電動ピックアップトラックのフォードF-150ライトニング(上)と、リビアンR1T(下)。
Ford; Rivian
- フォードF-150ライトニングとリビアンR1Tは、自動車市場で今最もエキサイティングなピックアップトラックだ。
- 実用性、走行性、機能を比較するため、この2台の電動ピックアップに試乗してみた。
- どちらも素晴らしい選択肢だが、それぞれに特徴があり、違うタイプの購入者に向いている。
フォード(Ford)の「F-150ライトニング(Lightning)」とリビアン(Rivian)の「R1T」はそれぞれ、電動ピックアップトラックへのまったく異なるアプローチを示している。
フォードのF-150ライトニングは、アメリカで元々人気のあったピックアップトラックを電動化したもので、一方、リビアンのR1Tは新興企業が開発した、まったく新しいデザインの電気自動車だ。フォードは従来のトラック購入者に向けてライトニングを販売するが、リビアンはアウトドア向けのアドベンチャーカーを目指している。
現時点では電動ピックアップトラックの選択肢が少ないことを考えると、違いはあるものの、多くの消費者は、このどちらかを選ぶことになるだろう。
リビアンR1T。
Tim Levin/Insider
筆者は両方のピックアップトラックに乗って、その性能、実用性、快適性、そしてユニークな機能を比較してみた。読んでみれば私がF-150ライトニングではなく、リビアン R1Tを購入する理由が分かるだろう。
安く手に入るのは?
2022年式のF-150ライトニングの価格は約4万ドル(約532万円。ベーシックなモデルかつディーラーのの価格上乗せ前)で、2022年式リビアンR1Tの価格は7万9500ドル(約1058万円)だ。しかし、航続距離を90マイル(約144km)延ばせる大容量のバッテリーパックを搭載するライトニングが欲しいのであれば(普通はそうだろう)、価格は約7万2500ドル(約965万円)に跳ね上がる。洒落たグレードやオプションをいくつか選んでしまうと、8万ドル(約1065万円)以上になってしまう。
フォードF-150ライトニング。
Tim Levin/Insider
つまり、同じ性能になるようなオプションをつければ、価格はほぼ互角になるが、F-150の方がより対象が広い。今回は、価格と性能の両面でR1Tと最もマッチする、航続距離を追加したライトニングを中心に比較する。
リビアンは最終的に6万7500ドル(約900万円)のR1Tを販売する計画だが、それはまだ先の話だ。
2022年式リビアンR1T。
Tim Levin/Insider
走行性能は?
舗装された道路では、どちらのトラックも快適でスムーズ、そして驚くほど静かに走る。
しかも、どちらの車もスポーツカー並みの速さで、大型車とは思えないほど軽快な走りを見せた。R1Tは3秒、ライトニングは4秒強で時速60マイル(約96.5km/h)に到達する。どちらも同乗者は衝撃を受けるだろう。
フォードF-150ライトニング。
Tim Levin/Insider
各車のスペックについてだが、大容量バッテリーを搭載したライトニングは、580馬力、1050Nmのトルクを発生し、フォードが現在販売しているF-150の中で最もパワフルなモデルだ。R1Tは、835馬力、最大トルク1231Nmを発生する。
航続距離はライトニングが320マイル(約515キロメートル)、R1Tが314マイル(約505キロメートル)でほぼ同じだ。
2022年式リビアンR1T。
Tim Levin/Insider
オフロードでの走りは?
オフロードにおいては、R1Tの方が圧倒的に高性能だ。リビアンは人々を自然の中に連れ出すことを大きなミッションとしているのだ。
リビアンR1T。
Tim Levin/Insider
R1Tは、4つの独立したモーターが各タイヤに最適な電力を送り、大きな障害物や危険な路面を乗り越えるパワーを提供する。エアサスペンションは、車高を最高15インチまで調整することができる。さらに地形のタイプに応じて、いくつか用意されている走行モードを変更できる。R1Tはオフロードを気楽に楽しめる車なのだ。
一方、ライトニングは2つのトルクモーターと全輪駆動によってオフロードにも対応するが、R1Tに比べると車高は低く、できることも少ない。
2022年式フォードF-150ライトニングXLT。
Tim Levin/Insider
R1Tの全長はライトニングよりも1フィート(30cm)以上短く、舗装されていない道でも駐車場でも、狭い場所でも操作しやすい。
実用性が高いのは?
ピックアップトラックは本来、物を運ぶための車なので、実用性について触れておかないといけない。
2022年式フォードF-150ライトニング。
Tim Levin/Insider
ライトニングの荷台は5.5フィート(約167cm)で、4.5フィート(約137cm)のリビアンよりも長く、幅も広い。また、オプションの折り畳み式のステップを使用すれば、より簡単に乗り込むことができる。両車ともフロントにトランクがあるが、これもライトニングの方が優れている。ライトイングのフランク(frunk)と呼ばれるフロントトランクは、荷室がR1Tのものより広く、開口部が低くなっているため、荷物を載せるのに便利なのだ。
2022年式フォードF-150ライトニング。
Tim Levin/Insider
ライトニングの最大積載量は2235ポンド(約1013kg)で、R1Tの1764ポンド(約800kg)を上回る。しかし最大牽引重量は、R1Tの1万1000ポンド(約4989kg)に対して、ライトニングは1万ポンド(4535kg)だ。
インテリアは?
リビアンR1Tのインテリア。
Rivian
F-150は大型のトラックで、室内も広々としている。R1Tの車内は外観に劣らずスマートなデザインで、快適な空間を実現している。
フォードはベースとなったF-150の成功の方程式から大きく外れることを望まなかったため、ライトニングのインテリアはガソリン車のものとほぼ変わらない。大きな違いは、一部のモデルに搭載された縦型の大きなタッチスクリーンだ。これはかなり直感的に操作でき、物理的なボタンとうまく補い合っていると思った。
フォードF-150ライトニング ラリアットのインテリア。
Tim Levin/Insider
リビアンは、テスラ(Tesla)のような高級感のあるインテリアと、トラックの主要機能の操作をほぼ集約する大型タッチスクリーンを採用しており、ミニマリスト路線を築いている。リビアンのディスプレーのグラフィックは美しく、タッチの反応もいいのだが、特に運転中は細かいことにまで使うとなると疲れてしまう。もうひとつ残念なことがある。リビアンは、アップル(Apple)のCarPlayにもグーグル(Google)のAndroid Autoに対応していないのだ。
リビアンR1Tと同じインテリアのSUVリビアンR1S。
Tim Levin/Insider
それぞれのクールな機能
リビアンは、ゼロからクルマを作る機会を利用し、この車に気が利いていて「アドベンチャー」にフォーカスした特徴を数多く盛り込んでいる。
リビアンR1T。
Tim Levin/Insider
特に注目すべきは、リアシート背面に設けられた11立方フィート(約311リットル)の収納スペース、ギアトンネル(Gear Tunnel)だ。スノーボードなどの長さのある物をそのまま収納することができる。また、電気コンロ、食器、シンク、ストリングライトなどがついたスライド式のキャンピングキッチンをオプションで購入することもできる。
2022年式リビアンR1T。
Tim Levin/Insider
また、R1Tは、タイヤやエアベッドに空気を入れるエアコンプレッサーや、荷物を安全に保つためのロックケーブルも装備している。
フォードF-150ライトニング ラリアット。
Ford
F-150ライトニングにも興味深い特徴がある。主なものとしては大容量電源を搭載しており、現場の電動工具に電力を供給したり、非常時には自宅の電源として使うことができる。
感想:後悔することはない
結局のところ、この2つのピックアップトラックは、異なるタイプの購入者に向いている。R1Tは、ライフスタイル・トラックであり、比較的コンパクトで、仕事の現場よりもキャンプサイトに向いている。一方、F-150ライトニングは、より大型でトラディショナルなトラックで、トラックを最も必要とする人たちのニーズを確実に満たしてくれるだろう。
2022年式リビアンR1T。
Tim Levin/Insider
どちらも素晴らしい選択肢であり、きっと多くの購入者に受け入れられるはずだ。ただし、筆者はアウトドアでピックアップトラックを使うことを想定しているので、リビアンを選ぶだろう。
大きな問題は、どちらのピックアップトラックも需要が高いのに供給が少ないため、現在入手するのはとても難しいということだ。あなたの1台が見つかりますように。
[原文:Electric truck showdown: Why I'd buy Rivian's R1T over the Ford F-150 Lightning after driving both]
(翻訳:大場真由子、編集:Toshihiko Inoue)