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1円単位の家計簿にうんざり。私が「バケツ方式」に切り替えた理由

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健全なお金の習慣を身に付けるのは大切だが、その方法が有用でなくなったことを見極めるのも同じように重要だ。

Wachiwit/Shutterstock

  • 予算の立て方を学び始めた頃は、几帳面にも日々の支出を1セント(約1円)単位でスプレッドシートに記録していた。
  • もうそんなことはしていない。徐々に自分なりの習慣が身に付いたし、細かい収支管理はストレスが溜まる時間の無駄に思えてきたからだ。
  • その後採用した「バケツ方式」は、細かい収支以外の別のことにフォーカスする有効な方法である。

貯蓄と投資を始めたときは、スーズ・オーマン(Suze Orman)、J・D・ロス(J.D. Roth)らパーソナルファイナンスの専門家のアドバイスを大いに参考にした。自由に使える限られた金融資産を守り、同時に将来の所得も増やしたいと思ったからだ。これらの専門家たちは、健全なお金の習慣を身に付けることが、この二つの目標を達成するために不可欠な最初のステップだと教えてくれた。

健全なお金の習慣とは何かについての見解が専門家によって異なることはあったものの、たびたび耳にしたのは、使った/稼いだお金は1セント(約1円)単位できっちり記録したほうがいいというアドバイスだ。その前提にあるのは、お金をどう使うべきかを決めるより先に、現在何に使われているかを明確にする必要があるという考えだった。

文字通り1セントの単位で記録した

まず、シンプルなエクセルのスプレッドシートを使って支出記録をつけた。お金の出入りがあるたびに、1セントの単位までコツコツ入力した。

収支には給料や請求書といった額の大きなものもあったが、パーキングメーターに払った25セントとか、道で拾った25セントといった細かいものまですべて入力していた。日付、場所、支払い方法、金額のほかに、それぞれの内容について短い説明を記載した。表を色分けし、カテゴリー別に後で評価しやすいようにもしていた。

そこまで詳細にお金の流れを記録するのはずいぶんと骨が折れた。しかし、毎月実際にいくら使ったかを把握するのは、最初のうちは予算の設定に非常に役に立った。

家賃や健康保険料などは計画が立てやすかったが、ほかにもデザートや映画のレンタル、ドッジボールリーグの入場料などの「必需品以外のもの」に使った正確な額も、スプレッドシートを見れば一目瞭然だった。こうした雑多な出費を記録することで、大半の人がすぐに思い付くものだけでなく、自分に必要な全ての生活費の予算作成が可能になった。

また、支出習慣を表にまとめて直視すると、自分がお金をどう使っているかがまる分かりだった。

スプレッドシートの数字は客観的だ。それを軽視することはできないし、自分を偽って、本当はもっと使った、いやそんなに使っていないなどと信じさせようとしても無理である。知識は力なりと言うが、自分の支出の実状——自分が思い描くお金の使い方ではなく——を知ることは、力になるのだ。

そして最後に、スプレッドシートによって何にお金を使いすぎたか、さらには予定より支出が少ない項目までもが明らかになった。例えば、ジムのお試し期間が終了したときは、会費を全額払うに見合うだけの価値が得られていないことに気が付いた。

一方で、被服費と車の修理費用は見込んだ額の3分の1も使っていなかった。こうしたバランスの悪さを突き止めたことが、自分が何に浪費する/財布の紐を締めるかを自覚し、予算配分を見直すのに功を奏した。

無益で、ひどく厄介な作業と化した

このようにして数年間支出を管理したが、自分の支出習慣が分かり、適切な予算を立てられるようになると、全てのお金の動きを記録し続けることにもはや意味がないように思われた。

食料品やガスなど生活に不可欠なものに通常いくら使っているかはすでに知っていたし、それ以外の雑多な支出も常に注意を払う必要がない程度まで把握できるようになっていた。

所得が上がったときも、増えた分の大半は貯蓄に回したため支出額にほぼ変動はなかった。スプレッドシートにデータポイントを増やしたところで新しい情報は得られず、多大な労力を払ってすでに持っている情報を焼き直しているにすぎなかった。

とはいえ、気を配っていれば、この先自分の消費になんらかの変化があったとき、それに気付きやすくなるのではないかとも思えた。スプレッドシートは以前の支出習慣に逆戻りするのを防ぎ、例えば自動車の故障の兆候である燃料費の増加など、お金以外の問題に対する早期警告システムの役割を果たす可能性もあるだろう。

しかし、それまで浪費で悩んだことがなかった私は、日々の支出管理に過剰に神経を尖らせずとも無駄遣いしない自信があった。

根気の要る作業をしないでいいように、やり方を微調整することも考えた。最低金額を決めてそれ以下の支出は記録しない、技術的なソリューションでプロセスを自動化するといった方法だ。

ともあれ、1セント単位の支出を記録するのをやめたいと思ったのには、別のもっと差し迫った理由があった。お金の使い方を過度に意識していたら、厳密には必要不可欠と言えない支出に対して、感じなくてもいい罪悪感を覚えるようになったのである。きちんと予算を確保していた支出であっても、だ。

このままでは、嬉しいはずの買い物で嫌な気分を味わうようになりかねない。というのも、細かいお金を気にするうちに、1セント単位のお金が私の経済的な幸福を左右すると考えるようになっていたからだ 。

今のやり方はもう自分に合っていない。そろそろほかの方法を探さなくては。それでもお金の流れにはある程度注意を払う必要はあったが、自分の財務状況を絶えずこと細かに調べることから、一定期間ごとに全体像だけを把握する方向にシフトチェンジしようと考えた。

「バケツ方式」ではるかに楽になった

私は解決策を見つけた。「バケツ方式」として知られる戦略を取り入れたのだ。これは、さまざまな目的別に資金をあらかじめ取り分けておく方法である。

私は約2カ月分の生活費をメインの当座預金口座に、貯蓄、ビジネス経費、税金、必需品以外のものに使う資金をそれぞれ別のサブ口座に入れた。それから、全ての使途に必要な額を確保するために、毎月各サブ口座にいくら入金するかを決めた。

この戦略は財務管理のタスクを大幅に簡素化した。最初に入れた金額に近い残高が維持されている限り、支出が過剰になっていないことが確認できた。

メインの当座預金の残高が見込みより著しく多い、または少ない場合は、請求書、小切手帳、クレジットカードの明細を見直せばその理由を突き止めることができる。絶対に失敗しない方法ではなかったが、私のニーズに合っていたのだ。

健全なお金の習慣を身に付けるのは大切だが、その方法が有用でなくなったことを見極めるのも同じように重要だ。私に1セント単位で支出を記録するきっかけとなったアドバイスには感謝しているが、もはや目的を果たしていない習慣をやめるのに、私の経験が役に立ってくれたら嬉しい。

[原文:Why I Started Tracking Every Penny, and Why I Eventually Stopped (businessinsider.com)

(翻訳・安藤貴子/LIBER、編集・長田真)

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