インフレ沈静化が「固定費大きい」企業の利益を一気に蝕む「それでも好調維持」モルスタ推奨9銘柄

インフレ 市場

世界経済を揺るがせたインフレ亢進にもピークアウトの兆候が見え始めた。しかし今度はその影響が企業を苦しめようとしている。

Spencer Platt/Getty Images

モルガン・スタンレーのチーフ米国株ストラテジスト兼最高投資責任者(CIO)マイク・ウィルソンの主張はきわめてシンプルだ。

「上がるものは必ず下がる」

ウィルソンによれば、この自明の理は、企業業績とりわけ売上高から(固定費をテコにして)より多くの利益を生み出す力を示す「営業レバレッジ」によく当てはまる

ウィルソンは顧客向けメール(8月8日付)で、年始から現在まで米企業の利益を支えてきたのは高インフレだったと説明し、今後インフレが沈静化すれば利益も毀損(きそん)されると指摘している。

「営業レバレッジに及ぼすインフレのプラス効果を過小評価する人が多いのと同様、インフレ沈静化がもたらすマイナス効果も過小評価されています。

インフレ率の低下で売上高が減少すると、営業レバレッジが逆方向に作用し(大きな固定費の存在が)利益を一気に圧迫するようになるのです」

第2四半期(4〜6月)の企業業績はさほど悪くなかったものの、ほとんどのセクターで営業レバレッジが低下し、売上高ほど利益が伸びなかったことにウィルソンは注目する。

賃金や各種経費などコストが高止まりしたことに加え、需要が減速したこと、あるいはコスト増に見合うほど需要が伸びなかったことがその理由だ。

ウィルソンによれば、ウォール街の金融関係者の多くはこのトレンドをさほど重視していない。

「営業レバレッジの変化を受けて利益率が圧迫される兆しがあるにもかかわらず、個別企業の財務分析ベースの市場コンセンサス(一致した見方)には変化がなく、2023年にかけて企業の利益率は拡大していくという予測のままです。

しかし、粘着性の高いコスト圧力(特に賃金)や需要の減退を踏まえれば、そうした展開は非現実的と当社は考えています」

企業の主な経費は漸次的な増加傾向にあり、需要がすでにピーク打ちしたにもかかわらず、経費のほうは当面増加が続くとウィルソンは説明する。

それにより、消費者物価の急上昇に対して企業コストが緩慢な上昇を続けるという、過去2年間続いた構図とちょうど反対の状況(すなわち消費者物価の緩慢な低下と企業コストの急上昇)が生まれることになる。

「インフレの沈静化は、2020年から21年にかけてインフレが企業利益にもたらしたのと本質的に正反対の影響を及ぼすことになるでしょう。消費者物価は依然として高止まりが続いているものの、(企業間の取引価格を示す)生産者物価はさらにその倍のペースで上昇しています」

そうした市場分析のもとに作成されたのが、下に掲載するモルガン・スタンレーの「フレッシュマネー・バイリスト」だ。同社が新規投資を推奨するトップ銘柄群で、ポートフォリオ全体として見るとアウトパフォームを実現している。

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