自信を持ちたい人はツンデレ理論でうまくいく。入山章栄が「僕の授業は難しいよ」と予告していた訳【音声付】

イシューを語ろう

Drazen Zigic/Shutterstock

今週も、早稲田大学ビジネススクールの入山章栄先生が経営理論を思考の軸にしてイシューを語ります。参考にするのは先生の著書『世界標準の経営理論』。ただし、本連載はこの本がなくても平易に読み通せます。

入山先生はアメリカで教鞭をとっていた際、授業のイントロダクションで「この授業は死ぬほど難しい」と学生たちに予告していたのだそうです。最初に期待値をどこに設定するかによって心理的なハードルは大きく変わるというこのセオリー、実は一橋大学の楠木建先生も応用されているようで……。

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期待しなければ、うまくいったとき余計にうれしい

こんにちは、入山章栄です。

今回はBusiness Insider Japan編集部の小倉宏弥さんが最近読んだという本の話から始めましょう。


BIJ編集部・小倉

先日、経営学者の楠木建先生の『絶対悲観主義』という本を読んでいたら、「仕事と趣味は違う。趣味は自分が楽しければいいが、仕事は他者のためにするものだから、絶対に自分の思うようにはならない」というようなことが書いてありました。

つまり、「何事もうまくいかないと思っていたほうがいい。にもかかわらず何かがうまくいくと自信がつく」ということかなと解釈しました。入山先生はこういう考えについてどう思われますか?


なるほど、すごく面白いポイントですね。僕はその楠木さんの本は読んでいませんが、「さすが楠木先生、いいところに目をつけたな」と思います。今は何事も成功するのが前提で、「ガンガンいこうぜ」という風潮がある。とはいえいつも前向きでも疲れますからね。

僕はこの本をちゃんと読んでいないので申し訳ないのですが、楠木さんが、「あらかじめ悲観しておくほうがいい」というのは、心理学や行動心理学で言う「アンカリング効果」のことだと思いました。

アンカリング効果とは、事前にどういう期待値を抱くかによって、結果の受け止め方が変わることを言います。例えば最初に、

「これ、本当は3万円なんですよ」

と言われたあとに、

「でも今日だけ特別に2万円にします」

と言われると、すごく安くなった気がするでしょう。最初に3万円と言われると、3万円が基準(アンカー:船をつないでおく錨のこと)になるからです。

このようにもともと控えめな期待値を持っていれば、現実がそれを少し上回っただけで、すごくうまくいったように思える逆にうまくいくと思っていたのにその通りにならないと、人間は必要以上に落胆してしまう。これがアンカリング効果です。

「僕の授業は難しいよ」

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