「あなたの個性は?」なんてアメリカの面接じゃ訊かれない。20代で個性不明でも大丈夫と言える理由【入山章栄・音声付】

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今週も、早稲田大学ビジネススクールの入山章栄先生が経営理論を思考の軸にしてイシューを語ります。 参考にするのは先生の著書『世界標準の経営理論』。ただし、本連載はこの本がなくても平易に読み通せます。

ミレニアル世代は「個性的な存在になりたい」「人と同じでありたくない」という意識がとりわけ強いと言われます。ですが自分の個性が見つからず、就活で悩む人も若者も多いようです。そこで入山先生に聞きました。先生流の個性の見つけ方とは?

【音声版の試聴はこちら】(再生時間:14分13秒)※クリックすると音声が流れます

「個性を見つけなさい」という強要

こんにちは、入山章栄です。

今回はBusiness Insider Japan編集部の常盤亜由子さんからの、「どうすれば個性を見つけることができますか?」というお題について考えてみたいと思います。


BIJ編集部・常盤

BIJ編集部・常盤

林修先生の「日曜日の初耳学」というテレビ番組をご存じですか? 先日、「最強のマーケター」といわれる森岡毅さんが出演した回がSNSでバズっていました。


森岡さんといえば、USJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)をV字回復させたことで知られる方ですね。


BIJ編集部・常盤

BIJ編集部・常盤

そうです。この回は、キャリアで悩む若者に対して森岡さんがアドバイスをするという内容でした。
うちの編集部のミレニアル世代の同僚も「とても響いた」と言うので、どういうところが刺さったのか聞いてみたんです。すると、ミレニアル世代やそれより若い世代にとっては「自分の個性を見つける」ということが非常に大きなテーマになっていると言うんですね。私の同僚も、自分の個性が何だろうとよく考えているとのことでした。


ミレニアル世代の方が「個性」を見つけるために苦労しているのですね。ここで言う「個性」とは、そもそもどういうものなのでしょう?


BIJ編集部・常盤

BIJ編集部・常盤

森岡さんは「仕事でうまくいくには自分の特徴を知ることが大事」という話をされていたので、この場合の個性とは「強み」と言い換えることもできると思います。
例えば就職活動で履歴書を書きますよね。それを見た面接官に「きみはこういうところに強みがあるんだね」と分かってもらえるような、自分を特徴づける何かのことでしょうね。


うーん、だとしたら、就活生が個性を見つけるなんてことは、まず無理ですよ。


BIJ編集部・常盤

BIJ編集部・常盤

いきなりそれですか(笑)。
森岡さんは番組内で、「自分の特徴や個性を知るとキャリアが成功しやすい」「個性を知るには好きなことを『名詞』ではなく『動詞』で考えるといい」とおっしゃっていました。つまり「サッカーが好き」ではなく、「サッカーの作戦を考えるのが好き」というふうに動詞で考えることで、「自分は頭を使って考えることが得意だし好きなんだな」と分かる、と。
入山先生流の個性の見つけ方があったらお伺いしたいなと思ったんですが……。


なるほど、森岡さんの考えはまさにその通りだと思います。素晴らしいですね。ただ僕がそもそも言いたいのは、だいたい大人たちが無個性なのに、若者に個性を求めるべきじゃないということです。若者が自分に個性がないことで悩んでしまうような社会をつくるほうがおかしい。個性を見つけるというのは、そんなに簡単なことではありません。

個性を見つけるというのは、自分の中の感覚を概念化・言語化するということです。森岡さんの「名詞ではなく動詞で考える」というのも、言語化のためのアドバイスでしょう。

そもそも個性とはモヤモヤしていて得体が知れないものです。非常に感覚的なものです。どこまでが生まれ持った先天的なもので、どこからが後天的に得られたものかなんて、自分でも混沌としていてよく分からない。

それをぴったりの言葉で表現するには、まず語彙そのものが豊かである必要があるし、何よりもいろいろな経験を通じて自分の内面を豊かにする必要がある。それなのに10代、20代に「個性を見つけろ」というのは大人の横暴、無理難題以外の何物でもないですよ。

40代後半で初めて「個性はこれ」と分かった

僕自身だって、「自分はこういう個性を持った人間だな」と自覚して言語化できるようになったのはここ数年のことですからね。だって、「自分はこういう人間です」なんて言えますか?

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