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- 投資会社のレイモンド・ジェームズ・ファイナンシャルは、全米経済研究所はアメリカ経済が景気後退に入ったと宣言することはないだろうと述べている。
- アメリカのGDP成長率は2022年に2四半期連続で低下しており、これはテクニカルな意味では景気後退の定義とされている。
- しかし、雇用市場が好調なことから、アメリカ経済が景気後退に陥っているかどうかの公式判断については、しばらく静観することになりそうだ。
投資家の間で、アメリカ経済が景気後退に入っているのかどうかという議論が巻き起こっている。投資会社のレイモンド・ジェームズ・ファイナンシャル(Raymond James Financial Inc)によると、その答えは「ノー」だ。
「テクニカル・リセッション」とは2四半期連続でGDP(国内総生産)がマイナス成長になることを指すが、全米経済研究所(NBER)が宣言するまで、アメリカ経済は正式には景気後退とは見なされない。NBERはその判定を下すためにアメリカ経済全体を総合的に判断する。判定は景気後退の開始または終了から数カ月後になることもある。
「テクニカル・リセッション」に入ったと考えられているのは、2022年の第1四半期と第2四半期のGDP成長率が、わずかな差ではあるものの重要な意味合いを伴って低下したからだ。GDP成長率は前期比で第1四半期が1.6%減、第2四半期が0.9%減となった。
それでも「景気は後退していない」とレイモンド・ジェームズのラリー・アダムス(Larry Adams)最高投資責任者は2022年7月29日に顧客に宛てた書簡で述べている。
「景気の状況を公式に認定するNBERが、景気後退という判定を下すかどうか、2つの理由から我々は疑わしいと考えている」
その2つの理由とは、以下に示したように堅調な雇用市場と企業の在庫が2022年のGDP成長率に与えた影響のことだ。
1. 「サバイバルに適した環境」
「(不況に)陥っていないと我々が考える根拠は、連邦準備制度理事会(FRB)の見解と一致している。労働市場を見よ!ということだ。雇用増加数の3カ月移動平均は37万5000人となっている。これまでの景気後退のスタート時点における雇用増加数が平均8万人だったことと比較すると約4.5倍だ。また、失業率は3.6%で、これまでの景気後退のスタート時点と比較すると1969年以来最も低く、第二次世界大戦後では3番目に低い」とアダムスは述べた。
一方で工業生産量は増加傾向にあり、耐久財の受注数は6月にかなりの増加が見られたと彼は付け加えた。
2. 「在庫がGDPに食い込んだ」
「第2四半期は、企業在庫の減少だけで成長率が2.0%引き下げられた。これはそんなに悪いことなのだろうか。在庫が通常のレベルまで減少することは、消費者がまだ購入していることの証しだ。政府支出はCOVID-19の流行時の記録的な水準から減少しているが、それは驚くことではなく、景気刺激策が過去のものになるにつれ、足かせではなくなるだろう」とアダムスは述べた。
アダムスは、最終的に第3四半期と第4四半期に経済がサブトレンドの成長モードに戻り、投資家の不況への懸念が和らぐと予想している。レイモンド・ジェームズの自信は、ガソリン価格の下落傾向がセンチメントの流れを変える可能性があること、収益が悪化していないこと、商品・サービス支出が堅調に推移していることといった見方に支えられている。
[原文:2 reasons why the NBER won't declare that the economy is officially in a recession]
(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)