症状検索エンジンやAI問診などを提供する医療ベンチャーのUbieは、35億円の資金調達を実施した。
撮影:三ツ村崇志
症状検索エンジンやAI問診などのサービスを提供する医療ベンチャーのUbieは、7月26日、シリーズCのファーストクローズとして、35億円の資金調達を実施したことを発表した。
新規投資家として農林中金キャピタル、NVenture Capital、第一生命保険、エッグフォワードが引受け先となった。また、既存投資家であるスズケンも継続して出資した。
Ubieの累計調達額は、これで79億8000万円となる。
医療の情報の非対称性を改善できるか?
Ubieのサービスは、生活者向けサービス「症状検索エンジン『ユビー』」と、医療機関向けサービスの「ユビーAI問診」の大きく分けて2つある。
Ubie
コロナ禍では医療のDXの形として「オンライン診療」が一躍注目を集めていた。
ただ、Ubieが取り組んできたのは、病院で診療を受けるさらにひとつ前の段階の交通整理だ。
Ubieが提供するプロダクトは、生活者向け(toC向け)サービス「症状検索エンジン『ユビー』」と、医療機関向け(toB向け)サービスの「ユビーAI問診」と、大きく2つに分けられる。
症状検索エンジン「ユビー」は、私たち個人がなんらかの体調不良に陥った際に、症状を入力することで関連していそうな疾患情報や、その症状に対応できる近隣の医療機関情報を提供している。疾患の早期発見・医療機関への受診支援を目的としているサービスだ。
Ubie広報によると、2020年4月の提供開始から約2年で月間500万人が利用するサービスへと成長しているという。
「『この症状ってなんなんだろう』という疑問を解消し、そもそも何科を受診したら良いか分からないケースをサポートすることができます。また、医療機関側としても、自分たちの得意とする患者さんとつながることができます」(Ubie・広報)
一方、医療機関向けのユビーAI問診では、タブレットなどを用いて事前に問診することで、医師の業務効率化が図れることはもちろん、症状をもとにAIが関連する病名を医師に提示することで診療のサポートが可能だ。
コロナ禍では、事前にCOVID-19に関する症状の有無を把握することで、院内感染対策への活用もなされた。2022年7月の段階で全国1000以上の医療機関に導入されている。
Ubie 広報は、今回調達した資金の使途について
「昨年末から、『製薬企業』に特化した組織を作っており、基本的にその事業の人材獲得に使っていくことになります」(Ubie・広報)
と話す。
製薬企業には、病気やその治療薬に関する膨大な情報が存在している。啓発サイトなどを通じて、潜在的な患者に対して情報発信をしているケースもみられる。
ただ、そういった情報が、必ずしもその病気の可能性がある人や、医師にうまく届いているわけではないという。インターネット上には膨大な情報があるため、患者や医師がその中から製薬企業のサイトを能動的に選択しなければ届かない。
そこでUbieでは、自社のプラットフォーム上(検索エンジンやAI問診)に、製薬企業が保有する情報を提示することで、これまで製薬会社の情報にアプローチできなかった潜在患者や医師に、情報を届けるサポートをしようとしている。
例えば、2021年4月からスタートした武田製薬との協業では、希少疾患で未診断も多いとされている「遺伝性血管性浮腫(HAE)」に対しての取り組みが進んでいる。
Ubieがもつプラットフォーム上で関連する症状の回答があった際に、武田製薬の情報サイトを接続。患者側への情報提供はもちろん、診療する医師への情報提供をすることで、診療をサポートし、早期発見し、適切な治療に結びつけようという取り組みだ。
Ubieでは、2021年末に製薬企業に特化した組織を立ち上げて以降、国内外の大手製薬企業20社以上との取引が進んでいるという。
「今回の資金調達を機に、事業開発及びグロースを一層加速させていきます」(Ubie・広報)
としている。
(文・三ツ村崇志)