ホリー・エンジェルさんのバーンドミニアム。
Holly Angel
- アメリカでは「バーンドミニアム(Barndominium)」が増えつつある。
- ファームハウス風のこうした家には、1つ屋根の下に生活エリアとガレージ、仕事場などが集まっている。
- 経済的な要因やファームハウス暮らしへの関心が流行に貢献している。
コリーン・ロバーツさんと夫のミッチさんは数年前、ミズーリ州にある友人のバーンドミニアムで7月4日の独立記念日を祝った。その直後、コリーンさんの夫は自分たちのバーンドミニアム —— 農場にある納屋のような家 —— が欲しいと言った。
「わたしは『絶対ダメ』と言ったんです」とロバーツさんはInsiderに語った。
「でも、中を見て回ったらその素晴らしさに気付いたんです」
子どもが2人できた後、ロバーツさん夫妻にチャンスが訪れた。自宅が手狭になり、夫妻は広々とした、手頃な値段かつ最低限の修繕で済む家を探していた。
一般的な家とバーンドミニアムにかかる費用を比べると、悩むまでもなかった。
コリーン・ロバーツさんと家族。
Roberts Farmstead
「40万ドル(約5400万円)かかりませんでした。土地はすでに持っていたのでここには含まれません」と土木技師のロバーツさんは建設費についてInsiderに語った。多くのバーンドミニアム好きの人々同様、ロバーツさん夫妻も自分たちで建設工程を監督した。
引っ越して2年、ロバーツさん夫妻のバーンドミニアムはまさに"望み通りの家"だ。連棟のガレージはパーティを開いたり、家を離れることなくDIYのプロジェクトに取り組んだりできるスペースを与えてくれた。2人の娘たちが自転車に乗れるスペースまである。
「小さなガレージにはもう戻れません。前の家はれんが造りの家で、今の家の3分の1くらいの広さでした。水道光熱費は同じか安いかです」とロバーツさんは話している。
「簡単ではありませんでしたが、もう一度やってもいいですね」
ロバーツさん一家のバーンドミニアム。
Roberts Farmstead
バーンドミニアムへの関心が急上昇
「バーンドミニアム」とは一般的に、1つ屋根の下に生活エリアとガレージ、仕事場などが集まっている大きな鉄骨の建物のことだ。外側は伝統的な納屋のように見えることが多い。ただ、内側は自由な間取りで、設備や装飾は普通の家と変わらない。
「もともとは実用的かつ手頃な価格のソリューションとして始まりました。プレハブ構造を採用し、質素な生活と仕事の空間として使われています」と不動産情報プラットフォームRealtor.comのシニアエディター、エリック・ガンサー(Eric Gunther)氏はInsiderに語った。
「広い土地、さまざまな設備、馬などを持つオーナーにとって、全てが1つ屋根の下に揃うというのは魅力的です」
家のリフォームをテーマにヒットしたHGTVの番組『Fixer Upper』も、バーンドミニアム人気に貢献しているという。
「納屋をリビングに生まれ変わらせるというアイデア自体はこの番組の前からあったのですが、この番組はファームハウスの暮らしを主流なアイデアにする役に立ちました」とガンサー氏は指摘している。
ロバーツさん一家のバーンドミニアム。
Roberts Farmstead
バーンドミニアムへの関心は、コロナ禍で高まり始めた。グーグルトレンドのデータは「バーンドミニアム」の検索が2020年の初めから増加していることを示している。
「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が流行り始めてからは特に、バーンドミニアムへの関心が急上昇しました」とバーンドミニアム関連の情報サイト『Barndominium Life』を運営しているドン・ハウ(Don Howe)氏は話している。
また、Insiderが入手したRealtor.comのデータによると、同サイトでは「バーンドミニアム」に言及する物件の数が2020年よりも増えていることも分かった。例えば、2020年7月11日の週に「バーンドミニアム」に言及していた物件数は774件だったのに対し、2022年7月9日の週は1845件だった。その多くはアメリカ中部にあり、7月9日の週の「バーンドミニアム」に言及した物件の58%はテキサス州だった。
バーンドミニアムのトレンドは時間とともに進化しているとハウ氏は言う —— 既存の納屋を改築してバーンドミニアムにする人もいるが、ゼロからバーンドミニアムを建てる人が増えている。
田舎に鉄骨の家を建てる
ステイシー・リン・ベルさんと夫のオリバーさんが初めて森の中に納屋を建てようとした時、2人は最後までやり遂げることができなかった。それから25年後、ベルさん夫妻はもう一度チャレンジすることにした。
「ずっとやりたかったんので、進めるべきだと思いました」とベルさんはInsiderに語った。夫妻は今回は「木」ではなく、「鉄骨」を使うことにした。
「夫が『君が職人になるべきだ』と言って、翌朝目覚めたら、わたしはバーンドミニアム職人ステイシー・リンになっていました」
ステイシー・リン・ベルさん。
Our Barndominium Life
ベルさんがデザインと建設の責任者になって、夫妻は2年をかけてテキサス州に鉄骨のバーンドミニアムを建てた。
完成したバーンドミニアムの写真をソーシャルメディアに投稿すると、ベルさん夫妻にデザインを依頼する人たちが現れた。2020年、夫妻は「Our Barndominium Life」というビジネスを立ち上げ、バーンドミニアムを建てる際に助言をしたり、内装デザインのコンサルティングを請け負うようになった。
Our Barndominium Lifeが手掛けた「クリーク・ハウス」。
Our Barndominium Life
「コロナ禍でもう少し余裕のある部屋、もう少し広々とした家を求める人が増えました」とベルさんは話している。通信会社も高速インターネットのサービスを向上させたり、携帯電話の通信エリアを拡充し始めたことで、リモートワークが可能になり、「人々が都会を後にし、田舎へ移る動きが出てきました」とベルさんは語った。
自身の顧客の大半は50代か60代だろうとベルさんは見ているものの、実際はもっと若い世代がバーンドミニアムを求めているという。
「28~35歳くらいの年齢層が恐らく市場の25%を占めています」とベルさんは言う。
「多くの若い人たちが自分たちのライフスタイルを変え、もう少し広い土地で子どもたちとアウトドアを楽しもうとしているのは、本当に素晴らしいことです」
クリーク・ハウス。
Our Barndominium Life
バーンドミニアムのオーナーの中には、新型コロナウイルスのパンデミックがきっかけでこうしたライフスタイルに変えた人もいれば、パンデミックとは関係なく、もともとそうした暮らしをしてきた人たちもいる。
「わたしたちはこれが流行りだなんて知らなかったんです。2人とも35年くらいこういう生活をしてきたので」とInsiderに語ったのは、ミズーリ州在住のホリー・エンジェルさんだ。
「若い頃、うちの両親の友人がバーンドミニアムを持っていたんですが、当時はバーンハウス(納屋)と呼ばれていただけで、わたしは昔からこうした家が大好きだったんです」
エンジェルさんと家族。
Holly Angel
エンジェルさんと夫は家族が所有する土地に寝室3つ、バスルーム2つのバーンドミニアムを建てるために、2020年に自宅を売却した。家の骨組みを建てるのと電気工事、配管工事は専門の業者を雇った。
「その他の飾り付け、塗装、タイル貼り、ドアの取り付け、照明などは全て自分たちでやりました」とエンジェルさんは語った。さまざまな作業を自分たちでやることで7万5000~10万ドル(1000~1400万円)の節約になったといい、トータルでは約21万5000ドルでバーンドミニアムを建てたという。
エンジェルさん一家のバーンドミニアム。
Holly Angel
"外"は節約
コロナ禍という要素以外にも、バーンドミニアム人気の上昇は複数のトレンドが混ざり合った結果だとRealtor.comのシニアエコノミストで経済調査の責任者でもあるジョージ・ラティウ(George Ratiu)氏はInsiderに語っている。
「ここ数年は特に、買い手はより広いスペースを求めています」とラティウ氏は話した。
「その一方で、住宅価格の高騰によって、多くのアメリカ人はより安い選択肢を求めています」
ゼロからバーンドミニアムを建てたり、既存の納屋を生活空間に変えるための費用は、一般的に新しい家を建てるよりも安いとラティウ氏は言う。
ただ、サプライチェーンの問題や人手不足の影響で、その差はかつてほど大きくないかもしれないとベルさんは話している。
「バーンドミニアム人気とパンデミックの影響で、今はバーンドミニアムの外側は節約して、中に入ると普通の家とほとんど変わらないような形になっています」
クリーク・ハウス。
Our Barndominium Life
バーンドミニアムという住宅スタイルが広く受け入れられたのは、人々が望む生活が変化したからだとベルさんは見ている。
人々はもっとリラックスできる生活を求めていて、バーンドミニアムの暮らしはガーデニングを始めたり、鶏を育てたりできるだけのスペースを与えてくれるという。
「建物の種類というだけではないんです。ライフスタイルでもあるのです」
「それに鉄骨はセクシーだと思いますよ」
(翻訳、編集:山口佳美)
注:この記事のリンクを経由して製品を購入すると、アフィリエイト契約により編集部が一定割合の利益を得ます。