困窮家庭支援を行うNPO団体の最新の調査では、長引くコロナ禍と物価高の深刻な影響が浮かび上がった(写真はイメージです)。
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困窮家庭の学習・居場所支援を行う認定NPO法人キッズドアが、長期化するコロナ禍と物価高騰が与える子育て家庭への影響を調査した。食事の質が落ちた、衣料品が買えない、猛暑でエアコンをつけたいが電気代が心配……。
そんな声も上がる中、国が推進する小中学生向けのデジタル施策も不安の種になっている。
コロナ×夏休み×物価高の三重苦
会見を行うNPO法人キッズドアの渡辺由美子理事長(左)。
出典:会見のYouTube動画より
認定NPO法人キッズドアは同団体から食料支援を受けた全国の家庭(母子世帯87%、2021年の年間世帯所得200万円未満が約6割を占める)に2022年7月にアンケート調査を実施。そこで得た2084件の回答を元に8日、厚生労働省(東京・霞が関)で会見を開いた。
同団体によると、夏休みは給食がないため、新学期に痩せて登校する児童生徒がかねてより社会問題となっていた。今年はさらに物価の高騰が加わり、子育て困窮家庭はかつてないほど深刻な状況にあるという。
以下はアンケートに届いた自由記述の一部だ。
「収入は増えないのに物価はどんどん上がっていくので、食事の質がかなり落ちた。衣料品は全く買えない。子どもは高校2年生だが、費用的に修学旅行も行けない」
「夏休み中、仕事で自分が居ない時間帯に窓を開けた時の防犯面での不安と、熱中症の心配もあるためエアコンを使用したいが、電気代が怖いので悩み中」
「食品や日用品まで値上がりしてしまい、全てにおいて購入をためらう事が増えた。特に成長期の小学生の娘の下着や靴などの購入に困っており、生理用品の購入も負担になっている」
電気代の支援、物価高騰を補填する給付金、生理の貧困対策を求める声が多数見られた。
家庭のデジタル環境が学力を左右
デジタル格差が広がらないよう、サポートが必要だ(写真はイメージです)。
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デジタル格差も問題だ。文部科学省は国公私立の小中学校などで児童生徒1人につき1台のパソコン(PC)やタブレットなどデジタル端末を配る「GIGAスクール構想」を立ち上げている。
今回キッズドアが調査した家庭の子どもは小学生が56%、中学生が38%とまさにその対象だが、「家にPC(インターネットに接続できる状態のもの)はない」と回答した家庭が46%と約半数を占めた。
家庭のインターネット回線は「容量制限なし」59%、「容量制限あり」30%と何らかのネット環境がある家庭が多いものの、「ない」という世帯も11%いた。
キッズドアの渡辺由美子理事長は言う。
「GIGAスクール構想の普及により、パソコンやインターネットを使った宿題が出ることも増えてきました。家庭に十分なデジタル環境があるかどうかが、子どもの学力を左右する時代となったといえます。
しかし、食事の心配をする家庭にPCを買う余裕はありません。PCがないため、課題ができない、インターネット上の模擬試験を受けなさいと学校に言われたが受けられない、などの声を聞いています。
子どもを持つ全ての家庭に、子どもが自由に使える1台のパソコンと十分なインターネット回線を支 援するための施策をお願いしたいです」
GIGAスクール構想で貸与される端末の家への持ち帰り学習について、平常時も実施している全国の公立の小中学校等は26.1%のみ。半数の51.8%は準備中で、22.1%は実施も準備もしていない(文科省「端末利活用状況等の実態調査」2021年7月)。
一方、臨時休校などの非常時では95.2%が持ち帰りの「準備済み」と回答している(2022年1月、文科省調べ)。「準備中」と回答した学校は、端末の持ち帰りについて「保護者の理解が得られていない」「教育委員会のサポートが十分でない」などを理由としてあげた。
また、同省はWiFi環境が整っていない家庭への環境整備の費用として、2020年度の補正予算で147億円を計上しており、前出の調査で端末持ち帰りについて準備済みの学校では、7割超がルーターなどの貸し出しができる状況だ。
国は引き続き環境整備に努め、デジタル推進施策がさらなる格差を生まぬよう留意して欲しい。
(文・竹下郁子)