ソフトバンク決算会見に登壇した宮川潤一氏。同社の2022年度第1四半期決算は、コンシューマー向けコンシューマー向け通信事業が足を引っ張った。
撮影:小林優多郎
ソフトバンクは8月4日、2023年3月期第1四半期(2022年4月1日〜6月30日)決算を発表した。
売上高は約1兆3620億円で前年同期比0.4%増、純利益は1285億円で前年同期比15%減と、厳しい結果となった。
減益の主な要因は、コンシューマー向け通信事業における、通信料金値下げの影響と契約獲得関連費用の増加だ。
楽天「0円廃止」とKDDIの通信障害はソフトバンクに好影響
ソフトバンクが見込む携帯料金値下げの影響。
出典:ソフトバンク
ソフトバンクから見た携帯料金値下げのマイナス影響は、2021年度は770億円。2022年度は900億円と見込まれているが、社長の宮川潤一氏は8月4日の決算会見で「料金値下げの影響は、2022年度で底を打つ」と話す。
影響幅は経営計画には織り込み済みであり、そのため「2022年度までに営業利益1兆円」という目標に変更はないと話す。
ソフトバンク決算のサマリー。
出典:ソフトバンク
また、外的要因ではあるが、競合他社の直近の動きもソフトバンクにはプラスに働いたようだ。
楽天モバイルの基本料金0円の廃止発表で「楽天からの転入が増加し、楽天への転出は半分に減った」。KDDIの大規模通信障害については「一時的なもの」としつつも「KDDIに転出する数がグッと圧縮された」(いずれも宮川氏)。
宮川氏はKDDIの通信障害については「(全く同じ原因の問題は)私どもでは起こり得ない」としつつも、「対岸の火事とは思っていない」「少し違った事象も起こりうるので、社内で対策チームを設けた」と話した。
PayPayは将来的なソフトバンクの屋台骨に
以前からPayPayに大きな期待を寄せる宮川氏。
撮影:小林優多郎
増収減益の決算ということで、宮川氏のプレゼンテーションは決算の主要な数値の紹介と、先日発表されたPayPayの連結子会社化に時間が割かれた。
PayPayの主な方向性は、8月3日のZホールディングスの決算会見で語られたため、宮川氏からの具体的な説明は少なかったが、子会社化が予定されている10月1日以降の第3四半期決算からは、「金融事業」として各種KPIの説明をしてくことが明らかにされた。
取材陣からの質疑で、宮川氏は「(将来的にソフトバンクの収益の)3分の1ぐらいの規模感になってほしい」と期待を寄せていた。
ソフトバンクとZホールディングスが行うPayPay連結子会社化のスキーム。
出典:ソフトバンク
また、ソフトバンクは以前からPayPayの上場について可能性を否定してこなかった。Zホールディングスと共同で子会社化した後の方針について、報道陣・投資機関からの質疑が集中した。
これに対し宮川氏は、「現時点では決まっていない」としたが、「今のマーケットで、上場している同業他社を見ていると、今の環境で上場するのはよろしくないと感じている」「できれば黒字化したタイミングで(上場できれば)と、アドバイスしているのも事実」とした。
ただ、肝心の黒字化のタイミングについては明言せず、「(ユーザー獲得・市場拡大のために)攻めている間は黒字になるのは遠いと思うかもしれないが、(足元の)数字はよくなっているので、攻めながら黒字化というコントロールはどこかで行う」と、今後の方向性転換が遠くない将来に実施されると示唆した。
(文、撮影・小林優多郎)