ひと口に「テクノロジー業界」と言っても、報酬額には総統な格差が。スキルごとの差はこの数カ月間でますます広がっているようです。
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パンデミックのさなか、テクノロジー関連企業の報酬額は過去最高を更新し、とりわけ巨大テック企業は株価の記録的上昇と需要の急増を経験した。
しかし、その時期は長くは続かなかった。市場は報酬額も含めてすでに下降基調をたどっている。
とは言え、そうした苦しい状況のもとでも、他より高い報酬を得られるスキルはまだ間違いなく存在する。
テクノロジー専門の調査コンサル会社フット・パートナーズ(Foote Partners)の最新レポートによれば、マネジメント、プロジェクトマネジメント、システムオペレーションなどのスキルには依然として需要があり、その平均報酬額は過去3カ月間、いくらか上昇しているという。
一方、テクノロジー関連企業の中でも一般的なスキルで対応できるポジションの半分以上は、雇用規模の縮小、雇用凍結、あるいはレイオフ(一時解雇)の広がりを受けて、過去3カ月間の平均報酬額が減少したという。
フット・パートナーズは、特定の認定スキルを保有する従業員および非認定スキルのみの従業員について、2022年の(7月1日までの)平均報酬額の変化率を分析したところ、分析対象となったスキルの半数以上で過去3カ月間で報酬額の減少が確認され、そのほぼすべてが2021年通年についても平均報酬額が減少していたと判明した。
具体的には、例えばウェブおよびEコマース開発、メッセージング、コミュニケーション、サイバーセキュリティ、アプリ開発に関するスキルを保有する従業員の報酬額は、過去3カ月間で減少が確認された。
メッセージングとコミュニケーションに関するスキル保有者の報酬額は過去1年間で(他のスキル保有者に比べて)最大の減少幅を記録、マイナス約17%だった。その次に減少幅が大きかったのはウェブ開発のスキル保有者で、マイナス12%超だった。
この3カ月間に報酬額が減少したスキルの多くは「認定」スキル、要するに学校や訓練教育プログラムを通じて獲得できるスキルだった。
一方、フット・パートナーズのデータで分析対象となったスキルの半数は「非認定」、つまり実務を通じて獲得したスキル。実のところ、同社がこれまで蓄積してきた過去数十年にわたるデータによれば、非認定スキルのほうがより高く評価され、より高い報酬を得られることがすでに明らかになっている。
下の【図表1】は、テクノロジー関連スキルの市場価値について、過去3カ月間および過去1年間の変化率を示したものだ。
【図表1】テクノロジー関連スキルの市場価値の変化。左は2022年3月〜6月(3カ月分)の変化率、右は2021年6月〜22年6月(1年分)の変化率。画像をクリックすると拡大表示されます。
出所:フットパートナーズ(Foote Partners LLC)資料よりInsider編集部(Andy Kiersz)作成
フットパートナーズ共同創業者兼チーフアナリストのデイビッド・フットによれば、テクノロジー業界の従業員満足度は低下し続けているものの、報酬額(の低下)は従業員の心理に影響を及ぼす数ある要素の一つにすぎないと指摘する。
「雇用する企業側に話を聞くと、いまも昔も同じで、従業員が幸福でないと感じるのは報酬が不十分だからだと考えていることがよく分かります。しかし、従業員側に話を聞くと、それはまったくの勘違いなのです」
従業員の満足度は、たいてい以下の3つに由来するとフットは語る。
「仕事への愛着、上司からの評価、組織(会社)からの評価、それに尽きます」
上司や組織から「評価」されていると感じる従業員が、必ずしも高い報酬を受けとっているわけではない。
いずれにしても、大企業には特に言えることだが、従業員の要望にすぐさま反応して変化できないのが会社組織というものだと、フットは指摘する。
(翻訳・編集:川村力)