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サイバー初任給42万の罠。入社・転職前に知っておきたい「給与ルール」を解説

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撮影:今村拓馬、横山耕太郎

初任給の大幅アップが話題になっている。

7月末にサイバーエージェントが2023年春の新卒入社の初任給を42万円に引き上げると発表した。

また、DMG森精機は8月4日、23年4月入社の新卒社員の初任給を大幅に引き上げると発表。大学学部卒の初任給は10%増の30万円、修士課程修了者は9%増の31万円に引き上げる。

初任給引き上げについては、バンダイが今年入社の初任給を29万円、「獺祭」で有名な旭酒造が30万円に引き上げたことも大きな話題になった。いずれの企業も最大の狙いは優秀な人材の獲得にある。

就活生や転職者にとって給与が高いのは魅力的だが、初任給の高さだけに目を奪われるのは禁物だ。

今回の記事では、企業によって違う給与の4タイプや、給与制度の3タイプについて、入社前に知っておくべきことを確認したい。

「5年後の給与」公開はほぼない

長い職業人生を考えると、いかに自分を成長させてくれるかという観点から企業を分析する必要があるだろう。

その会社の人材育成の仕組みや教育研修時間・期間、さらには入社後の配置やキャリアパスを知ることは重要だ。こうした情報を提供している企業は増えているので分析するリテラシーがあれば問題はないだろう。

問題は月給やボーナスなどの給与に関する情報だ。募集要項には初任給や諸手当しか記載していない企業が多い。

入社後、5年後、10年後に給与がどう変化していくのかを知りたいところだが、そうした情報を公開している企業はほとんどない。

賃金に関する情報が皆無ということは、逆に言えば初任給の高さだけを鵜呑みにしてはいけないということだ。

サイバーエージェントの「からくり」

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サイバーエージェントの募集要項。「固定残業代の相当時間」などが書かれており、残業代が含まれていることがわかる。

撮影:横山耕太郎

その典型はサイバーエージェントの初任給42万円だろう。

実はこの中には固定残業代が含まれていることがわかり、ネット上で大騒ぎになっているが、募集要項などをよく読むと一目瞭然だ。

たとえば同社のビジネスコースは「42万円/月(年俸制504万円)」とあり、月給制職種の場合は「固定残業代の相当時間:時間外80.0時間/月、深夜46.0時間/月」と書かれている。つまり残業代込みの月給であることがわかる。

一時期、固定残業代を基本給に組み入れて給与を実質的に引き下げるなど悪用するケースが社会問題になったが、今では基本給と固定残業代を分けて明示することが求められている。

年収に含まれる「残業代」

固定残業手当を導入する企業は増えている。

労務行政研究所の「人事労務諸制度の実施状況調査」(2022年2~5月)によると、「定額残業手当」を支給している企業は2013年には10.7%に過ぎなかったが、22年には23.3%に上昇している。従業員1000人以上の大企業でも2割に上る。

定額残業手当の残業時間数で最も多いのは30時間の37.7%、次いで20時間の14.8%、45時間の11.5%である。もちろんこの超過分の残業代は支払われる。

会社の平均残業時間を教えてもらうことも必要だが、基本給と定額残業手当がいくらなのか、残業時間がどのくらいなのかを推定するのも基本的なワークルールリテラシーといえるだろう。

給与から見る企業4タイプ

サラリーマンが歩いている写真

日本企業を4つに分けて考えてみる。

撮影:今村拓馬

働く側にとって最も把握が難しいのは、前述したように入社後3年後、5年後、10年後に給与がどう変化していくのかだ。

ただし、たとえ初任給が高くても給与が上がり続ける企業だけとは限らない。

日本の企業は以下の大きく4つのタイプに分かれる。

  • A. 大企業タイプ…20代の給与も比較的高く、勤続年数で給与が上がり続ける
  • B. ベンチャータイプ…20代の給与は最も高いが、30歳を過ぎると上がり方が抑制される
  • C. 中堅・中小タイプ…20代の給与は平均的だが、勤続年数によりで40歳以降も徐々に上がり続ける
  • D. 離職が目立つ企業タイプ…20代の給与は平均的だが、30歳以降の上がり幅が緩やかになる

生涯賃金が最も多いタイプAは、大企業・年功型に多い。業界トップクラスの大手メーカーやメガバンク、総合商社などだ。

タイプDは介護・保育業界など低賃金で離職率が高いと言われる業界に多い。タイプCは中堅・中小企業の年功型に多い。特に製造業に多いのが特徴だ。

タイプBは新興企業・成果型と呼べる。タイプBはIT系のベンチャー企業やゲーム業、不動産、流通業などサービス業に多いが、タイプAの歴史のある伝統的大企業と比べて、この20数年で大企業になったメガベンチャーもこの中に入る。

このタイプは経営者のメディアでの露出度が高く、20代の人にとっては就職・転職先として目移りしやすい企業でもある。給与については、もちろん一部のトップエリートは30代以降も大幅に上がるが、多くは30歳過ぎに頭打ちになる。生涯賃金ではタイプCの中堅・中小企業の年功型より低くなる場合もある。

賃金制度の3タイプ

一万円札の写真

給与体系は3つに分類できる。

撮影:今村拓馬

この分類だけでは大雑把すぎるだろう。4つのタイプを賃金制度面から見ると、以下の3種類に分かれる。

1…職能資格制度(職能給)。伝統的大企業に多い。求められる「職務遂行能力」を等級ごとに定義し、等級ごとに給与が決まる。

一律初任給を基本に生活保障給としての定期昇給と職能給によって毎年積み上がっていく。

本来、職能給は能力要件をクリアしないと昇給しないが、保有能力を客観的に測る指標がないために仕事の経験年数を重視しがちになり、年功的賃金になりやすく、降格による給与減も発生しにくい。

2…役割等級制度(役割給)。一般従業員・主任・係長・店長・課長クラスなど組織編成上の役割・責任を等級ごとに定義し、等級ごとに給与が決まる。

役割・責任を果たしていないと評価されると降格も発生する。

3…職務等級制度(職務給)。いわゆるジョブ型賃金制度。従業員個々の仕事の職務分析・評価を実施し、職責・職務内容を定義した職務記述書に基づいて職務等級を設定し、等級ごとに給与が決まる。

職務給の賃金水準は世間相場に紐付ける企業が多い。職務が変わらないと給与も上がらない。一律の定期昇給を廃止し、家族手当、住宅手当、皆勤手当などの属人手当も廃止し、基本給に1本化する企業が多い。飛び級など抜擢もでき、職務スキルに応じた中途採用者の賃金設定がしやすい。

入社後、給与が下がる「マジック」

サラリーマン

初任給だけでなく、給与体系を把握することがポイントだ。

撮影:今村拓馬

前述した4タイプの企業では、「職能給」導入企業はタイプAの大企業年功型とタイプCの中堅・中小企業年功型に多い。一方、「役割給」「職務給」導入はタイプBのベンチャー型に多い。

タイプDの業界はそもそも賃金制度自体が未整備なところも多く、上記の3つの賃金制度に当てはまらない企業も少なくない。

前出の労務行政研究所の「人事労務諸制度の実施状況調査」によると、職能資格制度導入企業は54.5%、役割等級制度42.5%、職務等級制度32.9%となっている。100%を超えるのは管理職のみ職務等級制度で一般社員は職能資格制度という企業も含まれているからである。

これまで見てきたように、給与制度は企業によって大きく違う。

仮に初任給が高い企業の場合、職務給型賃金であれば2年目以降の職務評価によって給与が下がるという“給与マジック”もあり得る。

20代の頃は、仕事に対する意欲も旺盛であり、自ら仕事をつかんでキャリアアップしていこうという意識も強く、給与も上がっていくかもしれないが、30代になると、息切れして上の職務等級を目指そうとする意欲が減退すれば、給与が上がらない状態が続くことになる。

人事に確認すべきこと

初任給だけに目を奪われるのではなく、人事担当者に「職能給型の賃金ですか、一律の定期昇給はありますか」、あるいは「役割給、職務給ですか、どういった人が昇級していくのですか」といった最低限のことは聞いてほしい。

もちろん企業の選択肢は給与だけではない。

転職志向の人は、20代のうちにどんな育成・教育をしてくれるのかを重視する人もいるだろう。

何よりも大事なことは、中・長期的にどういうキャリアを歩みたいのか、自分自身で考えることだろう。

(文・溝上憲文

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