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頭の動きでハンドルを切り、息で加速するマクラーレン…四肢麻痺のレーサーがサーキットに帰ってきた

Driving the SAM Car was an unforgettable experience

SAMカーの運転は、忘れられない経験となった。

Arrow Electronics

  • SAMカーは、四肢麻痺のレーサー、サム・シュミットがサーキットに復帰できるように設計された。
  • この車は頭の動きで操縦し、呼吸チューブでスピードをコントロールする。
  • 筆者は実際にこのレーシングカーを運転してみて、テクノロジーは障がいのある人々を助ける素晴らしい手段であることを思い知らされた。

SAMカーは、普通のレーシングカーではない。

2000年の事故で首から下が麻痺する後遺症を負った元インディカー・レーサー、サム・シュミット(Sam Schmidt)のためにアロー・エレクトロニクス(Arrow Electronics)が設計したSAM(Semi-Autonomous Mobility:準自律走行車)は、頭の動きでハンドルを操作し、呼吸チューブでスピードをコントロールする。

この車のおかげでシュミットは、思いも寄らないセンセーショナルなサーキット復帰を果たすことができた。

「私の人生のすべてのことは、ほとんど他のだれかがやってくれている。しかし、SAMカーは自分で完全にコントロールしている」とシュミットはInsiderに語った。

「ケガをする前は、自分で車を運転することは世界で最も普通のことだった。15年間できなかったが、今またそれができて爽快な気分だ」

「本当に素晴らしいことだ」とシュミットは付け加えた。

イギリスの歴史のあるサーキットのひとつであるグッドウッド・モーターサーキット(Goodwood Motor Circuit)で筆者はSAMを運転するとともに、シュミットの運転する車に同乗する機会も得た。


最新のSAMカーは、マクラーレン 720S スパイダー(McLaren 720S Spider)を改造した車だ

The SAM Car is so impressive.?

SAM カーはとても印象的だ。

Arrow Electronics

SAMカーの最初のバージョンは、2014年式のコルベット・スティングレー(Corvette Stingray)を改造したものだったが、現在の車は3世代目だ。

この最新モデルは、これまでのどのモデルよりもはるかに速く、時速212マイル(約341km/h)という驚異的な速度を出すことができる。

また、車の方向や速度をコントロールする技術も、同じコンセプトでありながら、かなり進化している。


スピードのコントロールは、慣れるまで少し違和感があった

ワオ! 彼が運転している(積極的にブレーキもかけている)

車を加速させるのは簡単だ。チューブに息を吹き込むと、車は走り出す。

だがブレーキをかけるのはちょっと難しかった。普通に息を吸うのではなく、ストローを使うようにチューブを吸ってブレーキをかけるのだ。それにはかなりの繊細さが必要で、レースコースの最初の区間では、ブレーキが効きすぎることがあった。


ハンドルはかなり直感的に操作できる

ステアリングホイールのないクルマを操縦するのは、とても難しそうだが、不思議なことに、まったくそんなことはなかった。

人は車を運転するとき、道を目で追ってしまうことが多いという。「それを意識してやっていれば大丈夫だよ」とシュミットは私にアドバイスしてくれた。

シュミットのアドバイスは、高速走行でも完全に正しかった。


何周か練習走行した後、私はサーキットを周回し始めた

よくなった。


しかし、私の技術はシュミットには到底及ばないことが分かった

Driving alongside Schmidt was amazing.

シュミットと一緒に走るのは素晴らしい経験だった。

Arrow Electronics

シュミットは1997年から1999年の3年間、インディ・レーシング・リーグ(現インディカー・シリーズ)で活躍した実績のあるレーサーだ。

1999年、彼はラスベガスで初優勝を果たしたが、その数カ月後、フロリダでのテスト走行中に起きた事故でそのキャリアが断ち切られた。

シュミットとともにSAMカーに乗り込むと、彼が長年サーキットから遠ざかっていて、体力的にも十分ではないにも関わらず、まだプロのレーサーとしての実力があることが分かった。

シュミットはコーナーでは鋭くスピードを出し、直線では時速200マイル(約321km/h)近くまで加速し、あっという間にグッドウッドを1周してしまった。


この日、SAMカーを運転したのは私だけではない

他の数人の記者に加えて、イギリス出身の四肢麻痺のアーティスト、ヘンリー・フレイザー(Henry Fraser)もSAMカーを運転した。

フレイザーは、2009年の休暇中に海に飛び込んだ際、首を打ってしまい、首から下が麻痺した状態になっている。

彼は今、口で筆をくわえて絵を描いている。彼の作品は素晴らしく、しばしば数千ドル(数十万円)以上で売られることもある。


フレイザーはこの体験を「言葉では言い表せない」と述べた

腕や足、肩から下が動かない私が、まだ運転できるなんてだれが思っただろう?

これは言葉では言い表せない体験だった。この野獣を操っている私を見てほしい。

ありがとう、アロー・グローバル、アロー・エレクトロニクス。



私も同感だ

Schmidt gets into the SAM Car using a hoist.

シュミットはクレーンを使ってSAMカーに乗り込む。

Insider/Barnaby Lane

SAMカーを自分で運転できたのは、素晴らしい経験だった。この技術のおかげで不可能に見えることも簡単にできるようになったのだ。

しかし、それ以上に良かったことは、シュミットと一緒にこの車に乗れたことだ。

障がいに負けず、自分の好きなことをやり続ける人の傍らで、サーキットを走る姿を見る経験は本当に素晴らしいものだった。


重要なのは、このテクノロジーをどう前に進めるかだ

アロー・エレクトロニクスの技術は、シュミットのレース復帰の夢かなえる助けるだけでなく、サーキットから離れた日常生活でも彼を支援している。

彼は子どもたちを乗せてニューヨークやワシントンD.C.の道路を運転できるようになり、妻を乗せてサンフランシスコのゴールデンゲートブリッジを渡ったこともあるそうだ。

2021年には、アロー・エレクトロニクスが設計した歩行装置を身につけ、娘のサバンナ(Savannah)の結婚式で彼女と一緒に踊ることもできたという。

今、彼はこのテクノロジーを、路上でもそれ以外の場所でも、障がいを持つ人々が最高の人生を送るために役立てたいと考えている。

「今、我々が目にしているものは、人々が仕事に復帰できるようになるシンプルなアプリケーションだ」と彼は言う。

「私のような障がいを持つ人は多くの場合、仕事に復帰して家族のためにお金を稼ぎ、生産的な社会の一員になりたいと願っている」

「彼らはずっと言われてきた。『あなたの人生は、あなたも知っているようにほとんど終わっている』と。我々はそれを無くし、『あなたの人生の目標は何か』と彼らが言われるようにしたい。そして、彼らの目標を達成するためにフィジカルトレーニングやテクノロジーを活用することを試みてみたい」

[原文:I drove a McLaren 100 mph using my head to steer and my breath to accelerate, and it showed the amazing ways technology is helping people with disabilities

(翻訳:大場真由子、編集:Toshihiko Inoue)

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