カリフォルニア州オークランドにあるレッドウッドの木。2022年撮影。
Gado/Getty Images
- 「ハイペリオン」とは、カリフォルニア州北部にある高さ116メートルのセコイアの木のことだ。
- この木は2006年に「発見」されて以来、ハイキング愛好家たちの目的地になっていた。
- 現在では、あまりにも多くの人が訪れ、危害を加えられる可能性があるため、立ち入り禁止になっている。
もうこの秘境には行くことができない。
2006年、カリフォルニア州北部のレッドウッド国立公園で、世界一高い木が「発見」された。ちょうどその頃、ソーシャルメディアによる観光ブームが巻き起こり、多くの冒険家たちがこの木に引き付けられ、どうしてもこの木の写真を撮影して投稿したいと考えるようになった。
問題は、「ハイペリオン」と名付けられたこの木には公園の公式なトレイルからアクセスできないことだった。つまり、インスタ映えする写真を求める人は、かつてアマゾンを発見した探検家が行ったような、深い森の中を切り開く「ブッシュワック」を強いられることになる。
言い換えれば、我々はそこにいるべきではないということだ。
そして今、これまであまりにも多くの人が訪れたことによる影響が積み重なり、周辺地域は大混乱に陥っている。ハイペリオン周辺の土壌が劣化し、踏みつけられたせいでシダが生えなくなったとSFGate.comが2022年7月30日に報じている。
さらに悪いことに「ゴミが散乱し、用を足すためにさらなる脇道が作られている。使用済みのトイレットペーパーや排泄物が放置されている状態だ」と公園の自然資源担当チーフのレオネル・アルゲーロ(Leonel Arguello)はSFGateに述べている。
「良いことではないし、見て気持ちのいい光景ではない」
公園当局は現在、ハイペリオン周辺を公式に立入禁止とすることで、この地域を保護する試みを強化している。この巨大なレッドウッドに近づいた者には、5000ドル(約67万円)までの罰金と6カ月の実刑判決が下される可能性がある。
自然や未開地におけるオーバーツーリズムは、世界的にますます問題になっている。その理由のひとつとして、新型コロナ感染防止に向けた長期にわたるロックダウンに耐えた後、他人との接触の少ないアウトドアが理想的なレジャーとみなされていることが挙げられる。
特に顕著な例としてAdventure Journalが報じたところによると、標高世界第2位の山であるK2に、2022年7月22日の1日だけで145人が登頂した。これまで、今年7月以前にこの山の登頂に成功したのは500人しかいなかった。
(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)