※本記事は、2019年8月3日に公開した記事の再掲です。
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- 真空中の光の速度は、秒速約29万9792キロメートル。
- NASAの科学者は、光が地球を周る様子を表したアニメーションを作成した。同様に光が地球から月、地球から火星まで行く時間を表したアニメーションを作成した。
- アニメーションは、光のスピードがどれほど速いか(そして、どれほど遅いか)を示している。
NASAの科学者による一連のアニメーションは、光の速度がどれほど速く、そしてまた恐ろしいほど遅いかを示している。
光の速度は、宇宙を移動する物質の中で最も速い。これはもちろん「ワームホール」と呼ばれる、宇宙における理論的な近道の存在(そして、その中を破壊されることなく通過する能力)を否定している。
完全な真空中では、光の粒子「光子」は、秒速29万9792km、つまり時速10億7900万kmで進む。
これは信じられないほど速い。だが、他の惑星、特に我々の太陽系を超えた世界と通信したり、そこを目指そうとした場合、光の速度はイライラするほど遅い。
宇宙でのスピードの限界を誰もが理解できるよう、NASAゴダード宇宙飛行センター(Goddard Space Flight Center)の惑星科学者ジェームズ・オドノグエ(James O'Donoghue)は自らアニメーションを作成した。
「私のアニメーションは、私が伝えようとしていることの全体の文脈を可能な限り早く表すように作られている」と同氏はTwitterを通じてBusiness Insiderに語った。
「昔、テスト勉強をしていた時、複雑な概念を理解するために手でイラストを描いた。今、私が行っていることはまさにそれと同じ」
オドノグエがアニメーションの作り方を学んだのは最近のこと ── 最初のアニメーションは、失われつつある土星の輪に関するNASAのニュースリリースのためのものだった。
その後、惑星の回転速度と大きさを説明する動画など、理解が難しい宇宙の概念をアニメーション化した。動画をツイッターに投稿し、「数百万のビューを獲得した」と同氏は語った。
オドノグエの最新のアニメーションは、光の速さを3つの異なる状況で表し、光がどれほど速く(そして、どれほど遅く)進むかを伝えている。
地球上での光の速さ
オドノグエの最初のアニメーションは、光が地球上でどれほど速く進むかを表している。
地球の赤道の長さは2万4901マイル(約4万km)。大気がなければ(空気は光を屈折させ、光のスピードを少し遅らせる)、光は1秒で地球を約7.5周する。
このアニメーションでは、光の速度はとても速く見える ── だが、同時に光の速さに限界があることも示している。
地球と月の間での光の速さ
オドノグエの2つめのアニメーションは、地球と月の間を進む光を表現した。
地球と月の間の距離は平均で約23万8855マイル(38万4400km)。
つまり、我々が見ている月の光は1.255秒前のもので、地球と月の間を光の速さで往復すると約2.51秒かかる。
しかも、月は1年に約1.5インチ(3.8cm)のペースで地球から遠ざかっているため、この時間は毎日大きくなっている(月は絶えず、潮の満ち引きを通して地球の自転エネルギーを奪っており、軌道はますます地球から遠ざかっている)。
地球と火星の間での光の速さ
オドノグエの光の速さについての3つめのアニメーションは、多くの惑星科学者が日々取り組んでいる課題を表している。
NASAが火星探査機「インサイト」のような宇宙船と通信したり、データをダウンロードする時、それは光の速度でしか行うことはできない。リモコンの車のように、宇宙船を「ライブモード」で操作するには光は遅すぎる。
そのため、コマンドは慎重に検討され、あらかじめパッケージ化され、正確な時間に、宇宙空間の正確な場所で実行される。こうして宇宙船は目標地点に到達する。
地球と火星の間で最も速く通信できるのは、地球と火星が最も近い位置にある「最接近」と呼ばれる時、約2年に1回起きる。平均すると、その最接近の時の距離は約3390万マイル(5460万km)。
オドノグエの6分におよぶYouTubeの動画が示すように、最接近の時でも光が地球と火星の間を移動するには3分2秒、往復には6分4秒かかる。
だが平均すると、火星は地球から約1億5800万マイル離れている。そのため、往復の通信には平均で約28分12秒かかることになる。
光は、あまりに遅い
強力なレーザービームによってアルファケンタウリ星系に向けて発射される画期的なスターショット「ナノクラフト」のイラスト。
Breakthrough Foundation
光の速度の限界は今、地球から40億マイル以上離れたところを飛んでいる「ニューホライズン」や、恒星間宇宙に到達したボイジャー1号、2号のような探査機にとってはなおさら問題。太陽系の外の宇宙を考えると、状況はなおさら暗い。
太陽系から最も近い太陽系外惑星「プロキシマ・ケンタウリb」は、地球から約4.2光年離れている(距離にすると約39.7兆km)。しかし、人類史上、最速の宇宙船は、NASAの太陽探査機「パーカー・ソーラー・プローブ」で時速約21万3200マイル。プロキシマ・ケンタウリbまで、1万3211年かかる。
ロシア系アメリカ人ビリオネアによる「ブレークスルー・スターショット」プロジェクトは、このスピードの問題に挑戦しようとしている。このプロジェクトでは、切手サイズほどの小さな宇宙船に帆を付け、地球から強力なレーザーを照射することで、太陽系外惑星を目指す。理論的には光速の20%の速度を出すことができる。
しかし、コンセプトはまだ理論的なもので、最終的には機能せず、わずかな速度しか出ない可能性もある。
宇宙は信じられないほど広大。宇宙の年齢は約137億7000万年、我々が観測できる宇宙の果ては、半径が約453億4000万光年の球形をしており、膨張を続けているためその距離は増加し続けている。
これはシンプルなアニメーションで表すには、あまりにも大きすぎる。しかし、かなりうまく説明しているイラストがある。
ミュージシャンのPablo Carlos Budassiが作成した画像は、プリンストン大学の宇宙の対数地図と、NASAの画像を組み合わせたものだ。
(翻訳:一柳優心、編集:増田隆幸)
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