ロボアドバイザーが合う人、合わない人……メリット・デメリットから考える

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ロボアドバイザーは、手数料や残高を最小限に抑えられるため、気軽に投資できる。

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  • ロボアドバイザーは、コンピューターアルゴリズムを利用して投資ポートフォリオを構築・運用するサービスで、人間の介入や接触はほとんど不要だ。
  • ロボアドバイザーのポートフォリオは、顧客の投資目標やリスク許容度に基づいて構築される。
  • 初心者やおまかせ運用を求める投資家に適しているが、自分でポートフォリオを管理したい投資家や、カスタマイズの投資助言を求める投資家には向かない。

ロボアドバイザーは、金融ポートフォリオの構築・維持に使われる自動取引投資プラットフォームだ。プロの資産運用が個人でもできるツールとして、2008年に初めて市場に登場した。

ロボアドバイザーの人気が高まったのは、運用の専門家を介せず(そしてその手数料を払わず)、シンプルで費用効果の高い投資方法をユーザーに提供したからだ(人間のアドバイザーがサービスを補完することもある)。こうした自動運用に対する信頼感は世代によって違う。ミレニアル世代やZ世代の投資家は、ベビーブーマー世代やX世代よりもロボアドバイザーに対する抵抗感ははるかに少ないだろう

手数料が低く、少額からスタートできるロボアドバイザーは、新たな層に投資の門戸を広げている。だが、このサービスが自分に本当に合っているのか、詳しく見てみよう。

ロボアドバイザーとは何か?

人工知能(AI)を駆使したロボアドバイザーは、アルゴリズムを活用して投資家それぞれに合った資産を選び、投資ポートフォリオを自動で管理する。こうしたアルゴリズムは、ハリー・マーコウィッツ(Harry Markowitz)の現代ポートフォリオ理論(MPT:リスクを許容水準に抑えつつ、リターンを最大化する投資の選択方法を説明した理論)など、さまざまなロジックに基づいている。

プロのトレーダーや投資マネージャー、ブローカーは実際に1980年代からロボアドバイザーの技術を活用しているが、このサービスが個人向けに直接売り出されたのはここ数年のことだ。金融アドバイスを提供する企業ベターメント(Betterment)が、2008年に個人投資家向けロボアドバイザーを販売したのが始まりである。同社の顧客は現在約70万人、運用資産残高はおよそ320億ドル(約4.2兆円)に上る。

今日のロボアドバイザーは大きく2つに分けられる。新興企業のベターメントやウェルスフロント(Wealthfront)などによる、全てオンライン上で完結するものと、モルガン・スタンレー(Morgan Stanley)やチャールズ・シュワブ(Charles Schwab)など従来の証券会社や金融サービス会社が提供するサービスだ。伝統的な企業は富裕層向けにロボアドバイザーを提供する傾向があり、最低金額も手数料も新興企業より高いが、人間のアドバイザーによるサービスを受けられるサービスもある。

また、社会的責任投資(SRI)などより特化したサービスを提供するものや、値下がりした株式を売って損失を計上し、それをキャピタルゲインや他の収入と相殺して節税するロボアドバイザーもある。

ロボアドバイザーの仕組み

ロボアドバイザーを始めるのは簡単だ。自分に合ったロボアドバイザーを見つけたら、リスク許容度、資産運用の目的、その他投資に関連する質問に答える。基本的な質問だけの場合もあれば、より詳しく質問して、顧客の具体的な資産ニーズを見極めたアドバイスを提供する業者もある。

TDアメリトレード(TD Ameritrade)の投資商品・ガイダンス部門のディレクター、キース・デナーステイン(Keith Denerstein)氏によると、投資家は、自分のリスク許容度、投資期間、投資目的についての情報を提供する。すると、その情報に基づいて、たいていは低コストの上場投資信託(ETF)で構成されるポートフォリオを勧められる。ロボアドバイザーはこうしたETFで資産を運用し、必要に応じてリバランスを行う。

ロボアドバイザーは、各資産について一定の割合を決めてポートフォリオを管理する。例えば、ポートフォリオの20%をバンガードS&P500ETFに配分したとしよう。すると、ロボアドバイザーは上下5%の間でポジションを調整できるようにしておく。つまり、ポジションが15%以下になれば買い増し、25%以上に上昇したら売却するのだ。

「ここ数年で、包括的な意味でのロボアドバイザーという言葉は時代遅れになりつつある。代わって、デジタルウェルスサービス、自動アドバイス、ハイブリッドアドバイザー、バイオニック(人工)アドバイザーといった運用実態をより正確に表す具体的な名称が使われるようになっている」と言うのは、ビヘイビア・コンサルティング(Behavior Consulting Limited)のコンサルティングディレクターで、デジタルアドバイス業界の専門家サイモン・ビュシー(Simon Bussy)氏だ。

ロボアドバイザーのコスト

一般的にロボアドバイザーの経費率は低い。デナーステイン氏によると、平均的なロボアドバイザー業者の運用手数料は、年間0.50%未満である。

例えば、TDアメリトレードが提供するエッセンシャル・ポートフォリオ・ロボアドバイザー(Essential Portfolios robo-advisor)の手数料は0.30%だ。バンガードのデジタルアドバイザー(Digital Advisor)では、投資額が3000ドル(約40万円)ごとに年間4.50ドル(約600円)の手数料がかかる。こうした手数料はポートフォリオの大きさによって変わることが多い。バンガードが提供する、ロボ運用と人による助言を組み合わせた高級サービスのパーソナルアドバイザーサービス(Personal Advisor Services)では、ポートフォリオの金額に応じた変動手数料制が採用されている。

  • 2万5000ドル(約333万円)以上500万ドル未満:ポートフォリオの30%
  • 500万ドル(約6億7000万円)以上1000万ドル未満:ポートフォリオの20%
  • 1000万ドル(約13億円)以上2500万ドル未満:ポートフォリオの10%
  • 2500万ドル(約33億円)以上:ポートフォリオの5%

取引ごとに「経費」、つまり取引手数料がかかる業者もある。また、投資先のファンドでも手数料がかかるが、これも経費率が上がる要因だ。

とはいえ、ロボアドバイザーの全体的なコストは通常、運用資産残高(AUM)の1%にも満たない。

ロボアドバイザーはどうやって利益を上げるのか?

ロボアドバイザーの手数料は低いため、別の収益源で利益を上げるようになってきている。英国のウェルシファイ(Wealthify)やミュンヘンに拠点を置くスケーラブル(Scalable)などは、自社の技術を他の資産運用会社や金融プロフェッショナルに販売している。

また、ポートフォリオ運用にとどまらず、高利回りの預金商品を提供するなど銀行サービスに乗り出す業者もある。顧客の余剰資金をこうしたサービスに誘導し、新たな顧客を呼び込むのがその狙いだ。

また、自動サービスと人によるサービスを組み合わせたハイブリッドモデルを販売するロボアドバイザーもある。その場合、人によるアドバイスが増えるほど、コストは高くなる。

例えば、大手証券会社のメリルリンチ(Merrill Lynch)では、段階的な投資運用サービスを提供している。基本商品は、全自動運用のメリル・エッジ・セルフ・ダイレクティッド・インベストメント(Merrill Lynch Self-Directed Investment)で、最低金額は決まっていない。その次が、最低金額が5000ドル(約67万円)のオンラインによるガイデッドインベスティング(Guided Investing)で、リアルタイムで有人のカスタマーサービスを利用できる。最上位のガイデッドインベスティングは最低金額が2万ドル(約267万円)からだが、ロボアドバイザーと担当アドバイザーによるポートフォリオ運用や助言が受けられる。

ロボアドバイザーは価値あるサービスか?

ロボ運用では、かなりの妥協も強いられる。ロボアドバイザーの最大の売りは完全な自動運用であり、投資についてあれこれ考える必要がないことだ。だが裏を返せば、ある株式を買いたいと思っても、投資家は自由に売買できずがっかりするかもしれない。

またロボアドバイザーの手数料は、人間の投資アドバイザーよりも安い。コンサルティング会社のデロイト(Deloitte)がロボアドバイザー業者100社を対象に行った調査によると、年間手数料は投資ポートフォリオの0.02%~1%だったのに対して、伝統的なウェルスマネジメントは2~3%だった。だが、こうした低い手数料にはある程度の代償を伴う。例えば、ロボアドバイザーのポートフォリオでは、自分だけに合ったアドバイスをあまり受けられない。ロボアドバイザーは、アンケート結果に合わせてすでに出来上がったポートフォリオモデルのどれかに押し込むことが多いからだ。

実のところ、ロボアドバイザーは投資アドバイスというよりも投資ツールにすぎない。投資アドバイザーやファイナンシャルプランナーのような、包括的な金融アドバイスは提供できないからだ。だからこそ、「ウェルスマネージャーやファイナンシャルプランナーが『自分たちはロボットに取って代わられることはない。ロボットは全体像を理解して、多彩なアドバイスを提供できるほど高機能ではない』と主張する」と、ビュシー氏は言う。

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ロボアドバイザーのメリット

ポートフォリオの投資や管理にロボアドバイザーを利用する主なメリットを、順番に見ていこう。

1. 人間のアドバイザーと比べて割安

大半(または全ての)の投資プロセスを自動で行い、費用が少額で済むことから、一般的に人間のアドバイザーよりもかなりコストが低い。年間手数料はポートフォリオの0.02~1%なのに対して、伝統的なウェルスマネージャーの手数料は2~3%だ(前述のデロイトの調査による)。

2. 少額から投資可能

通常、ロボアドバイザーの最低金額は、伝統的な証券会社や投資マネージャーよりも低い。例えばベターメントの最低金額はゼロ、ウェルスフロントは500ドル(約6万7000円)である。対してモルガン・スタンレーのロボアドバイザー運用は5000ドルからだ。

「ロボアドバイザーを利用する典型的な個人投資家は、従来の有人アドバイスよりもずっと低いコストで、プロのポートフォリオ運用ができる」と、デナーステイン氏は言う。

3. リサーチや管理が不要

ロボアドバイザーでは銘柄の選択や投資を自動で行うため、投資家がすることはほとんどない。株式市場、株価収益率(PER)、バランスシートなどの専門知識は不要で、まさに初心者やおまかせ運用を求める投資家を対象とした商品だ。

ロボアドバイザーのデメリット

同時に、自動運用にはデメリットもある。

1. 選択やコントロールの余地がほとんどない

ロボアドバイザーの投資先は、コストの低いETFやインデックスファンドが中心だ(これはコストを抑える1つの方法である)。だが、だいたいのロボアドバイザーでは、ユーザーがポートフォリオにどのファンドを組み入れるか選べないし、個別株や債券、オプションを組み込んだ商品、オルタナティブ商品にも投資できない。

2. ポートフォリオのカスタマイズが難しい

顧客にポートフォリオを選び推奨する際、ロボアドバイザーは一般的な基準を当てはめることが多い。通常、顧客がアンケートで回答した基本的なリスク許容度、所得状況、初期の投資目標に基づいて、すでに出来上がったモデルポートフォリオ(グロース、インカム、グロース+インカムなど)に顧客を押し込む。

3. アドバイザーと話せない

多くのロボアドバイザー、特にオンラインのみでサービスを提供する業者は、有人の電話サポートを提供していない。仮にあったとしても、カスタマーサービス担当者はシステムや手続についての応対が中心で、財務相談に乗ったり投資戦略を説明したりしない。

4. 金融アドバイスをあまり受けられない

退職金の計算など一般的なファイナンシャルプランニングツールをいくつか提供している場合もあるが、ロボアドバイザーはファイナンシャルプランナーではない。ただ投資をするだけだ。つまり、退職や教育のための貯蓄など長期的な金融プランやゴール、あるいは不測の資金ニーズが浮上したときに相談に乗ってくれるわけではない。

これこそまさに、ビュシー氏が言ったとおり、「ウェルスマネージャーやファイナンシャルプランナーが『自分たちはロボットに取って代わられることはない。ロボットは全体像を理解して、多彩なアドバイスを提供できるほど高機能ではない』と主張する」 理由なのだ。

まとめ

自分に合っているかどうかは別として、ロボアドバイザーは未来の投資の姿なのかもしれない。データ会社のスタティスタ(Statista)によると、ロボアドバイザーの運用資産残高は2017年の3000億ドル(約40兆円)から2020年には1兆600億ドル(約133兆円)に増加しており、2026年には3兆1300億ドル(約399兆円)に達すると予想する。

ロボアドバイザーはポートフォリオの大小を問わず、さまざまな投資家にサービスを提供できる。ビュシー氏は「コストがかからないロボアドバイザーは、初めて投資をする人の背中を押す一方、経験豊富な投資家にとってはコスト削減になる」と言う。投資アプリの登場も、ロボアドバイザーをますます身近なものにしている。

それでもロボアドバイザーが向いているのは、おまかせ運用を求める投資家や、慎重に少額投資から始めたい投資家であることに変わりはない。人によるサービスやカスタマイズ運用、資産分散、自信を持って自分で投資先を選ぶ投資家には、一般的に適さないサービスと言えるだろう。

[原文:Robo-advisors offer automated investing services at a low cost — here's how to tell if they're right for you

(翻訳・中山桂、編集・長田真)

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