高いインフレ率でパニックになるのはもうやめよう。
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- 家計の予算項目を年ごとに比較し、自分自身のインフレ率を計算しよう。
- 自分の1年ごとの変化に注目することで、国全体でインフレが進むなかでも冷静でいられる。
- ファイナンシャルプランナーのニコル・モロン氏は、日用品費とガソリン費の変化を比較することを勧める。
インフレの定義は、時間とともに財とサービスのコストが上昇していくことである。アメリカの年平均インフレ率は約2%だが、コロナ禍の供給不足を原因に、2021年5月から2022年5月のインフレ率は8.6%と、41年ぶりの高い数値となった(BIJ補足:2022年6月のインフレ率は9.1%)。
しかし、ピーターキン・ファイナンシャル(Peterkin Financial)のファイナンシャルプランナー、ニコル・モロン(Nicole Morong)氏が顧客に指導しているのは、物価の上昇に慌てるのではなく、自分自身の個人インフレ率、つまりインフレによって自分に実際どれほどのコストがかかるかを計算することだ。
国全体のインフレ率は、例えば2021年5月と2022年5月のように、財とサービスの平均価格を前年と比較することで算出される。これと同様に、日用品費、ガソリン費、家賃など、自分の予算の各項目を前年と比べて自分だけのインフレ率を計算することがモロン氏のアドバイスである。
社会全体のインフレを打ち消す
「顧客とはまず、住宅ローンやクレジットカード、ガソリン費、日用品費などについて、国の実際のインフレ率を話し合う。次に、顧客個人のインフレ率、つまり個人的に経験している価格の上昇について話す。本人が何を買い、どんな生活を送っているかに基づいた話だ」と、モロン氏は言う。
「どこへ行くにも地下鉄を使うなら、ガソリンが1ガロン7ドル(1リットル約255円)でもさほど問題はないだろう。しかし、普段からSUVに乗っているならガソリンにかかる費用が上がっているかもしれない。日用品が値上がりしても、あなた自身が無意識に生活習慣を変えれば、食料雑貨品に関しては個人的なインフレ率は横ばいということもあり得る」
自分の個人インフレ率が明らかになれば、自分自身の力で少しでも生活習慣を変えていくことで社会全体のインフレをどれほど打ち消せるか理解しやすくなるとモロン氏は言う。
個人インフレ率の計算法の例
まず、調べたい各予算カテゴリーにいくら使ったかを以下のように表にする。
例えば日用品の個人インフレ率は次の式で計算できる。
(2022年5月の日用品支出-2021年5月の日用品支出)÷(2021年5月の日用品支出) = 0.xxxxxx ×100 = 日用品支出における個人インフレ率
上記の表の例で計算すると以下のようになる。
($590-$450)÷ $450 = 0.31111 × 100 = 日用品支出における個人インフレ率は31%
上記の表の各予算カテゴリーにおける個人インフレ率および合計のインフレ率を以下に示す。
判断を後押しする2つの質問
自分のインフレ率を計算することで、予算の各カテゴリーの費用がなぜ上がったのかを検討できると、モロン氏は言う。
「今年は実家に戻ったから日用品が変わったのかもしれないし、あるいはあなたが親の側なら、子どもが戻ってきたから日用品にかけるお金が増えたのかもしれない。自分の周りの環境が変わったから支出が増えている可能性もあるのだ」
モロン氏は顧客の判断を後押しするために、次のような質問をするという。
- あるカテゴリーで支出が増えていた場合、それは意識的な決定なのか?
- 自分のインフレ率を考えたうえで、なお継続的に貯蓄や投資をしていく余裕はあるか?
「個人的なインフレ率を計算することで、本人の支出がどう変わったのか、調整が必要なのかを顧客と話し合いやすくなる。それによって、テレビで誰かがインフレについて言っていることに関係なく、顧客は自分の状況をコントロールする力を得たと強く感じられるのだ」
(翻訳・長尾莉紗/LIBER、編集・長田真)