Insiderの記者、キャスリーン・エルキンスは「スーパーセーバー(超貯蓄家)」たちへの取材をもとに、推奨の貯蓄法を実際にやってみた。
Courtesy of Kathleen Elkins
私はこの7年間、数十人の「スーパーセーバー(超貯蓄家)」にインタビューし、どうしたら収入の大半を貯蓄できるのかを尋ねてきた。
あるグーグル社員は社用駐車場に自分のトラックを停めて生活し、収入の9割を貯蓄している、と語った。ニューヨーク州のアップステートに住むあるカップルは副業の収入だけで生活し、本業の収入を全て貯蓄して投資に回す方法を説明した。某ユーチューバーは、シンプルでミニマリストなライフスタイルゆえに収入の大部分を蓄えることはそれほど難しくない、と語った。
私は決して「スーパーセーバー」ではない。本業の給料の20%ほどを将来の備えのための口座(引退後専用口座と課税対象の証券口座)に入れ、月末の時点で未使用のお金を全て高利率の貯蓄預金口座に入金している。
一方でこれまで多くの貯蓄のスペシャリストの話を聞いてその方法を取り入れてきたおかげで、使える現金と毎月の「未使用のお金」を増やすことに成功してきた。
以下では、毎月の貯蓄を1000ドル(約13万1000円。1ドル=131円換算)増やす「ベテラン推奨」の3つの方法を紹介する。なお、私自身はこの方法で直近数カ月の間、毎月1800ドル(約23万5000円)を貯蓄に回すことができるようになった。
ルームメイトと住んで家賃を浮かす
貯蓄のベテランの多くは、貯蓄率を大きく改善したければ、毎日のカフェラテ代を節約するといった細かい支出にはこだわらないほうがいい、という意見だ。それよりも住居費や交通費、食費といった主な支出を下げる方法を見つけるべきだという。
アメリカ労働統計局が発表した2020年の消費者支出調査によると、アメリカ人の支出が大きいカテゴリーは次の3つだ。最大は住居費で平均予算の34.9%が充てられ、交通費16%と、食費11.9%が続く。
交通費と食費については、私もこれまでにうまく抑えてこられた。現金で購入した2007年製の中古のトヨタ車に乗り、食事のほとんどは自炊だ。だがいつも給与をたっぷりとられるのが住居費である。
私はロサンゼルスに住んでおり、家賃は決して安くない。この街に引っ越してきて3年になるが、そのほとんどを一人で暮らし、ワンルームのアパートに毎月2000ドル(約26万2000円)を支払ってきた。
筆者の暮らすロサンゼルスは美しい街だが、物価は高い。
Courtesy of Kathleen Elkins
だが2022年の4月に家具をほとんど売り払ってルームメイトと暮らし始めた。現在私は家賃として1325ドル(約17万3000円)を支払っているが、これで毎月675ドル(約8万8000円)を取り戻していることになる。年間では8100ドル(約106万円)もの節約だ。
支出を減らす方法としてはこれが一番簡単で、犠牲も少ない。空間とプライバシーをほんの少し失っただけである。
入ってくるお金と出ていくお金を正確に把握する
ニューヨークで時給12ドルの編集インターンとして働き始めた2015年から、私は家計簿をつけてきた。少ない収入で物価の高い都市に暮らしていくためには、稼ぐ額よりも使う額が多くならないよう、お金の流れを全て把握することが欠かせないからだ。
給与や諸手当をもらえるようになってからも、私は記録を続けた。そして今でも7年前に作成したGoogleスプレッドシートに、1日の終わりに何にいくら使ったかを入力している。
そこには毎月の固定費(家賃、保険料金、通信費等)と収入が記されており、いくら使い、いくら稼いでいるのかが正確に把握できるようになっている。
支出の記録を習慣にすると、責任感が生まれ、お金の行き先もはっきりと分かるようになる。月の貯蓄目標を設ければ、節約額を増やそうと意識的に努力するし、翌月の始めには前月の支出を振り返り、削減の余地がある項目は何かと探すようになる。
家計簿の効果についてはぜひ他の人のコメントも聞いてほしい。このまま行けば30代のうちに引退できるというアリー・ルポ(Ali Lupo)とジョシュ(Josh)夫妻は、自分たちのお金の使い方のクセと真剣に向き合うまで、節約は得意ではなかったと語る。
「数年前までは、自分たちがどれくらい稼いでどれくらい使っているのか、大体分かっているつもりでした。でも実際に記録し始めてみると、思っていたのと全然違うことが分かったんです」と夫婦は述べた。
お金の行き先を理解したら、大幅な節約ができるライフスタイルを取り入れられるようになった。
「毎月いくら稼ぎ、いくら使っているのか、借金はいくらあるか、所有する資産は何か、などをしっかりと把握することが大事です。お金の使い方を最適化するには、お金の行き先を理解することから始めるべきです」
副業を始め、その収入を全額貯蓄に回す
どんなに優れた倹約家でも、節約できるお金には限度があるはずだ。だが、収入を増やして支出を維持すれば、貯蓄を大幅に増やすことができる。
3年前にロサンゼルスに引っ越してきた時、私は副業でテニスを教え始めた。新しい街で知り合いを増やすきっかけにと始めたものだが、これがなかなかいいサイドビジネスになっている。
これまでは地域のテニスセンターに雇われる形だったが、2021年からは自営業者になった。テニスセンターでは時間制のコーチ料金の一部を手数料として徴収されていたが、それがなくなった。
代わりに、コートを確保する、テニスボールなどの備品を購入する、といった事務的な手間はかかるのだが、1時間あたりの稼ぎは大きく増やすことができた。また、自分でスケジュールを管理し、週末は長時間でも短時間でも好きなだけ働くことができるようになった。
この1年間、毎月平均1200ドル(約15万7000円)のテニス関連の収入があり、これは諸代金の支払いや日常の支出に必要なお金ではないので、貯蓄預金口座にそのまま入金することができている。
テニスを教えることは私にとって自然な(そして比較的簡単な)副業だった。これまでずっとプレーしてきたスポーツだし、高校時代からはコーチもやっていたからだ。何よりテニスをするのが大好きだ。
副業選びにおいては、『Financial Freedom』(邦訳:FIRE 最速で経済的自立を実現する方法)の著者であり、副業の権威であるグラント・サバティエ(Grant Sabatier)のアドバイスが参考になった。
グラント・サバティエは、月収の25%を貯蓄に回すことから始め、それから40%、そして月によっては80%ものお金を貯蓄し、その多くを株式市場に投入して増やしてきたという。
Grant Sabatier
サバティエは2つのリストを作ることを勧めている。1つは本当に好きなこと、もう1つは得意なことのリストだ。そしてその2つのリストが重なり合う部分を探し、自身の興味とスキルを収益化する方法を考えるのだ。
何年間も楽器を演奏してきた人は、レッスンの講師やライブの奏者を務めることができるかもしれない。旅行が大好きな人は、トラベルコンサルタントとして人の旅行計画を手伝えるかもしれない。
心から楽しめることを副業にすれば継続しやすい。仕事だという感覚も少ないはずだ。
※この記事は2022年8月5日初出です。