1周年記念イベントに登壇した、山口環境相(左)、国分さん(中)、野々村チェアマン(右)。
撮影:湯田陽子
「地元の人たちに『素晴らしい景色ですね』と言うと、たいていの人は『いや、全然素敵じゃない。何にもないし、もう見飽きた』って答えるんです。でも、僕らのように都心から来た人間からすると、その景色はとても貴重な財産なんですよね」
こう語るのは、タレントであり、株式会社TOKIOの副社長としても活躍する国分太一さんだ。
7月22日に開かれたサッカーJリーグと環境省の連携協定締結1周年記念イベントで、国分さんと元日本サッカー代表の北澤豪さんが、地域と環境をめぐり熱いトークを繰り広げた。
サッカー観戦は地域の魅力に気づくチャンス
国分さんは、「DASH村」(日本テレビ系の番組『ザ!鉄腕!DASH!!』内の企画)の活動や取材などを含め、これまでに数多くの地域を訪れてきた。
そんな国分さんの心に特に印象深く刻まれているのが、冒頭で語った、地域の人たちと外部の人間が抱く感覚のズレだ。
国分さんは、 “当たり前”の景色の魅力に地元の人たち自身が気づくことができれば、それが環境の保護や地域活性化につながるのではないかと話す。
「地元の人たち自身が魅力的だと感じるようになれば、自分たちでその景色を守ろう、どうしたら人が来るようになるんだろう?……という形でつながっていくと思うんです」(国分さん)
そういった意味で、J1からJ3まで計57チームが40都道府県を拠点に展開するJリーグの果たす役割は大きいと期待する。
「Jリーグがすごくいいなと思うのは地域密着型というところ。そして、アウェーのサポーターの皆さんが現地に行って応援すること。つまり、アウェーのサポーターの人たちが、その(ホームチームの)街や県の良さに触れるチャンスがあるということです」(国分さん)
そうしたチャンスを広げる例として、こんなアイデアも飛び出した。
「(試合)前日から泊まる場合、スタジアム近くにキャンプ場があれば、ホテルではなくキャンプ場に泊まって自然を体験してからサッカーを観に行くということがあってもいいんじゃないかなと思います」(国分さん)
酷暑で「サッカーできない」時代が来た?
一方、北澤さんは「相手をリスペクトする」というサッカーの文化が、環境を含めた社会課題解決の糸口になる可能性に期待を寄せる。
日本障がい者サッカー連盟の会長も務める北澤さん。2022年5月には国連UNHCR協会の国連難民サポーターに就任した。
撮影:湯田陽子
「対戦相手だけではなく、その地域の人やモノ、環境まで含めてリスペクトするイメージを持つようになれば、相手のサポーターたちもそれを感じるようになるのではないでしょうか」(北澤さん)
日本障がい者サッカー連盟の会長でもある北澤さんは、かつてJICA(国際協力機構)のオフィシャルサポーターを務めていた。また2022年5月には、国連UNHCR協会の国連難民サポーターに就任。国内だけでなくグローバルな社会課題の解決に関心を持ち、気候変動に対しても強い危機感を抱いている。
「そもそもそれ(気候変動対策)を考えないと、将来的にスポーツをやれない環境になる可能性もあるわけですよね」(北澤さん)
自宅のエアコンが故障中で「暑くて眠れない」という北澤さん。
選手時代からコンディションを整えるために冷房を使わないようにしてきたが、「冷房なしでは生きていけないような夏になってきた」。さらに、そうした状況が子どもたちからサッカーをする機会を奪う「機会ロスにもつながる」という危機感も抱く。
トークセッションは、アウトドアブランド・パタゴニアの元日本支社長で社会活動家として知られる辻井隆行さんが進行。社会人チームに所属していた経験を持つ辻井さんは現在、Jリーグの理事も務めている。
撮影:湯田陽子
北澤さんは、サッカーを観に行くことを通じて、こういった社会課題に気づくような取り組みがあってもいいのではないかと話す。
「例えば、(最寄り駅から)スタジアムまで自動運転のバスを運行させるといったコラボレーションがあってもいいかもしれません。サッカーを観に行くだけではなく、(スタジアムを)それぞれの地域課題や環境問題に気づかせてくれる『お得な場所』にしていけばいいのではないでしょうか」(北澤さん)
1周年記念イベントには、野々村芳和チェアマン、山口壯環境大臣、Jリーグのタイトルパートナー・明治安田生命保険の永島英器社長も登壇した。
野々村氏は今回、Jリーグのすべての公式戦について、二酸化炭素(CO2)の排出量を実質ゼロにする「カーボンオフセット」を目指すことを宣言した。
「来シーズンからになるが、まずは全試合でCO2がどのくらい排出されているのかをリアルに計測する。それをもとに、各クラブがどの程度改善できるかをJリーグと各クラブで一緒に考えていくところから始めたい」(野々村氏)
(文・湯田陽子)