スーパーやコンビニだけでも、たくさんの種類のノンアル商品に出合うことができた。
撮影:吉川慧
コロナ禍での在宅消費や健康ブームの流れにのって、低アルコール飲料の売上が伸びている。
そんな中、飲料メーカー各社が力を入れているのが、アルコール度数ゼロ%の「ノンアル」飲料だ。
Bar LIDEMOのバーテンダー、木村さん。
撮影:三ツ村崇志
Business Insider Japanでは、都内のスーパーやコンビニエンスストアを巡り、総勢18種類のノンアル飲料を購入。神楽坂にあるBar LIDEMOでバーテンダーとして働く木村絵理さんの協力を得て、各メーカーが販売するノンアル商品の実力を見極めてみた。
※製品の情報はすべて2022年8月8日時点の情報です。また、各社の全ノンアル商品を網羅できているわけではありません。
激戦のノンアル「レモンサワー」は個性が光る
各社のレモンサワー風のノンアル。グラスに注ぐと、同じレモンサワーテイストとはいえ、見た目がかなり異なる。
撮影:吉川慧
数年前から続いているレモンサワーブーム。その流れは、ノンアルにも波及している。
多くのメーカーが「レモンサワー」テイストのノンアルを販売している。
アサヒ:「スタイルバランスプラス」レモンサワーテイスト
撮影:吉川慧
アサヒが販売しているスタイルバランスプラスシリーズは、カロリー、糖類ともにゼロで、レモンサワーテイストを含めて全7種類のフレーバーがある。そのうちレモンサワーを含めた5種類が機能性表示食品でもある。
「かなりすっきりしていて、甘みが控えめだと感じました。微炭酸気味なので、パンチが強い方が好みの方からすると、物足りないと感じるかもしれません」と木村さん。
「味がそんなに強くはないので、食べ物と一緒に飲んでも邪魔にならないのではないでしょうか。味の濃い食べ物は合うかもしれません。ラベルに『スッキリ甘くない』と書いてある通りだと思います」(木村さん)
キリン・ファンケル:「氷零 カロリミット」レモン
撮影:吉川慧
キリンの酎ハイ「氷結」シリーズのノンアル版。化粧品や健康食品を販売しているファンケルとコラボして開発された、「氷零 カロリミット」は、レモンテイストとグレープフルーツテイストの2種類。
アサヒのスタイルバランスプラスシリーズと同様に、カロリー、糖類ともにゼロで、機能性表示食品に分類されている。
まずはレモンサワーテイストについて(グレープフルーツテイストは後述)、木村さんは「レモンピール(レモンの皮)感が強いですね。かなりすっきりしているので、好みは分かれるかもしれません。少し喉に残る感じがあるので、食事と一緒にというより、食前酒などとして飲んだほうが楽しめるかもしれません」と。
また、砂糖を加えてジュースのように甘くしている感じがあまりせず、「普段ダイエットなどでこういった味のものを飲み慣れている人にとっては、安心して飲めるのかもしれませんね」(木村さん)とも。
筆者も木村さんとともに試飲していたが、確かに同じ「レモンサワーテイスト」といっても、STYLEバランスプラスと氷零の2種類の段階で、それぞれまったく違う印象だった。
サントリー:「のんある気分」「のんある晩酌」レモンサワー ノンアルコール
続いて紹介するのは、サントリーが販売するレモンサワーテイストのノンアルコール商品。
撮影:吉川慧
サントリーはノンアルブランドとして、レモンサワーテイストやカシスオレンジテイストなど全7種類からなる「のんある気分」シリーズを展開。加えて、2021年3月には「のんある晩酌 レモンサワー」の販売を開始した。なお、どちらもカロリー、糖類はゼロだ。
まず、のんある気分レモンサワーテイストについて、木村さんは、「レモンを絞ったような香りがしますね。それほど苦味はないので、そういった味が嫌な人でも楽しめるのではないかと思いました」と語る。
また、「レモンの甘い部分が入っていて、しっかり味がする印象です。食事と一緒に楽しむというより、単独で飲みたいタイプの飲み物ですね。味がしっかりしているので、お風呂上がりに冷やして飲んだりするのもおいしいかもしれません。氷を入れてもそこまで薄くならないと思います」(木村さん)とも。
撮影:吉川慧
他方、のんある晩酌については、同じサントリー製でありながら、その印象は別ものだ。
木村さんも「インパクトが『のんある気分』と全然違いますね」と。
「レモンの匂いは(のんある気分と比較すると)薄いと感じました。はじめにクリアなレモン果汁の味がしてから、後でレモンの皮の苦味がきます。甘みは強くはないので、煮物や醤油系の和食などと一緒に楽しむと合うかもしれません。
最後の方に、蒸留酒のような後味もあるので、お酒っぽいですね。ノンアルコールなのに、お酒を飲んでいるような印象を感じました」(木村さん)
サッポロ:「LEMON’S FREE」
撮影:吉川慧
サッポロビールからは、クエン酸が含また機能性表示食品でもあるLEMONS FREEがラインナップ。疲労感の軽減をうたう。
「香りは『レモンサワー』という感じがします。いままでのものに比べて甘みが強いですね。ただ、あまりベタッとした甘さではないですね。クエン酸感はものすごく分かりました。サッポロさんが販売している『キレートレモン』のような印象に近いかもしれません。
味が強いので、食事と一緒にというよりも、お風呂上がりや、スナック菓子と一緒に楽しむのが合いそうですね」(木村さん)
コカ・コーラ:「よわない檸檬堂」
撮影:吉川慧
コカ・コーラが販売する「よわない檸檬堂」は、レモンサワーブランドで人気の「檸檬堂」のノンアル版として2022年1月に販売が開始されたばかり。グラスに注いだ段階で、色が最も白くにごっていたものだ。
グラスに注ぐと、かなり強めのレモンの匂いが感じられたものの、「匂いから想像するような味ではないかもしれません」と木村さん。
「味は分かりやすいと感じました。少し甘めではありますが、自然なまろやかさがあって飲み口はそれほどきつくないと思います。柔らかい炭酸ですかね。塩味があるので、甘みが際立って感じます。そういうのも含めて、飽きが来ない工夫がなされているんでしょうか。レモンスカッシュのように飲み慣れた味で、安心感がありました」(木村さん)
フレーバーが変わると評価もガラリ:グレープフルーツ
グレープフルーツサワーテイストのノンアルは、レモンサワーほど見た目の印象に差はない。
撮影:吉川慧
レモンサワーテイストに続いて試飲してもらったのは、グレープフルーツサワーテイストのノンアル飲料だ。レモンサワーテイストと同様に、これも同じグレープフルーツサワーとは思えないほど、各社味や商品の設計に違いが見られた。
アサヒ:「スタイルバランスプラス」グレープフルーツサワーテイスト
撮影:吉川慧
アサヒスタイルバランスプラスシリーズは、レモンサワーテイストと同様にカロリー、糖類ゼロで、機能性表示食品でもある。レモンサワーテイストはかなり透明感があった一方で、グレープフルーツサワーテイストの方は少しにごりがみられた。
「レモンサワーテイストはすっきりしていましたが、グレープフルーツサワーテイストは比較的甘めですね。ただ、後味はすっきりとした、スポーツドリンクのような印象です」と木村さん。
「匂いはグレープフルーツの柑橘っぽい爽やかな感じがしっかりと感じられる一方で、味はどちらかというと『シトラス』のような印象です。グレープフルーツの皮の苦味のような雑味が比較的弱いので、苦みが嫌いな人はこれくらいでも丁度良いかもしれません」(木村さん)
また、スタイルバランスプラスシリーズの特徴なのか、レモンサワーテイストと同様に微炭酸気味だった。
キリン・ファンケル:「氷零 カロリミット」グレープフルーツ
撮影:吉川慧
キリン・ファンケルのコラボ商品である「氷零 カロリミット」のグレープフルーツテイスト。レモンサワーテイストと同様に、カロリー、糖類がともにゼロの機能性表示食品だ。
レモンサワーテイストではレモンピール感が強い印象があったが、グレープフルーツテイストでも、「皮っぽさ」は健在だった。ただそれがグレープフルーツ独特の苦味をうまく表現していて、「グレープフルーツらしさがありました」と木村さん。
「果汁感というより、皮っぽい感じが強いので、多くの人がイメージする『グレープフルーツ感』が感じられて安心できる味だと思いました。そんなに甘くなく、少し苦味があって、炭酸も比較的強い。苦味がある分、チキン南蛮や唐揚げなどの味が濃い食べ物と合わせると美味しくいただけるのでは」(木村さん)
サントリー:「のんある気分」グレープフルーツサワーテイスト
撮影:吉川慧
サントリーののんある気分シリーズにも、グループフルーツテイストがラインナップされている。
レモンサワーテイストでは、「レモンの味がしっかりしている」という印象だったが、グレープフルーツテイストではどうか。
「香りが少し弱い一方で、グレープフルーツの果汁感が結構あるので、独特な印象があります。後味はしっかりと残るタイプですね。その分、少し爽快感が弱いといえば弱いかもしれません。お酒好きの方が飲むものというより、お酒が苦手な方が、そういう気分を味わいたいときに飲む、まさに『のんある気分』なのかなと感じました」(木村さん)
※なお、今回は手に入らなかったが、リニューアルした「グレフルサワー ノンアルコール」も販売が開始されている。
ハイボールにカシオレも「ノンアル」
ここまで、レモンサワーテイストとグレープフルーツサワーテイストという、多くの企業が販売している、アルコール飲料でも「王道」のノンアル版を飲み進めてきた。
ここから先は、各社が趣向を凝らして開発するノンアルを見ていこう。
アサヒ、サントリーは、スタイルバランスプラスシリーズと、のんある気分シリーズで、それぞれ複数のテイストのノンアルコール飲料を展開している。今回はその中でも、「ハイボール」と「カシスオレンジ」テイストのノンアルに注目してみた。
アサヒ:「スタイルバランスプラス」ハイボールテイスト
撮影:吉川慧
アサヒ、スタイルバランスプラスシリーズで展開している「ハイボール」テイスト。これまでのスタイルバランスプラスシリーズ同様、カロリー、糖類はゼロで、機能性表示食品でもある。
缶を開けた瞬間「プシュ」という聞き慣れた音が聞こえた。ここまで紹介してきたノンアル商品もすべて炭酸ではあったものの、ここまではっきりと強めの炭酸を感じることはなかった。
木村さんは、「炭酸は強いですね。香りがウイスキーで、味は焼酎に近いような印象です。それをソーダで割ったような感じがします。ウイスキーハイボールというより、焼酎ハイボールでしょうか。焼酎が好きな人は好きだと思います。若い人よりも高齢の方向きのような気がしますね」と。
また、居酒屋などでよく見かける「角ハイボール」が好きな人が飲むと、「いつものハイボールと印象が違うと思うかもしれません」(木村さん)とも。
サントリー:「のんある気分」カシスオレンジ ノンアルコール
撮影:吉川慧
カクテル系飲料の代名詞とも言える「カシスオレンジ」のノンアルにチャレンジしているのは、今回調べた大手酒メーカーの中ではアサヒとサントリーだけだった。
アサヒはスタイルバランスプラスシリーズで、サントリーは「のんある気分シリーズ」で展開している。
今回は、都内スーパー、コンビニなどを複数店回って手に入った「のんある気分」シリーズのみを実際に試飲した。なお、本来カシスオレンジには炭酸は入っていないが、「のんある気分」では炭酸入り。言うなればカシスオレンジサワーテイストだ。
「カシスの風味が強くて、すごくいい香りがします。飲んでみると、後半にオレンジっぽさを感じますね。カシスが好きな人にとってはすごく好まれるのではないでしょうか。普通のカシスオレンジサワーよりは甘さが控えめだと感じます。氷を入れて飲んでもいいかもしれません」(木村さん)
ワイン・カクテル系にも押し寄せるノンアルの波
ノンアルコール飲料の波は、ワイン、カクテル系にも押し寄せている。「ワインのノンアル」と聞くと、ブドウジュースのようなものを想像してしまう人は多いかもしれないが、実際の味はどうなのか?
キリン:「MOCK Bar」オレンジ&マンゴーmix/洋梨&パインmix
撮影:吉川慧
キリンは傘下のワインメーカー・メルシャンから、ワインテイストのノンアルコール商品を複数展開している。
まず紹介するのが、2021年6月に販売が開始された、ノンアルコールカクテルの「MOCK Bar(モクバル)」。洋なし&パインmixとオレンジ・マンゴーmixという2種類のテイストが用意されている。
どちらも、果汁が15%とふんだんに含まれており、そこに「ノンアルコールのワインエキス」や隠し味としてスパイス・ハーブを加えることで、ノンアルでありながら「サングリア感」を演出しているという。なお、サングリアではあるが、炭酸も含まれている。
色は鮮やかだ。
撮影:吉川慧
洋梨&パインmixについて、木村さんは「果汁味は感じられますが、思ったより甘くないかもしれません。白ワインというよりも、ビネガー系の味がして、かなりすっきり飲める印象です。酎ハイ系のノンアルコール商品とくらべると、フルーツの味や匂いは断然強いです。香りは洋梨で、味はパインのキリッとした感じでしょうか」と。
オレンジ&マンゴーmixも、同じように果汁感はあるものの「こちらは香りが結構強いですね。シナモンの匂いが強いので、苦手な人は苦手かもしれません。洋梨&パインに比べると、こちらのほうが甘さがあって、炭酸も弱めです」と、隠し味とされているスパイスの影響で大分テイストが変わるという。
「どちらもフルーツビネガーのような印象で、好みが結構分かれるような気がします。フレーバーティーが好きな方は、好きだと思います」(木村さん)
キリン・メルシャン:「スパークリング アルコールゼロ」
メルシャンのスパークリングワインテイストのノンアルコール。写真だと少し見にくいが、グラスに注ぐとしっかりスパークリングワインのような泡が立っていた。
撮影:吉川慧
メルシャンでは、サングリアだけでなく、スパークリングワインテイストのノンアルコール商品「SPARKRING ALcohole Zero」も販売している。
木村さんは「『シャンパンを飲んでいる』という気になります。シャンパングラスに入れた時の泡立ちがちゃんとあります。泡立ちも良いですね」と、スパークリングワイン“らしさ”があると指摘。
肝心の味も「マスカットの香りを強めに感じますが、香りの印象よりも甘くないので、ちょうどよいバランスだと思いました。後味も実際のシャンパンに近く、違和感がありません。白ワインに合うとされている料理は全般的に相性が良さそうです」(木村さん)と。
また、「言われないとノンアルとは分からないかもしれません。冷えている方が美味しいかもしれません」との評価も。
アサヒ:「スタイルバランスプラス 」シャルドネスパークリングワインテイスト
撮影:吉川慧
アサヒスタイルバランスプラスシリーズでも、スパークリングワインテイストの商品を販売している。ほかのシリーズと同様にカロリー、糖類ゼロではあるが、機能性表示食品ではない。
スタイルバランスプラスシリーズ全体が微炭酸気味だったこともあり、炭酸は弱めだった。
「ワインが苦手な人でも、マスカットサワーや青リンゴサワーのような飲みやすいお酒のような感覚で飲めると思います。『飲み慣れた味』といえばよいでしょうか」(木村さん)
サントリー:「ノンアルでワインの休日」 赤・白
撮影:吉川慧
サントリーが2022年3月から販売を開始した、「ノンアルでワインの休日」。スパークリングワインテイストで、赤と白の2種類がラインナップされている。
テレビCMなども多数放映されており、コンビニやスーパーでもよく見かける商品だ。販売を開始した3月末の段階で年間販売目標としていた20万ケースを達成し、4月には目標値を80万ケースに上方修正するなど、売れ筋だ。
ワイングラスに注いでみると、赤・白どちらも独特の匂いが広がった。木村さんは「ワインともジュースとも違う、独特の印象ですね。ワイングラスで飲むと匂いが少し強い印象があるので、気になる人は缶のまま飲んでも良いかもしれません。『気取らず飲むワインテイストのノンアル』という感じでしょうか」とコメント。
チョーヤ:酔わないウメッシュ
撮影:吉川慧
最後に試したのは、梅酒で知られるチョーヤが販売するノンアルの梅酒「酔わないウメッシュ」だ。
チョーヤはこの他にも、同シリーズとして「酔わないゆずッシュ」「酔わないレモンッシュ」、さらに機能性表示食品である「機能性酔わないウメッシュ」を販売している。
原材料を見ると、紀州産「完熟南高梅」を100%使用。公式サイトにも「酸味料・香料・着色料といった添加物を一切使用せずにつくりました」とあるなど、梅酒メーカーとしてのこだわりが感じられた。
木村さんも「酸味がきついのかなと思いましたが、思っていたよりも甘いですね。あんずのシロップ漬けのような印象で、ほんのりやさしいフルーツの味がしました。後から桃っぽい味も感じます」と。
また、「梅酒は普通、アルコールがあると味が口に残るのですが、これは飲み疲れしないですね。ただ『お酒』という感じはあまりないかもしれません。疲れたときに飲みたい飲み物です。甘すぎず、果実感もあって多くの方に好まれそうだなという印象です」(木村さん)との感想も。
今回試飲したものはすべて「ノンアル」だったが、全種類を試飲し終わったあと、口の中にはほのかにお酒を飲んだ後のような後味が残っていた。
お酒ではないけれども、ジュースとも異なる。「お酒の場」をよりたくさんの人にとって楽しめる場にする上でも、ノンアルという新しいジャンルがどこまで広がっていくのか注目したい。