REUTERS/Jo Yong-Hak
- 2022年はドル高が進行し、それが弱体化する世界経済への圧力になっていると、国際通貨基金(IMF)が7月26日に発表した「世界経済見通し」で述べている。
- 貿易決済でドルが支配的な役割を果たしていることから、ドル高が世界貿易を減速させる可能性が高いとIMFは指摘した。
- また、ドル建ての債務を負っている国も、ドル高によって支払いが困難になり、危機に陥るリスクが高まっている。
国際通貨基金(IMF)は、ドル高の進行で世界貿易が減速し、債務を抱える発展途上国への圧力が高まっており、世界経済を苦しめるストレスに拍車がかかっていると述べている。
アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)が他の主要中央銀行よりも早く金利を引き上げたことから、投資家の資金がアメリカに引き戻されたため、2022年のドル指数(主要通貨に対する米ドルの強さ)は約16%上昇した。
世界経済への懸念も、ドル高を後押ししている。ドルは、ストレスの多い時期には資金の安全な避難場所と見なされるからだ。
アメリカの消費者にとっては、輸入品が安くなるのでよいニュースだろう。しかしIMFは2022年7月26日、ドル高が世界中で痛みを引き起こし始めていると警告した。
基本的な問題は、世界の金融・経済システムの中心がドルであることだ。世界中の政府や企業は、ドルを手に入れるために自国通貨をより多く支払わなければならなくなっており、それが成長を鈍化させるとともに、問題は深刻化している。
IMFは7月26日に発表した「世界経済見通し(World Economic Outlook update:WEO)」で、「貿易決済におけるドルの支配的な役割などが、世界貿易の伸びを鈍化させた可能性が高い」と述べている。
また、ドル建ての債務を負っている国にとっても問題であり、利子が高額になっているという。
「こうした課題は、多くの国で政府の財政状況が逼迫しており、財政政策支援の余地が少なくなっている時に浮上する」とWEOには記されている。
IMFによると、政府債務の返済に支障をきたしているか、そのリスクが高くなっている国は低所得国では60%に上り、10年前の約20%から大幅に増加している。
スリランカは経済危機に見舞われ、2022年5月に対外債務デフォルト(債務不履行)に陥った。通貨が急落し、政府の抱える問題も山積している。パキスタンの通貨もドルに対して急落していることから、投資家は同国も困難に陥るのではないかと懸念している。
IMFは世界経済の成長予測について、2022年は3.2%、2023年は2.9%になると下方修正した。
ウクライナ戦争に伴うエネルギー価格の高騰による高インフレと金利上昇が、成長に大きな打撃を与えるだろうとIMFは述べている。
(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)