「イブ」はロンドンなどの都市部での運用を想定している。
Eve Air Mobility
- 「空飛ぶタクシー」とも呼ばれるeVTOLは、未来の短距離移動手段として期待されている。
- エンブラエルの「イブ」はリパブリックやスカイウェストといったアメリカの航空会社から1900機の注文を受けた。
- 2026年までに運行を開始する可能性があるこの4人乗りのeVTOLを見てみよう。
2022年のファーンボロー国際航空ショーで話題をさらったのは間違いなく空飛ぶタクシーだ。複数の企業が、都市部での空の移動の次のステージとして注目されているeVTOL(電動垂直離着陸機)の計画を発表したのだ
バーティカル・エアロスペース(写真)、ボーイングが出資するウィスク、スーパーナル、ジョビー・アビエーションなどの企業が、ファーンボロー国際航空ショーでeVTOLのコンセプトを発表した。
Vertical Aerospace
eVTOLは「次世代空モビリティ(AAM)」の中で重要な位置を占める。AAMとは、新しいタイプの航空機やドローンを使って都市内や都市間で人や物を運ぶ輸送システムのことだ。
アメリカン航空やジェットブルーなどの航空会社は、eVTOLを使用して都心と交通の要衝の間でリッチな旅客を運ぶことを計画している。大手航空機メーカーのエアバスとボーイングを含む多数の企業が独自のeVTOLを開発中だ
大手航空機メーカーのエアバスとボーイングも独自の空飛ぶタクシーを開発中だ。
NYC Russ/Shutterstock
しかし、少なくとも受注の面で最も可能性があるeVTOLは、ブラジルの航空機メーカーであるエンブラエル(Embraer)の「イブ(Eve)」だ。同社は、ニューヨーク証券取引所に上場している子会社のイブ・エア・モビリティ(Eve Air Mobility:EAM)を通してイブを発売した
ファーンボロー国際航空ショーでのエンブラエル「E195-E2」。
Taylor Rains/Insider
イブは、リパブリック(Republic)やスカイウェスト(Skywest)などの地域航空会社や、ヘリコプター会社、欧州最大の防衛企業BAEシステムズなどから1900機を受注している
「イブ」はロンドンなどの都市部での運用を想定している。
Eve Air Mobility
EAMは航空ショーでコックピットのモックアップを公開した。同社は2026年から都市でイブの運行が開始されることを期待している
コックピットだけのモックアップが展示されていた。
Eve Air Mobility
「弊社が目標とする航続距離は都市内移動の99%をカバーできるだろう」と、EAMのデービッド・ロットブラットは2月にeVTOLを発表した時に語っていた
この小さな電動飛行タクシーは都心部の移動に使用される。
Stephen Jones / Insider
Source: eVTOL Insider
客室には向かい合わせに4つの席がある。パイロットはコックピットで操縦する
エンブラエルが出資するeVTOL「イブ」の客室。
Eve Air Mobility
コックピットには限られた操縦装置だけが見られたが、飛行試験後に最終デザインが変更される可能性が高い
最終デザインは変更される可能性が高い。
Stephen Jones / Insider
コックピットには小さなギアスティックがあった
従来のヘリコプターに見られる操縦桿に似ている。
Stephen Jones / Insider
そして、イブの飛行システムを表示するディスプレーがある
eVTOL「イブ」のコックピット内のディスプレー。
Stephen Jones / Insider
ただし、最終デザインは変更される可能性が高い
今回展示されたモックアップでは限られた制御装置だけが見られた。
Stephen Jones / Insider
他の多くのeVTOLメーカーと同様に、EAMも規制当局の承認を受けようとしている。その実現可能性はどのくらいなのだろうか
イブは8つのローターを備え、垂直離着陸が可能だ。
Eve Air Mobility
Source: SimpleFlying
「次世代空モビリティ」が投資家の期待するレベルに到達するためには、インフラだけでなく、地域の航空交通管理も抜本的に見直す必要がある
eVTOLは、都心に設置された「バーティポート」と既存の交通ハブの間を移動することになると考えられている。
Skyports
すでに複雑になっている空域に新たな乗り物を組み込むことは、事業者が直面する最大の障壁の1つだとバーティポートのネットワーク開発に取り組むイギリスの新興企業、Skyportsのサイモン・ウォーリーは言う。航空機が人口密度の高い都市中心部で運行する場合、それはさらに大きな課題となる可能性がある
スカイポーツは、パリ郊外のセルジー・ポントワーズに計画されているハブを含む、バーティポートのネットワークを開発している。
Skyports
「低い高度で運行すると、人も近いし建物も近い。だから例えば視覚的、聴覚的な公害のようなものに対処することになる」とウォーリーは言う。「そういったことをすべてを業界が検討しなくてはならない」
City Climbから見下ろしたニューヨークの街並み。
Courtesy company
規制当局はおおむね協力的だ。EAMは、ロンドンでの運行スキームを開発するために、航空当局と協力して、AAM企業、ヘリコプター運行会社、空港などが参加するコンソーシアムを主導した
ロンドン・ヒースロー空港。
EQRoy/Shutterstock
Source: EAM
欧州連合の航空規制当局である欧州航空安全機関(EASA)は6月、eVTOLを含む空飛ぶタクシーおよび無人航空機の運行規則の最初の草案を公表した。9月まで提案を受け付けている
EASAの草案は、乗務員の免許、飛行規則、耐空性、運行に重点を置いている。
SOPA Images / Contributor
Source: EASA
アメリカでは最近、連邦航空局(FAA)が航空機の認定規則を変更し、eVTOL企業を不安にさせた。eVTOLはヘリコプターと同様に垂直に離着陸するため、小型航空機ではなく、今後は「パワード・リフト機」という分類になる
eVTOLはヘリコプターと同様に垂直に離着陸するため、今後は「パワード・リフト機」という分類になる。
Royal Navy
Source: The Air Current, Reuters
FAAは、この変更によって航空機の認定プロセスが遅くなることはないとしている。ジェットブルーが出資するeVTOL企業、ジョビー・アビエーション(Joby Aviation)は、2024年までにFAA認定を取得することを目指している
ジョビー・アビエーションのeVTOL。
Joby Aviation
Source: Joby Aviation
(翻訳・編集:Toshihiko Inoue)