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インフレの「6つの要因」を理解して、しっかり対策を練ろう

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インフレ率の上昇ペースに対応できるように、可能な時に貯蓄や投資をすることを考えよう。雇用主に生活費調整を相談してみるのも一つの方法だ。

Rachel Mendelson/Insider

  • インフレとは、モノやサービスの価格(物価)が時間の経過とともに上昇すること
  • インフレ率の変動には生産コストの高騰など、さまざまな要因がある
  • インフレ率は毎月、消費者物価指数(CPI)を用いて算出される

中古車から住宅市場、株式市場やそれ以外にも、インフレは消費者にも投資家にも常に大きな影響を及ぼしている。それは時間の経過と共に物価が上昇していくにつれ、貨幣の購買力が次第に低下していくからだ。しかし、インフレ率の変動の要因は、経済の状態次第で異なる。

では、インフレを引き起こす主な要因とは何なのか? インフレ率はどのように算出されるのだろうか?

インフレとは?

インフレはモノやサービスの価格が時間の経過とともに上昇することを指し、貨幣の購買力を低下させる。つまり、同じ金額でも将来買える量が減るということだ。「簡単に言えば、お金が溢れているのに対してモノとサービスが少なすぎる状態」と、米シンクタンク「経済政策研究センター(the Center for Economic and Policy Research)」のシニア・エコノミスト、ディーン・ベイカー(Dean Baker)氏は説明する。

アメリカでは、インフレ率は米労働省労働統計局(BLS)が消費者物価指数(CPI)を使って算出し、毎月そのデータを発表している。

ポイント: インフレはすでに発生したことに関する情報を提供するため「遅行指標」として知られ、予測ではなく事実を裏付けるために使用される。

現在のインフレ率

米労働省労働統計局(BLS)によると、アメリカの2022年6月のインフレ率は前月比1.3%上昇した。これは遅行指標のため、最新のインフレ指標は必ず前月の情報になる。季節調整前の総合指数は前年同月比9.1%の伸び率となった(BIJ補足:日本の場合、2022年6月現在のインフレ率総合指数は、前年同月比2.4%の上昇)。

インフレ率の計算にはまず、モノとサービスの詰まった "マーケット・バスケット方式(買い物かご方式)"を使う。この方式の価格水準は前月比で測定される。この買い物かごは包括的なものではく、都市部の一般家庭で通常消費する量のモノとサービスが入っていると考える。この買い物かごを使って消費者物価指数が作られ、かごに各アイテムの合計金額を足していくことで、このかごの現在の価値が決まる。

それから、同じ中身の入った、基準となる期間の買い物かごと現在の買い物かごの価格を比較する。すると、直近のかごと基準期間のかごの価格水準の差から、インフレ率が算出できる。例えば、2021年3月に255だったCPIが、2022年3月に260に上昇した場合、インフレ率は前年同月比1.9%となる。

ポイント: アメリカのエコノミストがインフレ率の算出に使う指標はCPIだけではない。企業による投入財の価格を追跡する生産者物価指数(PPI)や、消費者が購入したモノやサービスの価格を測定する個人消費支出(PCE)という指標もある。PCEとCPIの違いは、指標から除外されるモノとサービスの種類が異なる点である。

CPIは米労働省の労働統計局が提供するのに対し、PCEは米商務省の経済分析局が提供する。

インフレの要因

インフレを引き起こす要因は複数あり、中でも最も多いのはデマンドプル(demand-pull:需要けん引)型とコストプッシュ(cost-push:原価上昇)型だ。しかし、2022年のインフレの原因はやや複雑で、政府のコロナ対応措置が原因である部分もあれば、ロックダウン規制の緩和と、全米に広がる労働力不足に伴う急激な需要増加が原因の部分もある。

インフレの主な原因:

1. デマンドプルインフレ

特定の商品やサービスへの需要が、その需要を満たすための経済能力を上回ったときに発生する。需要が供給を超えると物価に上向き圧力がかかり、インフレを引き起こす。

ブロードウェイのミュージカル『ハミルトン(Hamilton)』の観劇チケットがこの場合の実例だ。座席数には限りがあるのにチケットの需要がそれをはるかに上回った。そのためチケット代は外部サイトで2000ドル近くまで跳ね上がり、当時139ドルだったスタンダード席と549ドルだったプレミアム席の価格を大きく上回る高額チケットになった。

2. コストプッシュインフレ

賃金や原価のコストが上昇したときに発生する。このようなコストは該当商品やサービスの値上げという形で消費者に振りかかる。材木は住宅の投入材なので、この場合の良い例だ。2021年、材木の原価が400%も上昇したため住宅価格が高騰し、それによってインフレが起きた。

3. 貨幣供給量の増加

米連邦準備銀行は、貨幣供給量の増加=流通している貨幣の合計額と定義しており、これには現金、硬貨、残高、預金が含まれる。貨幣供給量が生産率よりも早く増加すると貨幣の流通量に対し商品の量が少なすぎる状態になり、インフレ、特にデマンドプルインフレを引き起こす。貨幣供給量の増加は通常、米連邦準備銀行によって公開市場操作(OMO)と呼ばれるプロセスを通じて行われる。

4. デバリュエーション(平価切り下げ)

国の為替レートを下方修正し、その国の通貨の対外価値を切り下げること。

通貨をデバリュエーションした国の輸出品は安くなるため、諸外国がその国の商品を買いやすくなる。また、デバリュエーションした国では外国製の商品が割高になるため、国民は輸入品より国産品を買うようになる。

この戦略を使っている国としては中国が最も有名で、アメリカや諸外国は長年、中国が頻繁に人民元を切り下げようとしていると非難している。

5. 賃金の上昇

文字通り、労働者に支払われる賃金が増えることを指す。「賃金は生産コストの一部」と考えるベイカー氏は、「賃金を大幅に引き上げる場合、より高い生産性で賃金の上昇分と相殺できなければ、企業はコストを転嫁するか、利益率を下げなければいけない」と指摘する。

しかし、シリコンバレーで見られるような、より短期間での急激な賃金上昇と比べて、最低賃金の引き上げのような緩やかな賃金の上昇が与えるインパクトに関しては、エコノミストの間でも意見が分かれる。賃金の上昇は企業にかかるコストが増えるため、コストプッシュインフレを引き起こすと考える人もいれば、(一部のセクターだけに集中するのではなく)全体的に賃金が上がれば、価格上昇分を相殺するのに十分な需要の増加につながると考える人もいる。

「賃金が上がれば消費者はインフレに対応できるようになる。賃金がインフレ率より早い上昇率で上がればなおさらだ」と指摘するハンプトン大学ビジネス経済学部長のスザンヌ・L・トーニー博士は、「賃金が上がれば、物価が高くなっても消費者の購買力に影響しない」と考える。

6. 政策と規制

政策には、結果としてコストプッシュ型あるいはデマンドプル型のインフレを引き起こす原因になり得る政策もある。政府が特定の商品に税補助金を発行すると需要が増える場合があり、その需要が供給量を上回ると価格が上昇する。さらに、厳しい建築規制や家賃安定化政策も、そのコストが居住者に転嫁されたり、住宅の供給が人為的に減ることにつながり、結果的にコストアップとなってインフレ環境を生み出してしまう可能性があるのだ。

今からでも遅くない、インフレ対策

通常、我々の経済システムにおいて、年2%前後のインフレは正常と言える。つまり、正常な財政状況では、インフレ率以上の金利を得ていない限り、貨幣の価値は年々下がっていくということだ。年俸アップや雇用主からの生活費調整があれば、インフレによる打撃を最低限に抑えることができるだろう。

起業家には、料金を段階的に引き上げる検討をすることをお勧めする。消費者には「インフレは通常、均一ではないことを忘れないで」とベイカー氏は助言する。「急激に値上がりするものもあれば、価格が変わらなかったり、値下がりするものもある」。手頃な価格になるのを待つか、代わりになる他の商品やサービスを探して節約する良い機会かもしれない。

投資もインフレに打ち勝つ効果的な手段だ。「預金口座の金利では価格上昇分をカバーできそうにない」からだ。ただ、「投資した資金がインフレ率よりも高い収益率を得ているよう注意を払わなければいけない」とトーニー氏は指摘する。

米国物価連動国債(TIPS)とは、元本がCPIの動きに連動して増減する、米財務省が発行する国債で、インフレ連動国債とも呼ばれている。TIPSは半年ごとに固定金利を支払い、満期は5年、10年、30年のものがある(BIJ補足:日本にも同様の商品あり。満期は10年のみ)。その他のインフレヘッジ手段としては、社債や有配株、インデックスファンドなどがある。

[原文:What to know about the 6 main causes of inflation

(翻訳・小森谷美江子、編集・長田真)

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