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子ども向け「金融教育」、いま求められる本当の理由とは? ポイント解説

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労働所得だけでは今後、「生涯コストを賄えない」かもしれない。

milatas/Shutterstock

  • 三菱UFJ銀行とSTOCK POINTが、投資の基本を学ぶ金融教育イベントを共催。
  • そこで語られた、子ども向けの金融教育が今求められる理由は、あまり楽観的とはいえない未来予測にあった。
  • 今後、給与額の向上が期待できないなか、生涯コストを賄うために高い金融リテラシーが求められている。

成人年齢が18歳に引き下げられ、より若い世代が金銭トラブルに巻き込まれるのを防ぐ。人生100年時代に、高い金融リテラシーのもと早期から自分の将来を考えさせる——。

こうした目的で今年4月から、高等学校で資産形成に関する授業が導入された。しかし、当の小中高生たちは「金融教育」の必要性をいまいち感じていないのではないか?

三菱UFJ銀行とポイント運用サービスを提供するSTOCK POINTは7月27日、小学生親子30組を招待し、投資の基本を学ぶ金融教育イベントを共同で開催

ここで語られた、子ども向けの金融教育が今求められる本当の理由とは? ポイント解説していく。

一人の一生には、約1億5000万円程度のコストがかかる

まず前提として、人一人が生きていくためには、最低でも約1億5000万円程度のコストがかかると、三菱UFJ銀行デジタルサービス企画部調査役の柳島千花氏は語る。これは状況により大きく異なってくるものの、基本的な根拠は次のとおりだ。

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出典:[教育費用]文部科学省「平成30年度子どもの学習費調査」独立行政法人日本学生支援機構「令和2年度学生生活調査」/[住宅費用]住宅金融支援機構「令和2度フラット35利用者調査」/[老後費用]公益社団法人生命保険文化センター令和元年度「生活保障に関する調査」「老後の最低日常生活費」「ゆとりある老後生活費」より三菱UFJ銀行作成/[図版]三菱UFJ銀行作成の資料を元にBUSINESS INSIDER JAPAN編集部が作成

これらの3点を合算すると、約1億4570万円(およそ1.5億円)という金額になる。なおこの試算には、その他の食費や被服費、娯楽費、光熱費などは含まれていない。それらも全てひっくるめると、実質、最低2億円弱が人一人の生涯コストとなりそうだ。柳島氏は続ける。

「お金は人生の目的にするものではないが、安心して長生きするために必要なものだ」

しかし、労働所得だけでは今後「生涯コストを賄えない」可能性も

人一人の生涯コストを最低1億5000万から2億円とするならば、それを工面する方法として最も一般的なのが労働所得だろう。

だが悲しいことに、1世帯あたりの平均所得額は年々減ってきていると、柳島氏は厚生労働省によるデータ「各種世帯の所得等の状況」を示す。

平均所得額

出典:厚生労働省 各種世帯の所得等の状況

それによると、日本国民における全世帯の平均所得金額(年次)は1994年に664.2万円でピークを迎え、そこから継続的に漸減。2018年には552.3万円まで落ち込んでいる。

仮に2018年の年収レベルのままで40年間働いたとしても、手にできる所得総額は2億2000万円程度。しかし、社会情勢を鑑みても、年収レベルをこのまま維持できるという楽観的な見方はできない。

「ちょっと心苦しいのだが、頑張って働いても、もらえるお金というのはどうやら増えなさそうだ」と、柳島氏は苦言を呈する。つまり、今後“人一人の生涯コストは労働所得だけでは賄えない可能性が高い”という、子どもたちには厳しい現実が見えてくる。

しかも、日本の家庭は欧米に比べ「資産の増やし方」が下手

さらに日本の各家庭の総資産も過去20年、ほとんど増えていない。

FRB(連邦準備制度理事会)、BOE(イングランド銀行)、日本銀行のデータをもとに金融庁が作成した各国の家計金融資産額の推移を示すグラフが、それを如実に表していると柳島氏は説明する。

家計金融資産

このグラフによると、1998年から2018年までの20年間で家計金融資産は、アメリカで2.7倍、イギリスで2.3倍に増加。だが、日本はわずか1.4倍にしかなっていない。

「どの国も労働が主な収入源であるのは変わらないのに、なぜか他の国と比べて、日本の家計金融資産額はほとんど変わらない。その背景には、運用リターンが関係している」と、柳島氏は補足する。

金融庁作成グラフによると、この20年で家計金融資産に含まれる運用リターンはアメリカで2.0倍、イギリスで1.6倍に増加。それに対して日本では1.2倍に留まっている。つまり、欧米では投資が各家庭における総資産倍増に大きく寄与しているのだ。

家計金融資産を増やすには、「投資の力」にも気付く必要がある

加えて柳島氏は、日本銀行調査統計局が作成した各国の家庭が保有する資産構成比についても言及。このデータによると日本は預金、アメリカは投資に大きく偏っていることが分かる。

家計資産構成

預金に関して言うと、日本の家庭は54.3%を預金で持っている。対してアメリカの家庭は13.3%程度。その一方、投資については日本の家庭は15.7%。それに対してアメリカの家庭は55.2%も割り振っている。

預金の場合、金利が0.001%とすると、10万円を5年間預けても10万5円にしかならない。投資の場合、10万円を一括投資で5年間運用し、年利3%とした場合、最終的には複利も効いて、11万5903円程度になる可能性が高い。

「預金の場合、金利は少ないが『元本割れしない』という銀行との信頼のもとに行われている。投資の場合、収益は大きいが、『元本割れする』という可能性も残されている。だからバランスを考えて、それぞれへ適切に割り振ることで最終的により大きな資産を形成できる」と三菱UFJ銀行デジタルサービス企画部 企画Gr次長の田中誉俊氏も語る。

投資で成果を出すには、子どもの頃から時間をかけてコツコツと

投資の原則は、①分けて持つ(分散)、②時間をかけてゆっくり(長期投資)、③コツコツ積み立てる(積立)だ。どれもリスクを軽減する手堅い戦略だが、特に②と③は子どもたちだけに与えられたアドバンテージとなる。そう柳島氏は指摘し、次のように続けた。

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三菱UFJ銀行作成の資料を元にBusiness Insider Japan編集部が作成

「例えば1440万円という金額を年利3%で、子どもの頃から月々3万円ずつ積み立てて40年間運用するのと、大人になるまでに蓄財して一括投資で10年間運用するのとでは、複利の効果で利益は倍以上異なる。単純計算で前者は1274万円の利益を産み、後者は495万円の利益にしかならない」

柳島氏が最後に参照した日本証券経済研究所「株式投資収益率2012年」によると、運用期間別の投資収益率は、運用開始後26年を経過すると、ほぼ元本割れを起こすリスクがなくなる。それ以降は、間違いなく収益を得られるようになり、さらに時間の経過とともに収益率は上がっていくことを示している。

「だから投資というのは、若いうちから早めにコツコツと始めると良い」と、柳島氏は締めくくる。「そうすることで、後になってより大きな運用の効果を得られることになるのだから」

(文・長田真)

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