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「永遠に残る化学物質」のせいで、世界中の雨水はもはや「飲むのに安全ではない」 —— 最新研究

雨水を運ぶ少女

干ばつの影響を受けたオーストラリアのマラルンディでは、自宅の庭で雨水を集める人の姿も(2020年2月17日)。

Loren Elliott/Reuters

  • 世界各地の雨水には、飲み水としては安全でないレベルの「永遠に残る化学物質(Forever Chemicals)」が含まれていることが研究で示唆された。
  • 人体への有害性が指摘される有機フッ素化合物「PFAS」 は家庭や環境に広がっている。
  • 世界各地のPFASのレベルは安全とは言えず、規制されるべきだと研究者らは話している。

環境科学者の研究チームによると、アメリカの汚染ガイドラインに従えば、地球上のどの場所でも安全に飲める雨水はもうない。

世界各地の雨水がパーフルオロアルキルおよびポリフルオロアルキル化合物(PFAS)と呼ばれる、人体への有害性が指摘される有機フッ素化合物を含んでいるからだ。PFASを10年間研究しているストックホルム大学の研究者らは学術誌『Environmental Science & Technology』に8月2日付けで掲載された論文で、PFASは大気全体に広がっており、汚染されていない場所はないとする証拠を示した。

PFASは数千種に及ぶ —— いずれも人間が作ったもので、食品包装や撥水加工された服、家具、カーペット、鍋やフライパンの焦げ付き防止コーティング、消化器の薬剤、電子機器、一部のシャンプーや化粧品などに使われていて、その製造過程や日常的な使用を通じて大気に放出される。また、海水に入り込み、波しぶきによってエアロゾル化される。こうしてPFASは大気を介して広がり、雨水となって地上に戻ってくる。

大雨

サイクロン「アサニ」の影響で大雨が降ったインドのコルカタでは、人々が傘を差して通勤していた(2022年5月10日)。

Rupak De Chowdhuri/Reuters

分解されることなく長期間残存し、人や動物、環境に蓄積していくため、「永遠に残る化学物質」「フォーエバー・ケミカル」とも呼ばれる。

PFASは南極北極の海氷からも見つかっている。査読付き論文で、PFASは一部のがんや生殖能力の低下、ワクチン反応の低下、高コレステロール、子どもの発育の遅れに関連があるとされていて、世界中に拡散したPFASは人々の健康に害をもたらす。

マイクロプラスチックと同様に、PFASはあまりにもさまざまな化合物を含み、環境に広く存在するため、その長期的な健康への影響全てを特定することは難しい。最新の論文は地球上の全ての人にリスクがあると示唆している。

EPAの基準では「どこの雨水も飲むのに安全ではない」

雨水タンク

メキシコの首都メキシコシティ郊外のサン・ミゲル・シカルコでは、洗い物や掃除用に雨水タンクを設置する家庭も(2016年3月4日)。

Henry Romero/Reuters

PFASの中でも恐らく最も評判が悪いのは、パーフルオロオクタン酸(PFOA)とパーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)だ。アメリカでは環境保護庁(EPA)が6月、健康への影響に関する新しい証拠に基づき、どのくらいの量ならPFOAやPFOSが飲み水に含まれていても安全なのか、ガイドラインを大幅に強化した。

EPAではこれまで、どちらも「1兆分の70」を許容範囲としてきた。新しいガイドラインではこれを大幅に引き上げ、PFOAの許容範囲を「1兆分の0.004」に、PFOSは「1兆分の0.02」と定めた。

ストックホルム大学の研究者らは、世界各地の雨水や土壌のPFOAとPFOS、その他の2種類のPFASの値を評価し、規制当局の基準値と比較した。雨水に含まれるPFOAとPFOSの値は「しばしばEPAの基準値を大きく超えた」と研究者らは結論付けた。

ストックホルム大学環境科学学部の教授で、論文の筆頭著者でもあるイアン・カズンズ(Ian Cousins)氏は「飲み水に含まれるPFOAに関するアメリカの最新のガイドラインに基づくと、どこの雨水も飲むのに安全ではないと判断されるだろう」とプレスリリースでコメントしている。

「先進工業国ではわたしたちが雨水を(直接)飲むことはあまりないものの、世界中の多くの人々は雨水は飲んでも安全だと思い、多くの飲料水源となっている」とカズンズ氏は付け加えた。

また、今回の研究では世界各地の土壌がPFASに「広く汚染されている」ことも分かった。PFASは長期間残存し、海や大気、土壌を非常に効率的に循環するため、研究者らはPFASの値が危険なほど高い状態が続くと予測している。

研究者らは最終的に、PFASが人間の健康にとって「人類が生存できる限界(プラネタリーバウンダリー)」を超えていると結論付けた。

「PFASの使用と放出を迅速に規制することが極めて重要だ」と研究者らは指摘している。

[原文:Rainwater is no longer safe to drink anywhere on Earth, due to 'forever chemicals' linked to cancer, study suggests

(翻訳:Makiko Sato、編集:山口佳美)

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