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- もしあなたが仕事に行き詰まりを感じているなら、ジョブ・クラフティングが有効かもしれない。
- ジョブ・クラフティングには、自分のタスク、職場の人々との交流、ものの見方などを変えていくことが含まれている。
- 3人の専門家がジョブ・クラフティングとは何か、そして仕事のマンネリを解消するためにはそれをどのようにを活用すればよいかを解説してくれた。
今度、仕事でスランプに陥った時には、その状態から抜け出すために、「ジョブ・クラフティング」を考えてみてはどうだろうか。
「ジョブ・クラフティングとは、自分の価値観、強み、情熱に合うように積極的に自分の仕事を変えることだ」と、スタンフォード大学経営大学院(Stanford Graduate School of Business)の組織行動学助教授であるジャスティン・バーグ(Justin Berg)は言う。彼は、ジョブ・クラフティングに関する論文の共著者でもある。
従来は、雇用主やコンサルタントも参加して仕事を再設計するのが一般的だったが、ジョブ・クラフティングでは、労働者が主導権を握る方法だ。
ジョブ・クラフティングには、作業、人間関係、認知の3種類がある。
作業クラフティングとは、仕事のやり方に対する工夫のことだ。1日のうちの何パーセントを各タスクに費やすのか、またはその優先順位を考えてみよう。
「それは今、自分がどのように仕事をしているのかを写真に撮るようなものだ」と、ジェーン・ダットン(Jane Dutton)は言う。ジョブ・クラフティングについていくつかの論文の共著者であるダットンは、ミシガン大学ロススクールオブビジネス、ロバート・L・カーン(Robert L. Kahn)名誉大学の教授でもある。
新しい興味や新たなスキルを身につけるためにもっとやりたいことがないか、自分に問いかけてみよう。逆に減らしたい仕事はないかも考えてみてみよう。
ダットンは自分のコアバリューと強みについて考えることを勧めている。
「今の仕事では、強みや価値観はどのように表現されているだろうか。もしズレがあれば、それをどう変えていけるのかを考えてみてほしい。そうすれば、方向性が見えてくるはずだ」
次に、人間関係クラフティングは職場で接する人たちのつながりを工夫することだ。職場で関わる人たちのことをよく考えてみよう。あなたが活力を得られるような交流、逆も疲れを感じるような交流について、それを増やしたり、減らしたりすることはできないだろうか。
最後に、認知クラフティングでは、あなたの考え方を変えることが必要だ。自分の仕事について他人にどのように話しているのかを意識してみよう。また、自分の仕事についてもっといい捉え方はないかを考えてみよう。
イギリスに拠点を置く人事コンサルティング会社、テイラード・シンキング(Tailored Thinking)の創業者で、ジョブ・クラフティングに関する書籍『Personalization at Work(仕事におけるパーソナリゼーション』の著者、ロブ・ベイカー(Rob Baker)は、1日10分から15分、小さなことから始めることを勧めている。彼は自分のクライアントには「どうしたら仕事を1%だけでも良くするできるだろうか」と問いかけているという。
彼はさらに、「増やしたいこと」「減らしたいこと」「変えたいこと、または改善したいこと」の3つのカテゴリーでリストを作することもアドバイスしている。
ただし、ジョブ・クラフティングには限界があることを心に留めておくことも重要だ。
ホワイトカラーの労働者は仕事の自由度が高いので、ブルーカラーの労働者よりも、ジョブ・クラフティングを活用しやすいだろう。また、女性や有色人種の労働者は、仕事に手を加える余裕があまりないことが多い。
また、ジョブ・クラフティングは従業員が自身で仕事を再構築するので、仕事を持続可能なものにするために雇用主の役割の一部を奪うことになる。
もう一つの潜在的な問題は、ジョブ・クラフティングをすることで、同じ給料でより多くの仕事をすることになる可能性があることだ。働き過ぎにならないようバランスを取る努力をしなければいけない。同様に、あなたが変わったとしても、仕事の当初の役割を果たさなければいけないことに変わりはないことも覚えておいてほしい。
おそらく、最も重要なことは、最初からあなたに合わなかったり、明らかに悪かったりする労働環境から抜け出すためにジョブ・クラフティングは有効でないということだ。
「ジョブ・クラフティングは、自分に向いていない仕事や、あるいはもっと重要なことだが賃金が低い仕事、過小評価されている仕事に対して、働く人を満足させるようなツールであってはならない」とバーグは話している。
「ジョブ・クラフティングは特効薬ではない」
「正しい結果を得るためには、ジョブ・クラフティングに何度もトライする必要があるかもしれない。どのような調整が効果的で、どのような調整が効果的でないのかを時間をかけて観察し、必要に応じて再調整してほしい」とベイカーは話している。
「たいていの場合、多くの組織は決まったやり方で仕事をするだけだと考えているが、それは皆が望んでいることではないし、最高のパフォーマンスを発揮する方法でもない。我々の仕事は、絶えず変化し、進化し続けるものだと考えるべきだ」
(翻訳:大場真由子、編集:Toshihiko Inoue)