・マーケット」だ。公開証券取引所に上場されていない資産や企業を指し、経済の変動の影響を受けにくいため投資に適している。ネイソンタラハノの部署では、顧客のポートフォリオにプライベート・マーケットを20%程度組み込むことを推奨している。
株式分野で彼女の部署が今注目しているのは、バランスシートが堅調で、高い収益性を持続でき、配当利回りが高く、環境に配慮した設備投資や炭素排出量ゼロを目指している企業だ。
ネイソンタラハノは、超一流の投資家でもなければ上場投資信託(ETF)やインデックス投信に投資するのが一番だと言う。これなら単一銘柄への投資によるリスクが回避されるからだ。
経済に関して言えば、インフレ率は2023年まで上昇を続け、その後徐々に下がるとゴールドマン・サックスは見込んでいる。米連邦準備制度理事会(FRB)は2022年7月27日に基準金利を再び0.75%引き上げたが、ネイソンタラハノは今後さらに3回連続で引き上げがあると見ている(9月に0.50%が1回、その後0.25%が2回)。
ネイソンタラハノによれば、ゴールドマン・サックスのエコノミストらは景気後退の可能性を約30%に引き上げた。ただしこれは景気サイクルによるものと判断しており、それほど懸念はしていないという。過去のパターンに基づけば、市場は約30%修正される可能性があり、今ちょうどその時期に差しかかっているのだ、と彼女は指摘する。
株式市場の底値を予測するのは難しいが、この程度の下落であればS&P500インデックスは3400程度になるだろう、ネイソンタラハノは予測する。また、銀行のバランスシートが改善され、今はそれほどレバレッジがかかっていないことも良いニュースだとして、こう続ける。
「何より、パニックが広がっていないことも大きな安心材料です」
(編集・大門小百合)