全固体リチウムイオン電池軌道上実証装置(Space As-Lib)のモニタカメラ撮影画像。全固体電池の充放電実験の際に得た電力によって撮影された。
提供:JAXA
電気自動車(EV)での活用などを中心に、次世代バッテリーとして注目されている「全固体電池」の活用が、宇宙にまで広がっている。
8月5日、JAXAと日立造船は、世界で初めて、宇宙での全固体リチウムイオン電池の充放電機能を確認したことを発表した。
両者は、2016年から共同で全固体電池の研究開発を進めていた。
JAXA広報によると、今回実証したのは、EVなどの電池として研究開発が進められているタイプと同じ「硫化物系」の材料を用いて作られた全固体電池。2022年2月20日(日本時間)に、「全固体リチウムイオン電池軌道上実証装置」(Space As-Lib)を国際宇宙ステーション(ISS)に送り届け、ISSにある日本実験塔「きぼう」の船外に設置。3月5日、世界で初めて充放電が可能であることを確認したという。
JAXA広報によると、「軌道上に持っていった段階で65%程度充電されていたものを、一度空っぽにまで放電して、そこからフル充電までもっていきました」という。
●実験に使用された全固体電池のスペック
サイズ:65ミリメートル×52ミリメートル×2.7ミリメートル
質 量:25グラム
容 量:140mAh(15セル並列接続により約2.1Ahの電源として使用)
実験で使われた全固体電池の実証装置(左)と、140mAhのセル(右)。セルは15枚並列に接続している。
提供:JAXA
全固体電池、宇宙での可能性は?
全固体電池は−40℃~120℃という広い温度範囲で使用可能であり、リチウムイオン電池のように破裂したり、発火したりするリスクが低い。そのため、宇宙環境のように温度差が激しかったり、放射線にさらされるような厳しい環境で利用する電池として適していると考えられている。
リチウムイオン電池では難しかった省スペース化が求められる小型機器への適用や、船外実験装置などでの使用例が期待される。
その他、JAXAによると「月面に設置する観測機器や、小型のローバ(探査車)、更に大容量化を実現した後には、本格的な大型のローバなどの宇宙機での使用が期待されます」とも。
今後の宇宙開発における期待が膨らむ。
JAXAは、今後、基本的な充放電の特性データや、微小重力かつ真空、そして放射線にさらされるという宇宙特有の環境による影響を評価するために必要なデータを取得していくとしている。
(文・三ツ村崇志)