テイクアウトの注文を準備するスターバックスの従業員。スターバックスの店舗は一時的に閉鎖されるか、デリバリーかモバイルオーダー&ペイ(MOP)決済の注文のみ受け付けると同社は最近発表している。
Yin Liqin/China News Service via Getty Images.
- 現在、スターバックスの売上の3分の2以上は、ドライブスルー、モバイルオーダー、デリバリーによってもたらされている。
- スターバックスは当初、プレミアムコーヒーを提供する「サードプレイス」であることを軸にブランドを確立した。
- あるアナリストは、この変化はスターバックスがトレンドの変化にうまく適応していることを示していると話している
スターバックス(Starbucks)は、利便性と効率性を優先し、そのルーツから離れつつある。
現在、スターバックスの注文の3分の2以上はモバイルアプリ、ドライブスルー、デリバリーから来ていると同社は2022年8月の決算説明会で述べた。言い換えれば、スターバックスに来店し、バリスタに注文をする客はわずか28%であり、そのうちの何人かがスターバックスの店内でドリンクを飲んでいる。
スターバックスの顧客は、これまでと違う注文方法の利便性を気に入っているようで、スターバックスはそれをさらに手軽にしている。2022年5月にウォールストリート・ジャーナル(WSJ)が報じたところによると、スターバックスの新店舗の約90%にドライブスルーが併設されているという。ドライブスルーの列でスタッフが操作するタブレット端末を通じて注文できる技術は、約半数の店舗で導入されており、2022年末までに65%の店舗で導入予定だと、同社CEOのハワード・シュルツ(Howard Schultz)は電話会見で述べている。
スターバックスは過去に、ドライブスルーに注力するため、業績の悪いショッピングモール内の店舗を閉鎖してきた。同チェーンはドライブスルーのみの店舗も検討している。注文を受け取るだけの店舗はすでに開設しており、アマゾン(Amazon)と提携してモバイルでの注文と決済のみが可能なアマゾン・ゴー(Amazon Go)との共同店舗も立ち上げている。
スターバックスは当初、プレミアムコーヒーを普及させ、カフェラテのようなエスプレッソドリンクをアメリカ人に紹介することで大成功を収めた企業だ。同チェーンは自宅や職場の他に人々が集う場所「サードプレイス」であることをアピールしていた。しかし、このコンセプトは、近年同社が重視している利便性と相反するものになっていて、「サードプレイス」の定義を物理的な空間を超えた「考え方(マインドセット)」にシフトさせている。
スターバックスにおけるこうした変化は、ほとんどの店舗で客席や客が集える場所がなくなることを意味するものではないとエドワード・ジョーンズ(Edward Jones)のアナリスト、ブライアン・ヤーブロー(Brian Yarbrough)はInsiderに述べた。ヤーブローによると、スターバックスがドライブスルーやモバイル注文に力を入れているのはパンデミックの影響もあるが、優先順位の転換は、新型コロナウイルスが流行する前から起こっていたいう。
「客がコーヒーを飲みながらゆったりする時代は過去のものになったのだろう」と彼はInsiderに述べた。
「利用客が座るためにはすべての空間を必要としない。そしてドライブスルーはドライブスルーのない店よりも業績がいい。メンテナンスが必要な座席が少ないとスターバックスにとってはコスト削減になる」と彼は話している。
ヤーブローによると、スターバックスがこれほど成功したのは、同店が顧客の好みの変化に対応し、それまでとは違う方法を率先して取り入れてきたからだという。その例として、現在スターバックスが販売しているドリンクの75%は、オリジナルメニューにはなかったコールドドリンクであることを彼は指摘している。
他のクイックサービス・チェーンも同様にドライブスルーを優先させる方向に舵を切っている。チポトレ(Chipotle)は、新しい店舗にチポトレーンズ(Chipotlanes)を導入し、モバイル注文が可能なドライブスルー専門店の開設に力を入れている。その利点は、ドライブスルーは利益率が高く、オペレーションが早く回るという、スターバックスが採用している理由とほぼ同じだ。
(翻訳:大場真由子、編集:Toshihiko Inoue)