世界最大の電子取引所「ナスダック」とは何か? 革新的なハイテク新興企業が集う市場

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ナスダックはニューヨークに本社はあるが、実際には電子証券取引所だ。

Alan Schein Photography/Getty Images

  • ナスダック(NASDAQ)は世界最大の電子取引所で、ナスダック総合株価指数とナスダック100指数という2つの指数がある。
  • ハイテク株、消費者サービス株、その他グロース株がナスダック市場の大半を占めており、近年は他の株式市場を上回るパフォーマンスを上げている。
  • インデックスファンドは、値動きは激しいがパフォーマンスが高いナスダック市場に個人が投資する最も簡単な方法だ。

ナスダック(NASDAQ)は、すべての売買が立会所ではなく電子的に行われる、世界で最大かつ最古の証券取引所だ。

全米証券業協会(National Association of Securities Dealers)が運営する自動気配通報システム(Automated Quotations)の頭文字を取ってナスダック(NASDAQ)と呼ばれているこの取引所は、上場企業の時価総額で世界第2位の取引所である。それを上回るのは、ニューヨーク証券取引所(NYSE)だけだ。

1971年の創設当時、オンライン取引所の草分けであるナスダックは、これまで店頭(OTC)でのみ取引されていた企業に上場サービスを提供した。ナスダックはすぐさま、マイクロソフトやアップルなどの多くの新しい革新的なハイテク新興企業が上場する場となった。

現在ナスダックは、ナスダック総合株価指数(the Nasdaq Composite)とナスダック100株価指数(the Nasdaq 100)というビジネスの重要なバロメーターである2つの主要指数とともに、市場や経済で重要な役割を果たしている。

ナスダックを丸ごと理解できるように、その仕組みから賢い投資戦略まで詳しく説明しよう。

ナスダックの仕組み

技術的な面で言えば、ナスダックとは、特定の株式や証券の買い手と売り手がマーケットメーカーと取引できるディーラー市場である。これに対してNYSEのような立会市場では、買い手と売り手が証券会社を通じて互いに取引する。

ナスダックの上場企業は、幅広いセクターや業種を代表するが、大半はハイテク、消費サービス、ヘルスケア業界の企業である。

ナスダックにはペプシコ、ペイパル、アマゾンといった巨大企業が多数上場しているが、ナスダックにはNYSEよりもグロース株が多く、超優良銘柄(ブルーチップ)が少ない。ナスダック株は革新や創造的破壊で名高いが、同時に株価の値動きが激しいことでも有名だ。

数字で見るナスダック

  • 上場企業は3700社以上
  • ナスダック上場企業の時価総額は全体で11.2兆ドル(約1515.4兆円)
  • 1日の売買高は48億株

ナスダックの歴史

ナスダックは1971年に当時の全米証券業協会(現在のFINRA)によって創設された。ナスダックは当初、店頭銘柄の買呼値と売呼値を電子的に通知するシステムにすぎなかったが、その後トレーディングと取引システム機能が追加された。

  • 2002年、ナスダックが完全に独立した上場企業になる。
  • 2006年、証券取引委員会(SEC)の登録証券取引所になる。
  • 2007年、スウェーデンの証券取引所運営会社OMXと経営統合し、ナスダックOMXグループが誕生した。

ナスダックには今まで一度も立会所を設置したことはなく、それは今も変わっていない。だがこのことが1995年にナスダックの頭を悩ませることになる。

マイクロソフトなどの大手企業が、ナスダックからの鞍替えをちらつかせたのだ。立会所がないということは、物理的に存在していないということであり、上場初日や立ち合いが始まるときに鐘を鳴らすセレモニーもない。さらに重要なのは、取引中にメディアが配信する場所がないことだった。

この問題は2000年に解消した。ニューヨーク市の43番ストリートとブロードウェイの角に「マーケットサイト」として知られる巨大な10階建てのビルが完成したのだ。中にはビデオスクリーンや充実したテレビ用スタジオが完備され、とうとうあのセレモニー用の鐘も用意された。ただし、実際のトレーディングは引き続き電子的に行われた。

これは少し皮肉なことだ。完全な電子取引所として始まったナスダックが、証券業界の信頼を勝ち得るために物理的な拠点を構築しなければならなかったのだから。だが、NYSEやその他老舗の由緒正しい取引所も、ついには急速に進化する市場環境で競争力を維持するために電子取引が必要なことに気づいた。

2つの重要なナスダック指数

ナスダックは単なる証券取引所ではない。ナスダックに上場する株式のパフォーマンスに日々連動する有名な2つの指数が算出されている。

ナスダック総合株価指数は、投信、優先株、デリバティブを除く、ナスダック証券取引所に上場しているすべての証券に基本的に連動する。ナスダック総合株価指数はハイテク株のウェイトが高いため、この指数はハイテクセクターの指標となっている。

これよりも小規模なナスダック100株価指数は、ナスダック市場で取引されている上位100銘柄で構成される。その6割がハイテクセクターの企業だ。

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出所:ナスダック、2022年7月現在のデータ

この2つの指数のうち、影響力が大きいのがナスダック総合株価指数だ。ニュースなどで「ナスダックが5ポイント上昇して引けた」などと言う場合は通常こちらを指している。

広く市場が注目しているのがナスダック総合株価指数なら、先物やオプション、上場投資信託に関心のあるトレーダーや投資家が注視しているのがナスダック100株価指数だ。

ナスダック指数の日次平均を計算する

ナスダック総合株価指数とナスダック100株価指数はどちらも、各株式の終値に発行済み株式数を掛け合わせて時価総額を算出する修正時価総額加重方式を採用している。

各証券の時価総額を、指数に組み入れられている全銘柄の合計時価総額で割って、株式のウェイトを計算する。次に、各株式のウェイトと株式の終値を掛け合わせ、その合計値を、株式分割や合併、その他コーポレートアクションなどの市場変動を考慮した除数で割る。こうやって、その日のナスダック指数平均が算出される。

ナスダック指数のパフォーマンス

長期的に、ナスダック市場はより広範な株式市場よりも高いパフォーマンスを上げる傾向にある。ナスダック指数——特にナスダック100株価指数——は歴史的に、大型株に連動するS&P500種株価指数と、米国の代表的な30銘柄で構成されるダウ工業株30種平均という2つの株式市場全体を代表する指数をアウトパフォームしてきた。

例えば、2022年7月までの5年間にS&P500種株価指数は約60%、ダウ工業株30種平均は約46%上昇した。一方、同期間のナスダック総合株価指数の上昇率は88%、ナスダック100株価指数に至っては113%だった。

それはなぜか? ナスダック指数はどちらもハイテク、消費サービス、ヘルスケアといった、いずれも近年最もパフォーマンスが高い業種の比率が高いからだ。

だが、ナスダック株は変動率が大きいことも覚えておいてほしい。つまり、相場の下降局面では、より早く、より激しく下落しうるのだ。米国株式が弱気相場入りするときに、ナスダック総合株価指数とナスダック100株価指数がそろって真っ先に下落した2022年上期がそれだ。

ナスダック株への投資方法

個別銘柄を購入して、自分でナスダック100株価指数やナスダック総合株価指数に似たポートフォリオを構築する試みは今に始まったことではない。だが、市場の指数に連動するインデックスファンドに投資する方が効率的だろう。必然的にこうしたファンドの多くはナスダック市場で取引される。

  • ナスダックのインデックスファンドで最も人気がある銘柄の1つが、ナスダック100株価指数に連動するインベスコQQQトラスト・シリーズ(QQQ)というETFだ。
  • ナスダックの構成銘柄全体に投資をしたい人には、フィデリティが運用するナスダック・コンポジット・インデックス(ONEQ)というETFの受けが良い。
  • 投信の方が良ければ、フィデリティ・ナスダック・コンポジット・インデックス・ファンド(FNCMX)は実績ある商品だ。

また、ナスダックは取引所だけで上場企業でもあるので、ナスダック・インク(NDAQ)という会社にも投資できる。ただしこの場合、ナスダックに上場している株式ではなく、ナスダックという会社自体に投資していることをお忘れなく。

金融面での重要性

初の電子取引所として歴史を変えたナスダックは今日、世界第2位の主要株式市場として、ハイテク株や高成長株の市場動向を表している。こうした企業に投資する人は、ナスダックとその指数から目が離せない。

グロース株の比率が高いナスダック指数は、他の指数を上回るパフォーマンスを上げてきた。ナスダックに連動する投信やETFは、投資家がリスクを抑えてながらこうした優れたパフォーマンスを享受できる、簡単で効率的な方法なのだ。

[原文:The Nasdaq is an electronic stock exchange where some of the fastest-growing, most innovative companies trade

(翻訳・中山桂、編集・長田真)

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