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TikTokは新しい音楽を発見するには定番のプラットフォームであり、定期的に曲をメインストリームに押し上げ、ビルボードホット100(Billboard Hot 100)やSpotifyのバイラル50などのチャート上位によくランクインさせている。
そのTikTokが現在、独自の独立した音楽ストリーミング・サービスの立ち上げを密かに進めているようだ。
TikTokを運営するバイトダンス(ByteDance)は、2021年11月にオーストラリアで「TikTok Music」の商標を初めて申請。次いで2022年5月9日にはアメリカの特許商標庁に「TikTok Music」の商標を申請した。申請時の文書によれば、同社はユーザーが「音楽、楽曲、アルバム、歌詞を購入、再生、共有、ダウンロード」できるモバイルアプリを含む、さまざまな商品やサービスにこの語を適用した。
バイトダンスが申請した「TikTok Music」を使用できるその他の可能性として、ユーザーが「オーディオとビデオのライブストリーミング」を行えるアプリや、「プレイリストのカバーとして写真を編集してアップロード」したり、「音楽、楽曲、アルバムにコメントする」したりする機能がある。
バイトダンスがアメリカで独立したストリーミング・サービス「TikTok Music」を立ち上げ、SpotifyやApple Musicといったプレイヤーに対抗するという見方は、根も葉もない噂というわけではない。同社は既にインド、ブラジル、インドネシアの3市場でResso(レッソ)というストリーミングアプリを運営しており、この1年で他のストリーミング企業からシェアを奪っている。
TikTokはすでに布石を打っていた
TikTokが、同社の既存のユーザー基盤をTikTok Musicの有料会員へ転換させるというシナリオを描いていること容易に想像できる。
「ジ・インフォメーション(The Information)」が報じるところでは、バイトダンスはブラジルでRessoを成長軌道に乗せるのにまさにその戦略を採用しており、TikTokユーザーがフルで聴きたい曲を偶然見つけた時に、クリックしてRessoのアプリを開くことができるボタンを追加したという。
また、Insiderの取材に応じたRessoの元社員2人の話では、バイトダンスは2020年6月にインドと中国の地政学的紛争に巻き込まれてアプリが禁止される以前、インドでTikTokをRessoのマーケティングツールとして利用する計画だったという。
TikTokが「TikTok Music」の商標に関してどのような計画を立てているのか、同社にコメントを求めたものの回答は得られなかった。
しかし、商標法の専門家3人によると、アメリカで商標を申請することで、最終的にはその商標を指定されたサービスに実際に使用しているか、また商品の販売に関連して使用する真正(bona fide)な意図を有しているかどうかを示す必要が出てくるという。
ガーベン法律事務所(Gerben Law Firm)の商標弁理士ジョシュ・ガーベン(Josh Gerben)は次のように話す。
「一般的にバイトダンスほどの規模の会社は、真剣に検討している項目についてのみ商標出願を行うものです。大手企業の商標出願の過去の事例の中には、出願はしたものの実現しなかったものもありますが、多くの場合は実現します。どれも彼らが真剣に取り組んでいるものばかりです」
バイトダンスは、「TikTok Music」の商標が使われる可能性のある例を多数挙げており、その商品・サービス案の中には、ユーザーが「娯楽、ファッション、スポーツ、時事問題の分野におけるオーディオおよびビデオの双方向型メディア番組のライブストリーミング」を行えるアプリも含まれている。
このような動きはテック企業にはよくあることだと言うのは、法律事務所アレント・フォックス・シフ(Arent Fox Schiff)のパートナーであり、メディア・エンターテインメント産業部門の共同代表であるミシェル・クック(Michelle Cooke)だ。クックはこう続ける。
「テック企業であれば、選択肢はかなり広いです。デジタル資産を幅広い商品・サービスへと派生させてきた業界大手の例を見れば、テック企業としては『我々には拡大させる誠実な意思がある』と言えるでしょう。青写真はそこにあります」
(編集・常盤亜由子)