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《全記録》2020年12月、エアビーがパンデミックの最中「1000億ドル超」巨額上場を果たしたその舞台裏

Airbnb

手元資金が豊富だったエアビーアンドビー(Airbnb)の経営陣は当初、新株発行による資金調達を伴わない「直接上場」を目指していたが、パンデミックによる経営危機がその計画を狂わせた。

Stefanie Keenan,Tolga TEZCAN、picture alliance, fotograzia/Getty;Airbnb; Anna Kim/Insider

2019年6月のある日、米エアビーアンドビー(Airbnb、以下エアビー)の経営陣は、高級ブティックやレストランなどが集まるサンフランシスコのヘイズ・バレー(Hayes Valley)地区にあるフレンチレストランに向かっていた。

一行は、最高経営責任者(CEO)のブライアン・チェスキー、最高財務責任者(CFO)のデイヴィッド・スティーブンソン、バイスプレジデント(財務担当)のエリー・マーツ、最高執行責任者(COO)のベリンダ・ジョンソンという面々だった。

彼らはレストランで投資銀行のバンカーたちと会う予定だったが、人目につくのを避けていた。エアビーの新規株式公開(IPO)計画が外部に漏れることを心配していたからだ。

会合の相手であるゴールドマン・サックス(Goldman Sachs)は、1900年代初頭のパリを思わせるヘイズ・バレーの一角にあるレストラン、アブサン・ブラッスリー&バーのプライベートダイニングを予約していた。

レストランの正面入り口には、緑のネオンサインで店名が大きく掲げられている。だが、通りに面した正面入り口とは別の目立たない場所に、プライベートダイニングの専用入り口があり、店内でも人目につく心配はない。

ゴールドマン・サックス側の顔ぶれは、共同最高情報責任者(Co-CIO)のジョージ・リー、エアビー担当の責任者であるニック・ジョバンニ、インターネット業界担当のジェーン・ダンルヴィ、株式資本市場の共同責任者デビッド・ラドウィグ。

エアビー側に渡す資料を持参し、IPOに向けたさまざまな選択肢について議論した上で、この上場をいかに特別なものにするか、自分たちのアイデアを提案した。

ゴールドマン・サックスのバンカーたちは、硬派だが顧客と緊密な関係を築くのが得意なジョバンニを中心に、エアビー経営陣の上場の動機を粘り強く探った。

同時に、従業員への株式売却機会の提供、高いバリュエーション(評価額)の設定など、IPOにあたっての優先事項を検討するよう促した。

当時のエアビー社内のコンセンサス(一致した意見)は、新株を発行せず既存の株式だけを上場する「直接上場」(ダイレクトリスティング)を目指すというものだった。

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