ホオジロザメの死骸を検査する様子。
Cari Roets/Marine Dynamics, Dyer Island Conservation Trust
- シャチが口にくわえて海面に運んできたホホジロザメから血が広がっていくという驚くべきドローン映像が撮影された。
- 6月に発表された研究論文によると、シャチがホホジロザメを南アフリカの生息域から追い出したとしている。
- この映像はこの説を裏付けるもので、海洋生態系に大きな影響を与える可能性がある。
2022年初頭、南アフリカ沖でドローンによって撮影された映像にはホオジロザメを襲う3頭のシャチが捉えられていた。この映像はサメがこれまでの生息地から追い出されたという説を裏付けている。
この映像はディスカバリーチャンネルで7月28日に放送された「Shark Week」という番組のために撮影されたもので、29日にはThe Daily Beastでも公開された。
映像はホホジロザメの生息地として知られる南アフリカ、モッセルベイの明るい青緑色の海で、2頭のシャチが海面近くを泳いでいるところから始まる。突然、3頭目のシャチが体長3m近くのホホジロザメをくわえて海の深いところから上がってきた。そのシャチが海面に到達すると、死んだサメの周りに血が広がっていく。サメを運んできたシャチは再び海面下へと潜っていった。
南アフリカでホホジロザメを研究している科学者のアリソン・タウナー(Alison Towner)は「ホホジロザメを捕食するシャチを捉えた世界初のドローン映像」だとThe Daily Beastに語っている。さらに、南アフリカで記録された初めての「直接的な証拠」だと彼女は付け加えた。
「おそらく、これまでに撮影された自然史の中で最も美しい映像のひとつだろう」
ホオジロザメは頂点捕食者、つまり他に捕食者がいないと考えられているが、研究者はホオジロザメがシャチに捕食されることが稀にあることを確認している。
2022年6月29日付で「African Journal of Marine Science」に掲載された、タウナーを筆頭著者とする研究論文によると、ホホジロザメは狂暴なシャチから逃れるために、南アフリカの生息地を離れているという。
研究者たちは、体が裂かれ、肝臓や心臓がない状態のホホジロザメの死骸が岸に打ち上げられたことを指摘している。サメの傷は同じシャチのグループによるものだろうと論文に記されている。
今回公開されたドローン映像では、シャチはサメの肝臓のある場所を咥えているように見える。
シャチの攻撃から逃れるために、ホホジロザメはこの生息地から去っていったと研究者は考えている。
「我々が目撃しているのは大規模な回避戦略で、タンザニアのセレンゲティで野犬がライオンの増加に応じて行っているのと同じことだ」と論文発表時にタウナーは語っていた。
この生息域でホホジロザメが減少したのは、別の捕食者であるクロヘリメジロザメの増加が原因かもしれないが、この種もシャチに狩られていると研究者らは指摘している。
「南アフリカでは、ホホジロザメや沿岸に生息する他のサメとシャチとの間の捕食-被食関係が増加しており、生態系に顕著な影響を及ぼすことが予想される」と論文に記されている。
(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)