フィンテック企業の多くが、厳しい市場環境を乗り切るために優秀な経営幹部を求めている。
Samantha Lee /Business Insider
フィンテック企業はいま、CEOやCOOなどCレベルの経営幹部を求めている。現在のような困難極まる市場環境は、ほとんどのフィンテック企業にとって初めての経験だ。この困難を切り抜けるために経験豊富な幹部人材を必要としているのだ。
ロビンフッド(Robinhood)やボルト(Bolt)といった有名なフィンテック企業では、金利上昇とバリュエーションの低迷を受け、2022年4月からレイオフが始まった。ニュージャージー州を拠点にするトゥルー(True)のフィンテック・金融サービス部門責任者ジョン・ポメランツ(Jon Pomeranz)は、多くのフィンテック企業が後退を始め、成長計画を進めるよりも業績評価管理に注意を向け始めていると語る。
ポメランツもCレベルの経営幹部の需要に変化が起きていると感じている。かつてはIPOの可能性を考え、アメリカ証券取引委員会(SEC)に提出する証券登録届出書「form S-1」の申請に長けたCFO(最高財務責任者)の需要が雇用市場では大きかったが、今は違う。現在は、COO(最高執行責任者)、社長、製品責任者、人事責任者、財務責任者などが求められているという。
「早い話が、創業者はたいてい市場のノイズに対処しなければいけないので、頼れる『優秀な指導者』を必要としているってことでしょうね」とポメランツは言い、現在の市場サイクルでは売上、収益性、チームのモラルがより重要視されていると指摘する。
また、フィンテック各社はコンプライアンス部門の強化にも乗り出している。
フィンテック人材紹介会社Storm2のヘッドハンターであるケイティ・ファーカーソン(Katie Farquharson)とジェイミー・クック(Jamie Cook)は、ゼネラルカウンセル(法務担当役員)を探している仮想通貨関連企業が増加していると明かす。投資スタートアップのタイタン(Titan)の共同CEO、ジョー・ペルココ(Joe Percoco)は、数カ月以内にコンプライアンス部門と法務部門を強化する予定だと語った。
ピッチブックのアナリスト、ロバート・リー(Robert Le)は次のように話す。
「多くのフィンテック企業は、ウーバー(Uber)やエアビーアンドビー(Airbnb)のようなやり方で業界を変革できると考えて市場に参入してきます。要するに、とにもかくにも事業を成り立たせるのが先決で、コンプライアンスはおいおい対処しよう、と。
でも民泊やライドシェアにおける地方や州の規制当局とは違って、フィンテックにおける金融規制当局は(規制に関して)決してブレませんから」
2C企業と2B企業で明暗
消費者向けのフィンテック企業では、おそらく経営陣が大きく変わることになる。一方、企業向けフィンテック企業、特に銀行向けに製品やサービスを販売している企業は、この市場サイクルの中で全体的なスケールアップを目指し、横断的に雇用を増やすだろうとリーは見ている。
「銀行は過去15年間でバランスシート上に潤沢なキャッシュを確保してきました。2008年と2009年の出来事(世界的な金融危機)を教訓にして念入りに備えてきたんです」(リー)
銀行は顧客獲得競争で競合他社との差別化を図るため、企業向けフィンテックと手を組もうと考えるはずだ。
「現在の市場環境は、銀行向けのビジネスをしているフィンテックにとっては追い風でしょうね」(リー)
(編集・大門小百合)